『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)が大ヒットし、現在はビジネスマンのかたわらライターとしても活躍されている借金玉さん。奇抜なお名前の裏には、ドラマチックな生き様があるようです。そのご経験で学ばれた“すごい投資術”をお話くださいました。

資産、なし。借金、2,000万円

どうも、借金玉です。今年34歳になる男で、本を書いたり営業マンをやったり、ライターとして文章を寄稿させていただいたりして生活しております。大学を出てサラリーマンをやろうとしたら何ひとつ仕事ができなかったので起業したところ、昇った角度そのまま転げ落ちる経営破綻をやらかしました。その後営業マンとして社会復帰、現在は文筆業を主としつつ色々やっております。借金は2,000万円残りました。そんな人です。

人生で一番お金があったのは19歳の時で、大学入学資金の120万円くらいでした。それ以降は貯金を一切したことがありません。最近、書籍でヒットを1発飛ばしたので印税がモリモリ入ってきましたが、個人資産は現在3万円ほどと、もう動かないバイク1台のみです。これは悲しい事実なのですが、僕の筆名「借金玉」による印税は僕が代表取締役を務める法人に権利があり、この会社の株を僕は1%たりとも有しておりません。つまり、借金玉の権利を借金玉は持っていないのです。

家は社宅ですし、持ち物は備品。それ以外はすべて同居人の所有物ですから、僕に差し押さえをかけたとしても本当に1円たりとも回収できない。「そのバイク持って帰ってくれるとうれしい」ということになります。これはなかなかに清々しいもので「何にもないって事、そりゃあ なんでもアリって事(ROKET DIVE 作詞:hide)」という往年の名曲気分が体験できます。

そういうわけで僕は「マンモスが獲れたらいっぱい手に入るし、獲れなければ何もない」という暮らしを長年送ってきました。最近、僕がご飯を食べられているのは、本が売れたり、ライターとして仕事をしたりして「会社が稼いだ」お金を、かつて会社に貸し付けた役員報酬の返済という名目で受け取っているからです。すなわち、収入はゼロです。

借金玉の名に恥じない人生を送っていると自負しております。みなさま、いかがでしょうか?

若者は投資も貯金もやめろ、遊べ、金を使え、体験しろ

僕がみなさまに言いたいことはこれに尽きます。年収200~300万円の若者が投資をし、年10%の利回りを出したとします(とんでもない高利回りです)。年収300万円から投資に回せるのは多くて50万円というところでしょうが、これは月ベースに換算すると4万円と少し。月収25万円の方が月4万円の可処分所得を削るのは相当につらいことでしょう。それでも、投資の始め方としてはよくある形だと思います。

僕はこれに対して「やめろ!」と言いたいのです。というのも、それは実は投資になっていないのです。若い時期に経験できたはずのさまざまな体験を犠牲にしてしまうからです。
お金を稼ぐには、知識と経験が必須です。そして、知識と経験というものは大抵の場合、課金しなければ手に入りません。これは資格試験の勉強などに限りません。おいしいご飯を出す店を知っているとか、楽しい遊び方を知っているとか、そういうことも大事です。20代において月4万円を投資に回すと、こういった“楽しくて役に立つ遊び”に手を出す余裕がなくなってしまいます。

その上、仮に年50万円を投資に回して10%という高利回りで運用できたとしても、数年単位では目覚ましい儲けをまったく期待できません。絶対に損だと思います。30才を過ぎると自覚せざるを得なくなるのですが、どんどん身体は動かなくなってきますし、気力は減衰してきます。「もっと遊んでおけば良かった、もっと経験しておけば良かった」という気持ちは僕にもあります。乏しい収入の余剰を毎月機械的に積み立て投資する。そういうのは一切お勧めできません。

お金ではない資産とは?

一方で僕が投資を全否定しているかというとそんなことはなく、お金を増やすのは人生の一大目標です。なにせ、一度起業に失敗しているので、どこかでドカンとお金を儲けないと老後が恐ろしい。以前は「自分に老後などない、そこまで生きない」という確信の下に生きていましたが、最近は「老後」という概念のリアリティがヒシヒシと迫って来るのを感じます。シーラカンスが生き残っていたのはびっくりだけど、僕に老後があっても別にビックリしない。そういう感じがして、本当に怖い。

そういうわけで、「良い投資」というものについて最近はよく考えます。僕は不動産業者なので、なじみのある投資といえば不動産投資ですが、成功している不動産投資家の方々は意外な習性を持っています。勉強家で、自分でできることは自分でやる、という人種が非常に多いのです。ガス湯沸かし器の施工やクロスの張替えは自分でしてしまう不動産投資家さんは、本当に多い。不動産投資というと、地主の持ち物件からジャラジャラお金が湧いてくるイメージが強いのですが、実際のところ不動産投資はまったく不労所得ではないと僕は感じています。

というのも、成功している不動産投資家のみなさんは、「他人にやらせていた仕事を自分でやるのが一番手堅い投資だ」ということを分かっているのです。不動産の場合、転売益を狙った短期売買もあるにはありますが、業者ではない一般人であれば通常、一度物件を買ってしまえば、後は満室稼働を祈るしかありません。しかし、祈っても満室にはならないので、不動産投資家は実にさまざまな工夫を始めるのです。なにせ、物件稼働率が低いとローン返済という悪魔が追いついてきます。収入が返済に追いつかなければ地獄の始まりです。

僕はこの「自分でやる」不動産投資を「良い投資」だと感じています。そこには知識と体験があるからです。ガス可とう管を自力で敷設できるようになり、クロスを自分で張れるようになり、客付けのために不動産業者の中を駆け回れば、かなり強い知識が身につきます。人脈も増えていきますし、「お金ではない」資産が増えていくでしょう。これは世間の人があまり知らない事実ですが、成功している不動産投資家のみなさんは全般的にけっこう感じがいいのです。知識に飢えているのでしょうね。人の話を一生懸命聞く人は感じがいいものです。

体験型投資を目指そう

僕が現在、借金玉としてコラムを書かせていただいて、お代を頂戴する原動力は「起業で大失敗して数千万円をドブに投げ捨てた」体験が非常に大きいです。もちろんトータルでは大損ですが、それでも体験はお金になっている。泣きながら事業を経営した時期の体験は大きな経験値になっています。最近感じるのは、この“お金ではない資産”は大きいな、ということです。なにせ、この資産は形がないので、誰にも差し押さえられる心配がない。僕くらいの債務者になると、自分の口座にお金が入っているだけでどことなく恐怖を感じるフシがありますから。

20代・30代といった若いみなさんにはぜひ、投資を「体験」にすることを僕はお勧めしたいです。矛盾するようですが、投資対象は株式でも不動産でも何でもいいんです。投資しながら学習・体験し、楽しめばそれは体験型投資になります。しかし、金融商品を買って後は祈るだけ という運用では、それはそのまま体験機会の損失になります。自分がなぜその投資をするのか、どのような根拠に基づき、どのような勝算を持って投資に踏み切るのか説明できる運用をしていれば、お金ではない資産が積もっていくのです。

しかし、投資の勧誘の中には「不労所得」とか「楽して大金」とか「我われの仲間になれば君もカリブ海でヨットに乗れる」といったものが非常に多い! このタイプの投資話は、明瞭な勝ち筋を説明せず射幸心を煽っている時点で信憑性が低いものですし、丁半博打から得られる教訓は、「丁半博打は丁半博打である」ということのみです。最近も利回り100%の朝鮮人参とかそんな話がありましたね。ポンジスキームは本当にすごい発明だと思います。

インターネットの出現で「君も丁半博打に無限に勝てる!」みたいな勧誘をそこかしこで見かけるようになりました。しかし、丁半博打に無限に勝つのは不可能ですし、投資を丁半博打にしてしまうと勝ち負けにかかわらず、手に入れられるはずだった体験型資産、あるいはお金ではない資産のインカムがゼロになってしまいます。やめろ! と僕は声を大にして言いたい。

投資はエキサイティングなゲームです。自分のビジネスプランを信じて数千万円をぶっ込んで破滅した僕にも、あの脳内麻薬が駆け回る楽しさは未だに強く刻まれています。しかし、やはりあれは「博打」の楽しさなのです。だから、これだけを覚えておいてほしい。あなたが投資をするのであれば「自分はこの投資において、どうやって汗をかくのか」を明瞭にするべきだということを。それは博打の射幸心とはまったく違う楽しさです。汗をかくことを楽しめば、あなたの投資に負けはないのです。僕もまだ自分の投資――起業が負けていないと言い張っています。長期投資の途中です。途中なんです。俺はまだ途中だ。

僕の出資者もまた不動産投資家なのですが、彼は「不動産投資は汗をかいた分しか儲からない」と言っていました。金言だと思います。そして、きちんと汗をかき、儲かる・儲からない以外の部分を楽しめば、投資は値千金の体験になります。この「体験」は何があろうとあなたの手元に残ります。それを大事にするのが投資に勝つ方法だと僕は感じています。

ところで、僕は投資として「カラスミづくり」をやっており、5年で50万円くらい投資して、やっと最近、仕事になりました。本場・長崎に負けないおいしいカラスミを作るという投資、パチスロよりは利回りが高いので大変お勧めです。

〈プロフィール〉
借金玉(しゃっきんだま)
33歳の発達障害者(ADHD)。男性。早稲田大学卒業後、大手金融機関に就職するも一切仕事が出来ず起業、社員二桁くらいまで育って破綻。後、鬱を経て非正規営業マンとして社会復帰し、「発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術」(KADOKAWA)を上梓、電書含め7万部越え。色々あったけど、今日もなんとか生きています。
Twitter:@syakkin_dama
書籍:『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』