新築マンションや中古マンションの価格はどのように決められているかご存知ですか?

専門業者等の複雑な利害関係が絡んでいるのでは…と思いきや、聞けば誰でも腹落ちする、単純でわかりやすい基準で決められているのです。ここでは、マンションディベロッパーや不動産仲介業者しか知らない、新築・中古マンションの価格決定の舞台裏と、投資家の価格交渉に役立つポイントを解説します。

意外と堅実に決められている「新築マンション価格」

新築マンションの企画は、土地の仕入れから始まります。利便性に優れた都心の狭小地にはコンパクトなワンルームマンションを、緑の庭園や駐車場も広々と取れる郊外の土地にはのびのび暮らせるファミリーマンションを…と、それぞれの土地のポテンシャルを活かした、その立地にふさわしい建物・間取りプランを立てていきます。

マンション建設予定地と購入想定ターゲットを絞り込んだら、次に建設工事の予算を組んでいきます。一般的なマンションの建設費は坪単価100万円前後、設計費は建設費の10%から15%程度といわれています。

建設工事費と並行して、広告費の予算策定も進められます。住宅情報誌などのペーパー媒体や不動産系ポータルサイトなど、購入見込み客が購読・閲覧している媒体にくまなく広告を載せることで、確実な集客を狙います。新築マンションの広告費は、総事業費(土地の仕入れ、総工費などマンションが完成するまでにかかる総費用)の2%前後といわれています。

土地の仕入れや総工費・広告費の概算ができたところで、この企画の総指揮者であるマンションディベロッパーの利益が確定し、新築マンション1棟の総価格が決定します。

個別住戸の価格はどのように決まる?

1棟のマンション内にあるすべての住戸が同じ間取りだったとしても、建物内での配置条件で価格は異なってきます。

1階住戸と最上階住戸では窓辺の景色や日当たりが違いますし、角住戸か中住戸かによって風の通り具合も変わります。方位もしかりで、明るい南向きの住戸には人気が集まります。

そのため、東・西・北向きの住戸は価格が低く設定され、もっとも不人気な北向き住戸は南向き住戸と比べて約1割も減額されます。一方、ペントハウスやルーフバルコニー付きの特殊住戸は戸数が少ないため、高めの価格設定となります。

「期分け」して売れ行きのバランスを取る

各住戸の価格設定ができた段階で、販売戦略が組まれます。一般的な新築マンションは「期分け」販売が基本となります。期分け販売とは、第1期、第2期~最終期と、販売のタイミングを何度かに分ける方法です。

全戸を一気に販売してしまうと、たとえ価格が高くても人気のある住戸ばかりがどんどん売れていき、不人気住戸が大量に残ってしまうため、期ごとに人気住戸と不人気住戸をバランス良く組み合わせて、小分けにして販売するのです。

売る戸数を限定して何度も「販売スタート!」と広告すれば注目度が上がりますし、不人気住戸は各期の目玉商品として格安価格で売り出せば、人気住戸より先に売れていくという利点もあります。

初期の企画段階で、土地・建設費・広告費とディベロッパー利益が確定して1棟のマンション価格が決まると上述しましたが、必ずしも当初に設定した価格を貫いていくわけではありません。第1期販売の売れ行きが好調だった場合は、「価格設定が低過ぎた」と判断して第2期で若干値上げをしたり、逆に第1期の売れ行きがいまひとつだったら、「高過ぎた」として第2期は値下げしたりすることもできます。顧客のニーズを探りながら価格調整できるのも、期分け販売のメリットです。

また、販売前に新聞折り込みなどを利用して、近隣エリアの購入候補世帯に「どの程度の価格なら購入を検討できるか」を問うアンケートチラシ(通称「アンチラ」)を配布し、回収されたアンケートの集計結果を参考に価格の上方修正や下方修正を行うなど、販売開始後も適正価格の追求は続いていきます。

このように、新築マンションの価格は、購入者の要望に合わせて柔軟に変更されていくのです。

中古マンション価格は「売主の懐事情」で決まる

不動産業者各社は、自らのホームページで「あなたの不動産を無料査定します」「他社の査定価格よりも高く売ります」などの宣伝コピーで集客を図ります。

売る気がなくても「いくらぐらいの値段が付くのかな?」と所有不動産をネット査定に出している人も多いのではないでしょうか。複数業者に査定を出してみて、それぞれの結果を見比べると、同じ不動産とは思えないくらい査定額に大きな差が出ることがわかります。それほど値が張らないワンルームマンションでも500万円から1,000万円近く差が出ることもあります。

この価格差は、査定した業者が仲介してエンドユーザーに売却することを想定しているか、または業者が直接買い取ることを想定しているかの違いに由来します。

当然、エンドユーザーへの売却は高く査定され、買い取りは低価格の査定結果となります。単純に考えれば、査定額が高い方の業者を選んで売却を依頼すればいいことです。しかし、高価格で査定を出した業者に仲介を依頼して売り出したものの、数カ月たっても買い手が付かず、最終的には買い取り想定業者の査定額に近い金額まで下げて、やっと売れたというケースも多々あります。

例えば、生活がひっ迫してすぐにでも所有マンションを売却・現金化したい場合は、買い取り業者に依頼すれば即契約・即支払いされますが、一般的な相場より格段安く叩かれます。一方、生活に余裕があり、売却益が出るなら売りたいという場合は、相場より高めの価格設定のままエンドユーザーに売れる日を待てばいいのです。

すなわち、中古マンションの価格は「売主の懐事情」によって決まるということです。

早く現金化したい売主の物件は安く購入できますが、経済的に余裕があるため売却を急がない売主の物件は強気の高値がいつまで待っても崩れません。

当然だが、マンションの「個体評価」も影響大

売主の経済状況によるところが大きいとはいえ、マンションという商品の個体評価も価格設定に影響します。

まずチェックされるのが、建物の管理状況です。

「管理組合は存在するか」「管理委託会社はどこか」「長期修繕計画は組まれているか」「大規模修繕は行われているか」「管理費や修繕積立金は適正な金額か」…などの状況が価格評価に反映されます。

また、総戸数が少ないマンションは管理費等が割高になるので、それがマイナス評価につながります。リゾート地によくある温泉付きマンションなども、管理費が割高(月額10万円台)のため、「タダでもいいから手放したい」という人は少なくありません。

加えて、高層建築のため設備管理にお金がかかるタワーマンション、コンシェルジュサービスやラウンジスペースなどを備えたラグジュアリーマンションも管理費は割高になります。

まとめ

「都心の一等地」や「子どもの通学区内」などといった立地の特殊要件を除けば、中古マンションの価格は、「①売主の経済状況②マンションの管理状態③維持費」で決まります。

どうしても欲しいものの購入予算が足りない場合、不動産取引に慣れた投資家たちは、②と③の受け入れがたいデメリットを突いて、指値(値引き)交渉を始めます。そして最後に①の現金決済、契約・引き渡し日の前倒しなどを条件に、売主の懐具合を探っていくのです。

コロナ禍にあっても中古マンション価格は未だ高止まり傾向にあります。勝ち目が見えている売主がまだまだ高値を保持し、「売り時」を待ち続けているのかも知れません。