ワンルームマンション投資によって得られる家賃収入は魅力ですが、投資にはさまざまなリスクもあります。なかでも、入居者による家賃滞納や騒音問題、入居者自身のクレーマー気質が引き起こすいさかい等は、深刻なトラブルへ発展する可能性もあるため注意が必要です。ここでは、迷惑な入居者への対応策を考えてみます。

解決が難しい入居者トラブル

ワンルームマンション投資におけるリスクのなかでも、家賃滞納リスクを含めた「入居者トラブル」は、賃貸経営に大きな影響を与える可能性があります。

建物設備の故障であれば、お金さえ払えば比較的簡単に解決が可能であり、問題が長引くことはあまりありません。

しかし、入居者と大家、あるいは入居者同士のトラブルになると、人間の感情も絡んでくるため、単にお金の問題だけでは済まない場合もあり、丁寧に対応をしないと、トラブルを長引かせることになります。たとえば「家賃滞納の督促の際に、高圧的な態度を取ったことで入居者を怒らせしまい、回収に時間がかかった」「騒音問題を軽く考えていたら、入居者同士で揉めて刑事事件に発展した」といったケースです。対応が悪かったり遅れたりすれば、問題がこじれて解決に大きなトラブルになりかねません。

そうならないためにも、入居者トラブルは、迅速かつ丁寧な対応を心がけましょう 。

家賃遅れや滞納は、早期の対策が重要

公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観2019年度上期データ」によると、全国平均で、入居者のうちの5.0%が家賃を滞納しています。そのうち、滞納が1ヵ月まで伸びる人が2.1%、2ヵ月まで伸びる人が1.0%です。

また、ある学術調査によると、家賃滞納をしたことのある入居者のうち、家賃滞納期間2ヵ月未満の人は、「うっかり」という理由が最多で約66%でしたが、それに対して、家賃滞納3か月以上の経験がある人の理由は、「失業したが貯金がなかった」が約42%で最多、次が「理由はよくわからないがお金が足りなくなった」で約19%、3位が「病気やケガで収入が途絶えた」で約17%となっています(出所:「行動・思考様式が家賃滞納に与える影響」)。

これらの資料からわかるのは、家賃の滞納があったとき、滞納者の多くは「うっかり」が理由であるため、すぐに連絡を取れば対応をしてもらいやすいということです。ところが、滞納者のうち20%は2ヵ月以上の滞納になり、3ヵ月以上滞納する人は、失業あるいは生活習慣、病気などにより、恒常的な滞納が続く状態となっています。その場合も、早期に連絡を取って解決をはかることが重要です。

早期の対策を取らないと、最悪の場合、「夜逃げ」のような形で失踪されてしまうリスクもあります。そこまでの状況になってしまうと、仮に連帯保証人などがいる場合であっても、家賃の回収には大変な手間がかかってしまうのです。

賃貸管理会社や家賃保証会社の利用でリスクは減らせる

家賃を滞納する入居者の多くは「うっかり」が理由なので、連絡をすれば普通はすぐ払ってくれます。しかし、なかにはわずかですが、払いたくない、あるいは払いたくても払えないという入居者が出てくることもあります。そういう人は、居留守を使ったり、電話に出なかったりといった対応を続け、連絡自体が取れなくなってしまうことがあります。

副業大家さんだと、何度も連絡したり部屋に足を運んだりといった手間だけでも大変です。そのため、賃貸管理会社を使うことがベターだといえます。管理会社との契約のなかには、多くの場合「集金代行」の項目があり、トラブルの際の連絡も管理会社が代行してくれます。

さらに、管理会社が管理する物件では、入居者に連帯保証人がいてもいなくても、家賃保証会社との契約を条件付けることが一般的です。保証会社との契約があれば、滞納があった場合、定められた月数分までは家賃保証会社が支払ってくれるので、損失を防ぐことができます。ただし、保証会社の保証料は入居者が負担するため、入居者は嫌がります。そのため、客付けがしにくくなるというデメリットもあることを知っておきましょう。

もちろん、管理会社に賃貸管理を依頼すれば費用がかかります。しかし、上記のような理由から、一種の保険だと考えて加入する大家さんが多くいます。ただし、その契約に際しては、集金代行の範囲、家賃保証の範囲など、契約内容を入念に確認しておきましょう。

家賃を払わないなら裁判をすればいい?

ちなみに「家賃を払わないような入居者なら、裁判を起こして差し押さえで家賃を取り立てて、退去させればいい」と考える人がいるかもしれません。

しかし、日本の法律(民法や借地借家法)は、基本的に入居者(借主)保護の立場に立っています。そのため、差し押さえや強制退去のハードルはかなり高いのです。

個別の事情によっても異なりますが、一般的な目安としては、「3ヵ月以上の家賃滞納があり、相手が交渉に応じない」「保証人からも回収できない」といった状況があってはじめて訴訟を起こすことができます。2ヵ月程度の家賃滞納では提訴自体ができないのです。

明け渡しの判決が下されてからも、すぐに強制退去させられるわけではありません。入居者が出ていかない場合には、強制執行を申し立てる必要があります。通常では、裁判を起こしてから強制退去させるまで、半年程度かかります。最初の滞納があってから9ヵ月程度です。退去後の原状回復まで考えると、解決には通常1年近くの時間を要します。

その間は家賃が入らないばかりか、さまざまな連絡などの費用、裁判のための弁護士費用、強制執行ための費用・手間、さらには原状回復費用など、すべてが大家負担となるため、大変な損失になります。

したがって、裁判というのは本当に最終手段であると考え、できれば裁判を起こさずに解決する方法を考えるべきでしょう。

もっとも多い騒音トラブルへの対応策

国土交通省の「平成30年度マンション総合調査結果」によると、居住者間のマナーをめぐるトラブルで多いのが、生活音などの騒音で38%を占めます。

騒音トラブルが生じる原因には、建物の構造的な問題の場合もありますが、RC造のマンションでは通常一定の防音性があるため、そういったケースは多くありません。

ワンルームマンションは学生やフリーターなど若い方が入居することも多く、友人を呼んで夜遅くまで騒いだり、大音量で音楽を聴いたり、楽器を演奏したりといったことが騒音の原因となりやすいのです。ただし、こういったケースは管理会社を通じてすぐ注意すれば、比較的沈静化しやすいといえます。

一方、「窓の開け閉めがうるさい」「足音が気になる」といった生活音が騒音トラブルの原因の場合、対応が難しくなります。音の感じ方は人それぞれなので、その音が本当に騒音といえるのかの判断は難しいものです。実際に管理会社の人が確かめに行っても、騒音と呼べるほどの音はしないということもあります。

自分が所有しているマンションの入居者が騒音元になっている場合は、できるだけ気をつけてもらうようにお願いすることになります。また、近隣の騒音が原因で入居者から苦情が来る場合は、ワンルームマンションは共同住宅であり、ある程度の音は許容してもらう必要があることを説明し、理解を促すといった対応になります。

「クレームが多い入居者」への対応策

まれにですが、入居者の中にはいわゆる「モンスタークレーマー」のようなタイプの人もいます。

入居当初は、周囲のゴミを指摘するなど多少神経質な印象はあるものの、むしろ周囲に気遣う良い入居者に感じることが多いのですが、次第に「歩く音やドアの開け閉めがうるさい」「上階の住人が夜遅くに帰ってきて眠れない」など、毎週のようにクレームを言ってくるようになるタイプです。

賃貸管理会社に業務委託をしていれば、オーナーが直接クレームに対応することはありませんが、あまりにもクレームが多いと管理会社も対応しきれずに放置気味になり、ついには隣人の生活態度にもクレームをつけはじめるなど、周囲の住人に迷惑をかけるトラブルメーカーになるケースもあります。

こういった場合は、常識的に見て問題がないレベルの内容については「共同住宅なので対応できない」という旨をはっきり伝えるべきです。度を越したモンスタークレーマーには、管理会社も対応を嫌がりますので、管理会社とどこまで対応するかを話し合い、場合によっては入居者に退去を促すというのも方法です。

モンスタークレーマーは、できれば入居前にどうにかしたいところです。そこで、入居審査の段階である程度見極めるポイントがあります。一例ですが、入居前に条件や設備に対する細かい確認や要望が多い場合は注意してください。このようなタイプは、入居後に要望がエスカレートしてクレームへとエスカレートする場合が多いので、入居審査の段階でそのような面がないかチェックしておきましょう。

まとめ

入居者トラブル全般に通じるのは、とにかく早めの対応が重要だということです。しかし、本業が別にある副業大家さんの場合、迅速な対応がなかなか難しい場合もあるでしょう。その場合、賃貸管理会社の利用が、さまざまなリスク対策として有効になります。