負担の大きい結婚・子育て費用

現在の日本では、少子高齢化が大きな社会問題となっています。多くの若者世代は所得水準が低く、この先も上がる見込みが少ないことから将来に不安を抱えており、ライフイベントである結婚や出産に踏み切れないことが要因の一つともいわれています。
ある調査によれば、結婚関連費用の平均総額(2017年)は約460万円、また子供一人あたりにかかる養育費は平均1600万円+教育費と、若者世代にとって結婚や子育ては経済的負担が大きく、希望のライフプランを描けないのが現状です。

結婚・子育て費用の非課税制度の内容と利用方法

このような状況の打開策として、子や孫の結婚・育児にかかる費用をサポートすることを目的とした、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」が創設されました。
通常まとまった金額の贈与があると贈与税がかかってしまいますが、この制度を利用することで、祖父母や父母の資産を非課税かつ早期に次世代へ移転し、有効活用させることが可能になります。
父母や祖父母から20歳以上50歳未満の子や孫への一括贈与が対象ですので、利用するにはまず、銀行や信託銀行で契約に基づいた専用口座を作り、贈与額が入金されると開始です。期限付きの制度ですので、平成31年3月31日までに開始しましょう。非課税の上限額は1000万円(結婚にかかる費用は300万円)で、専用口座を開設している金融機関を通じて「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出します。
税務署への申告は金融機関が行いますが、毎年1月から12月までの期間で対象となる費用の領収書原本を翌年3月15日までに金融機関へ提出する必要があります。
そのほか、使った費用によっては、戸籍謄本、住民票、母子手帳、賃貸借契約書等の写しが必要になりますから、申告に備えてきちんと管理をしておきましょう。

非課税の対象になる費用

では、具体的にどのような費用が非課税措置の対象になるのかをご紹介いたします。
大きく分けて次の2つが対象となる費目です。

①結婚に関連する費用

【挙式や披露宴にかかる費用】
会場代や衣装代など、結婚式場へ支払う費用です。入籍日の1年前以降に支払われたものに限られます。対象とならない代表的なものとして、婚活費用(結婚情報サービス会社の利用代)、結納、エステ、指輪、新婚旅行がありますので、領収書の内訳費目に入っていないか確認が必要です。

【新居にかかる費用】
結婚を機に、新居を契約した際の敷金、礼金、仲介手数料、家賃、共益費、契約更新料及び引っ越し費用です。駐車場代や引っ越しに伴う不用品処分代などは対象となりません。住居は入籍日の前後1年以内に締結された賃貸借契約に限られ、家賃は契約から3年分が対象です。結婚前に新居へ住むような場合には入籍1年前から可能ですが、新居を契約する際には名義に注意しましょう。たとえば妻が贈与された資金を使う予定のはずが、夫の名前で新居を契約した場合、充当することができなくなってしまいます。くれぐれも贈与資金を無駄にしないようにしたいものです。

②妊娠・出産・育児に関連する費用

【不妊治療・妊婦健診の費用】
人工授精などの不妊治療費や妊婦健診に要する費用です。
保険適用の有無や、公的助成金の支給等は問われません。不妊治療に係る医薬品も対象になりますが、処方箋があるものに限られます。
国内の医療機関のみでの受診が対象で、通院のための交通費・宿泊代は対象外です。

【出産・産後ケアにかかる費用】
分べん費、入院費、新生児管理保育料、検査・薬剤料、
処置・手当料など出産のための入院から退院までにかかる費用です。
また、出産後1年以内に支払われた産後ケアは6泊分(または7回分)までが対象です。
国内の医療機関に限られ、交通費・宿泊代は対象外です。

【子の医療費】
就学前の子の治療、乳幼児健診、予防接種、医薬品(処方箋があるもの)です。国内の医療機関・薬局に限られ、交通費・宿泊代は対象外です。

【育児にかかる費用】
保育園、幼稚園、認定こども園、ベビーシッター業者等へ支払う入園料、保育料、施設設備費、入園試験の検定料、子どもの園行事への参加費や、園での食事代など育児に伴い必要になる費用です。多くは子どもを預かってもらう施設に支払う費用となっており、子供服、おもちゃ、絵本、ベビーカー、おむつ等は対象になりません。

結婚・子育て費用の非課税制度利用する上でのポイント

この制度は、子や孫が50歳になった時点で専用口座に残高があると、その残高に対して贈与税がかかってしまいますから、利用資金の計画を立てて活用していくことが大切です。
また、専用口座のお金を使い切る前に、贈与者が亡くなった場合には残高が相続税の対象に加算されます。
なお、「教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税非課税制度」と併用することは可能ですが、両方の制度に重複して払い戻しを受けることはできません。贈与額の使用期限や用途などを考慮の上、上手に選択して利用しましょう。