投資用・居住用に都心にワンルームマンションを保有している人の中には、「コロナの影響で価値が下落するのでは?」と、先行きを不安視している人は多いのではないでしょうか。

しかし、結論から言うと、都心部ワンルームマンションはコロナの影響をそれほど受けず、価格は下がりにくいと考えられます。ここでは、コロナ禍でも都心ワンルームマンションの価値が落ちない理由を解説します。

リーマンショック前後のマンション価格の推移は?

まずは、過去の都心部ワンルームマンションの値動きを見ていきましょう。コロナショックと比較されることが多いリーマンショックの頃のマンションの価格推移は、今後の相場を予測する上で参考になるでしょう。

東京カンテイのデータによると、リーマンショック前後の期間における首都圏ワンルームマンションの価格推移は次の通りです。

・新築ワンルームマンションの価格推移

2000年 2,063万円
2001年 2,089万円
2002年 2,119万円
2003年 2,171万円
2004年 2,181万円
2005年 2,267万円
2006年 2,234万円
2007年 2,306万円
2008年 2,271万円
2009年 2,263万円
2010年 2,269万円
2011年 2,377万円
2012年 2,315万円
2013年 2,454万円
2014年 2,571万円
2015年 2,642万円

・中古ワンルームマンションの価格推移

2000年 858万円
2001年 845万円
2002年 854万円
2003年 888万円
2004年 920万円
2005年 949万円
2006年 995万円
2007年 1,105万円
2008年 1,095万円
2009年 1,095万円
2010年 1,043万円
2011年 1,045万円
2012年 982万円
2013年 1,021万円
2014年 1,159万円
2015年 1,284万円

不景気でも価格が変動しにくい居住用不動産

表にある通り、新築マンションの価格は2007年の2,306万円から2010年頃には2,260万~2,270万円程度へと下落しています。また、中古マンションも2007年をピークに下落しました。

とは言え、同時期に起きた株価の暴落に比べればその価格変動は微々たるもの。居住用不動産に関しては「居住」という不可欠な需要があるため、不景気でも価格はあまり変動しないのです。

その後、アベノミクス景気がはじまる2013年からは、新築と中古のいずれも長期的な上昇傾向になっています。2013年以降の上昇は、投資を背景にした資産価格上昇に加え、東京都への人口流入による活発な実需によるものです。

足元の都心部ワンルームマンション価格推移

次に、直近の首都圏のマンション市場動向について見てみましょう。

不動産経済研究所の資料「首都圏マンション市場動向2020年5月度」によると、コロナ禍の影響で首都圏のマンション発売数は82.2%減となり、過去最少供給数を更新しました。その一方で、販売された物件の平均単価や平米単価はともに上昇しているということです。

販売数が急減した背景には、4月から5月にかけて発令された緊急事態宣言により、ステイホームが徹底されたことがあります。不動産売買に欠かせない内覧やモデルルーム訪問などが抑制され、そもそも販売に出される物件数自体が減少したのです。

供給数は激減したものの、実際に売買が行われた不動産の価格は下がっていません。今後経済活動に関する制限が緩和され、世の中がコロナ前の状態に戻っていくのであれば、少なくとも新築マンションについては価格が下がる可能性は低いと言えます。

一方の中古市場は、物件の個別性の高さから一概に価格が下がりにくいとは言えません。さらにコロナ禍で全体的な経済状況が悪化し、生活に困窮した人が換金のために物件を“投げ売り”するようなケースが相次げば、都心であっても物件価格の下落は避けられないでしょう。

東京都の人口は1,400万人超

東京都は人口の流入が続き、さらに単身世帯の割合が増加傾向にあります。その人口動向を背景に、今後も当面はワンルームマンションに対する需要増が見込まれ、価格は堅調に推移すると思われます。

東京都政策企画局が2015年の国勢調査をもとに推計した「2060年までの東京の人口推計」では、東京都の人口は2025年の1,398万人をピークに減少に転じ、2040年に1,346万人、2050年に1,274万人、2060年に1,173万人になると予測しています(「2060年までの東京の人口推計」)。しかし、2020年5月時点の実際の人口は1,400万人超。東京都の人口は、上記の予測をはるかに上回るペースで増加しているのです。

一方、1世帯あたりの人口に着目すると、こちらは着実に減少しています。東京都総務局の予測では、東京都の世帯数は2035年まで増加すると見込まれています。しかし、2015年に1世帯当たり約2人(1.99人)だった世帯人口は、2040年には1.85人にまで減少するとの予測があります。これは、2人以上の世帯が減り、単身者世帯が増えることを意味しています。

 東京都の一般世帯数及び1世帯当たり人員の推移

出典:「東京都世帯数の予測」の概要

世帯数がピークを迎える2035年から5年後の2040年には、単身者世帯数は369万以上に達し、2020年の339万世帯を大きく上回ります。つまり、全体的な世帯数は減少に転じても、単身者世帯はまだ増える見込みなのです。

家族類型別世帯数の推移(東京都)


出典:「東京都世帯数の予測」東京都総務局統計部

これらのデータは、少なくとも東京都では今後20年間、単身者世帯が増加するということを示唆しています。つまり、単身者が住むためのワンルームマンションの需要が減少することは考えにくいと言えます。

状態の良いワンルームは相対的に価値が高まる

東京都のほとんどの区部は、ワンルームマンションの新規建築に対して何らかの規制を行っています。

例えば、ワンルームマンションのみの建物は不可としたり、住戸に一定の居住面積が求められたり、バリアフリー化が必須とされたりという条件です。豊島区のように、一定の条件のワンルームマンションだけに特別な課税を行うケースもあります。

このように、ワンルームマンションの新規の供給を抑制しようという動きがあることから、その中で新規供給されるワンルームマンションや管理状態が良い中古ワンルームマンションは、相対的に価値が高まっていく可能性があります。

まとめ

コロナ禍では、ステイホームの実施やテレワークの普及により、住居の重要性にスポットが当たっています。しかし東京都では当面の間、人口の増加と単身者の増加が同時進行することに加え、行政による規制の影響もあり、新規のワンルームマンションが大量に供給されることは考えにくくなっています。

これらの状況を総合的に鑑みると、コロナ禍による経済の悪化が当面続いたとしても、東京都心部におけるワンルームマンション価格が全体的に下落するような状況は想定しにくいと思われます。一方、本文でも触れた通り、中古物件は売り手の事情による個別性が高いこともあり、不況下においては「割安物件」が出てくる可能性が高まるでしょう。