給与から天引きされる財形貯蓄は、有効な資産形成術の一つ

財形貯蓄という制度については、知っている人や実際に利用しているという人もいるのではないでしょうか。財形貯蓄は勤労者財産形成促進法に基づいて設けられた制度で、会社を通じて従業員の貯蓄や住宅購入等を促すことによって、従業員の財産形成を目的とした制度のことを言います。具体的には、会社が毎月の給与の中から一定額を天引きして、金融機関に貯蓄するという形で行われます。ちなみに、天引きは毎月の給料だけでなくボーナスからもされることになります。

ただし、財形貯蓄は強制的に加入しなければならないというわけではなく、任意とされています。また、勤めている会社が必ずしも財形貯蓄制度を導入しているわけではないので、会社によっては財形貯蓄制度を利用できない場合もあります。

財形貯蓄には「一般財形貯蓄」「財形住宅貯蓄」「財形年金貯蓄」の3種類があり、一般財形貯蓄の使い道には制限がありませんが、財形住宅貯蓄は住宅の取得、財形年金貯蓄は老後資金の確保を目的としています。

3種類の財形貯蓄に共通したメリットとしては、財形持家融資という制度を利用できる点が挙げられます。この制度は一定の条件を満たした場合に、住宅の購入、リフォーム等を行う際に必要な融資を受けられるほか、住宅ローンを組む際には低金利での融資を受けることが可能になります。一定の条件とは、財形貯蓄残高が50万円以上、継続1年以上、最終預入から2年以内の場合、財形貯蓄残高の10倍(最大4,000万円)、住宅取得費の80%の融資を受けることができます。

一方、財形貯蓄で扱っている金融商品の中には、元本割れのリスクがある商品もありますので、それがデメリットになります。この記事では、3種類の一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の特徴について解説します。

自分でコツコツ貯金するのが苦手な人におすすめな「一般財形貯蓄」

一般財形貯蓄の代表的な特徴は、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄と違って、貯蓄する目的が限定されていないため、自由に使えるという点です。そのため、3種類の財形貯蓄の中で一般財形貯蓄の利用者が最も多くなっています。

一般財形貯蓄のメリットについては、住宅取得の際に融資を受けられる財形持家融資制度のほか、貯蓄を始めてから1年経過しないと、払い戻すことができないことから、強制的に貯金できることが挙げられます。

一方、デメリットとしては、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄には、元本550万円までの利子が非課税になるという税制面のメリットがあるのに対して、一般財形貯蓄にはこのような優遇措置がないという点が挙げられます。また、一般財形貯蓄から財形住宅貯蓄へは変更できないという制限がありますので、注意が必要です。

一般財形貯蓄を利用中に退職した場合は、解約することができますので、貯金は払い戻すことが可能です。転職した場合は、転職先に財形貯蓄制度が導入されていれば、継続することが可能ですが、転職先で手続きをする必要があります。

一方、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄を解約する場合は、利子が非課税になるという優遇措置があるため、目的外の解約ということになります。そのため、過去に遡って課税されることになります。

マイホーム購入の資金作りに活用できる「財形住宅貯蓄」

財形住宅貯蓄は従業員が住宅を購入するための資金を貯めることを目的としています。なお、ここでいう「住宅」には中古も含みます。また、財形住宅貯蓄に加入する際の重要な要件として、5年以上の期間にわたって積み立てる必要があることが挙げられます。

財形住宅貯蓄には元本550万円(ただし、保険商品の場合は385万円)までの利子が非課税になるという税制面のメリットがありますが、財形年金貯蓄にも加入している場合には注意が必要です。というのは、両方に加入している場合、利子が非課税になるのは、両方を合わせた額が元本550万円までになるからです。

先ほどご説明したように財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄は、元本550万円までの利子が非課税になるという税制面のメリットがありますが、解約してしまうと目的外となるため、過去に遡って課税されるというデメリットになり得ます。

ただし、ここで注目してほしいのは財形住宅貯蓄を解約することによって、税制面の優遇措置がない一般財形貯蓄と同じ扱いになるという点です。というのは、財形貯蓄に加入する際に財形住宅貯蓄にしておけば、住宅購入のための資金作りにもなりますし、解約して過去に遡って課税されたとしても、一般財形貯蓄のように自由に使える資金になるからです。

そのため、財形貯蓄に加入する際、具体的に住宅取得の予定がないとしても、財形住宅貯蓄に加入するメリットはあるということです。

老後資金の確保に最適な「財形年金貯蓄」

財形年金貯蓄は老後の生活に必要な資金を貯めることを目的としています。財形住宅貯蓄と同じく、5年以上の期間にわたって積み立てる必要があり、年金給付開始までの間、5年以内の据置期間を設定することが可能です。また、年金は60歳以降、5年以上20年以内に定期的に給付されます。

財形年金貯蓄は、財形住宅貯蓄と同様、元本550万円までの利子が非課税になるというメリットがあり、両方に加入している場合は、両方合わせて550万円までの利子が非課税になります。財形年金貯蓄を解約する場合、目的外になりますので非課税とされた利子が遡って課税されることになります。

この記事では、財形貯蓄という制度について、3種類の一般財形貯蓄、財形住宅貯蓄、財形年金貯蓄の特徴について解説してきました。

財形貯蓄制度は効率よく貯金したいという人にとっては、大変良い制度です。特にこれまで貯金したくても、貯金することができなかったという人にはおすすめです。というのは、「天引き貯金」という貯金方法がありますが、この財形貯蓄はこの方法を制度化したようなものだからです。

会社員で財形貯蓄制度を知らなかったという方は、ぜひ会社に確認することをおすすめします。