ショッピングやレジャーで遠出した時に、「あれ、ここの駅前って前回来た時も空き地だったけど、ずっとこのままなの?」と気になった場所がありませんか?

そういった土地が都内近郊には何か所かあります。なぜ駅前の一等地が放置されたままになっているのかを調べてみたら、それぞれに事情があることがわかりました。

今回は千葉県船橋市の「南船橋」駅、東京都港区の「高輪ゲートウェイ」駅、足立区の「綾瀬」駅にある駅前大規模空き地のナゾについて調べてみました。

往年のレジャータウン「南船橋」駅南口はどうなる?

千葉県船橋市のJR京葉線「南船橋」駅前に広大な空き地があります。かなり長い間放置されたままになっており、空き地の隣にある「IKEA-TOKYO BAY」へ買物に行くたび気になっていました。

この空き地に隣接してUR都市機構の若松二丁目団地があるので、「URの敷地なのかな? いずれ新しい団地が建つ?」と思っていましたが、そうではありません。この空き地は「浜町2丁目市有地」という名称で、船橋市の所有地です。総面積は約4,000㎡で、駅南口から海浜幕張駅方面に向かって横長に伸びています。

南船橋駅がある船橋市浜町は、かつて東洋一の大温泉娯楽場と謳われた「船橋ヘルスセンター」があった場所として知られます。広大な敷地内では、温泉・遊園地・劇場・ボウリング場・アイススケート場・プールのほか、海辺での海水浴、遊覧船観光なども楽しめたようです。

同施設が1977年に閉園した後、この地は「ららぽーと船橋ショッピングセンター(現ららぽーとTOKYO-BAY)」や「スキードームザウス(2002年閉鎖)」、そしてIKEA-TOKYO BAYへと受け継がれていきました。

船橋ヘルスセンター時代、徒歩圏には京成本線「船橋競馬場(当時の駅名はセンター競馬場前)」駅しかなく、京葉線および南船橋駅が開業したのは1986年のことです。駅前に現存する商業施設はららぽーとTOKYO-BAYやIKEA-TOKYO BAYなど、そして「ワンダーベイシティサザン(総戸数1,211戸)」や「東京ベイスクエアプリズム・ミッテ(総戸数358戸)」といった大規模分譲マンションも続々建ち上がっています。

船橋市では「JR南船橋駅南口市有地活用事業」と銘打って、浜町2丁目市有地の活用事業をはじめようとしています。

横長に広がる土地をA~Eの5つの街区に分け、A・C街区は店舗併用の分譲住宅、駅出入口に近いB街区は芝生の広場や東屋、物販・飲食などの商業施設、そしてUR若松二丁目団地や新たに建設される分譲マンションなど住宅エリアにつながる通路を整備する予定です。さらに、D街区は地域のインフォメーションセンターやコミュニティスペース、E街区は市営福祉施設等の建設が予定されています。

かつて温泉レジャータウンとして賑わった時代と比べると、今の南船橋駅前は若干寂しい印象があります。南口開発を機に往年の賑わいが戻ることを期待したいところです。

鉄道遺構が出た「高輪ゲートウェイ」駅西口はどうなる?

JR山手線内では49年ぶりの新駅として華々しく誕生した「高輪ゲートウェイ」駅。開業から1年が経過した駅周辺を眺めてみると、駅西口(港区高輪側)・東口(港区港南側)ともに鋭意工事中の様子です。

東口には「芝浦水再生センター」があるため、道路整備程度で工事終了と思われますが、西口は都営浅草線「泉岳寺」駅と向かい合う商業エリアですから、今後の展開を期待しないわけにはいきません。

西口の土地はJR所有の車両基地跡地で、現在は一部に「Takanawa Gateway Fest(高輪ゲートウェイフェスト)」という期間限定のイベントスペースが設けられています。駅が開業した2020年は、ここで新駅記念イベントや東京オリンピック・パラリンピックのパブリックビューイングが予定されていましたが、コロナ禍により規模を縮小しての開催、延期または中止になっています。

高輪ゲートウェイフェストとしての利用期間終了後は、再開発事業である「品川開発プロジェクト」が本格始動します。

第Ⅰ期では1街区から4街区までの工事が行われ、1街区には住宅・教育施設、2街区には文化創造施設、3街区には商業・生活支援施設、4街区にはホテル・コンベンション・カンファレンス・ビジネス支援施設と、それぞれの施設カテゴリーを網羅した4棟のインテリジェントビルが建ち上がります。

第Ⅰ期の完成予定は2024年で、これと同時に高輪ゲートウェイ駅はグランドオープン(まちびらき)となります。

しかし、同駅のグランドオープンまでには解決すべき大きな課題があります。それは開発地内で出土した鉄道遺構「高輪築堤」跡の取り扱いです。高輪築堤は日本初の鉄道路線の一部で、明治時代に描かれた錦絵にも登場するほど歴史的価値の高いものです。

出土直後から遺跡研究の専門家チームが現地入りして調査を行い「出土現場で保存すべき」との見解を表わしていますが、再開発事業者は「工事を優先して移築保存」を主張、現在も議論が重ねられています。

折衝がもつれて放置された「綾瀬」駅東口はどうなる?

JR常磐線「綾瀬」駅東口の「サンポップビル」が解体されてから数年が経過しましたが、この空き地には一体何ができるのでしょう。同ビルでは、かつて多くの地元住民に親しまれた「サンポップ・エトセトラ綾瀬」や「東京マリアージュ」が営業していました。

サンポップ・エトセトラ綾瀬はファッション・グルメなどの専門店が集約されたショッピングモールで、地域に欠かせない商業施設でした。一方の東京マリアージュは年間約100組のカップルが結婚式・披露宴を挙げる結婚式場で、その他、小規模の会合や法事などの地元需要が高い施設でした。

サンポップビル跡地は2015年に大手マンションデベロッパーが買収、総戸数350戸程度の分譲マンション建築が予定されていました。しかし、もともとはショッピングモールで賑わった場所であり、何より駅前の一等地です。

地域住民からは「すべて住宅でなく、低層階には店舗を入れて欲しい」という要望が上がりました。地元自治体の足立区もその意向を汲んでデベロッパー側に折衝したものの折り合いが付かず、デベロッパーは建築計画を全面凍結し、土地はそのまま放置されることになったのです。

数年間放置された空き地問題が動き出したのは2020年のことでした。地域住民から東口開発案についての意見・要望を吸い上げながらデベロッパーとの交渉を重ねていた足立区が、デベロッパーからマンション用地の一部を買い受けることを決断したのです。

これにより、敷地の一部を交通広場として整備し、建物の低層階に商業施設や保育施設などを入れる旨、区とデベロッパーとの間で覚書が交わされることになりました。地域住民の要望が盛り込まれた新たな駅前ビルの完成は令和7年春の予定です。

まとめ

今回は自治体から具体的な事業計画が発表されている3ヵ所の駅前空き地について紹介しましたが、この他にも、全国には開発事業が頓挫したまま放置されている広大な空き地が多数存在します。

放置されてしまう理由には、自治体の予算不足やデベロッパーの利権絡み、住民の反対運動、遺跡の出土などさまざまあるようです。これらの諸問題が解決して再開発事業がはじまるとなれば、周辺の不動産価値も大きく変わってきます。ある意味、事業が頓挫している間は投資家にとって安値買いのチャンスの時期といえます。

駅前再開発事業の進捗情報は、新聞等のほか自治体のホームページでも紹介されていますので、駅前で長く放置されている空き地や廃墟ビルを見つけたら、まずはそれらの媒体をチェックしてみることをおすすめします。