親名義の不動産を突然相続することになったら、どう対処すればいいのでしょうか?

実家が都市部にあれば売るにも貸すにも好条件ですが、地方都市にある実家の処分は困難を極めます。放置すれば固定資産税がかかり続けますし、空き家のままでは老朽化・崩壊して、ご近所に迷惑をかけることになるかも知れません。

不動産の相続問題は、富裕層だけのものではありません。実家がある人ならいずれ考えなくてはならない「人生の課題」と言えます。今回は都会の実家と田舎の実家、それぞれのケースでどのように相続対策をすればいいかを考えてみたいと思います。

「都会の実家」の相続

まずは、東京23区など都市部に実家がある場合の相続対策について考えていきます。

都市部は人口が集中しており、非常に高い不動産需要があります。春には進学や就職で多くの若者が地方から転入してきます。そのため賃貸ワンルームの入居状況は年間を通して安定しており、たとえ賃貸活動が一段落する夏から秋に部屋が空いたとしても、年末までには次の入居者が決まるでしょう。

都市部は交通アクセスに恵まれ、ショッピングモールやエンターテインメントなどの商業施設も多彩で、その暮らしやすさは地方都市との比ではありません。都会の暮らしやすさに慣れた転入者たちは結婚後も帰郷せず都市部に留まることが多く、ファミリー層をターゲットとした一戸建て住宅や2~3LDKマンションの売れ行きも好調です。

賃貸市場においても物件種類を問わず高い家賃収入が見込めるため、不動産投資にも向ています。

都会ならではの近隣問題

しかし、人口が多いゆえに発生する問題も多々あります。例えば、建物が隙間なく林立する住宅地では、土地と土地との境界線がハッキリしていないことなど日常茶飯事です。一戸建て住宅のような土地持ち分割合が大きい不動産を売却する際は、売り出し前に隣接する土地や道路との間の「境界線確認」が済んでいることが望ましく、未確認のまま売り出しても購入検討中の顧客から契約の条件として境界線確認とその登記を求められます。

境界線確認は、土地の面積(地積)を精密に測量し、その結果を記した書面に隣接土地所有者の署名・捺印をもらい、法務局で地積測量図の登記を行うまでが一通りのフローになります。これらの実務は土地家屋調査士の資格を持つ不動産会社に依頼することができます。

境界線確認への署名・捺印については、実家の親と古くから交友があったお隣さんなら積極的に応じてくれることでしょう。しかし、お隣の一家が代替わりしていたり、土地・建物がすでに売却されて第三者の所有になっていたりすると、所有権者となかなか連絡が取れない、署名に応じてくれないというトラブルも発生します。

ほかにも、測量したところ実家の塀が隣地に、反対に隣地住宅の屋根が実家に空中越境していることが発覚するケースもあります。このような場合、「次回新築時に必ず越境を解消する」旨の承諾書を交わしておかなければなりません。

都市化が進んだ繁華街でも要注意

さらに深刻な問題は、実家の土地が公道に面していない場合です。

住宅を新築する際は、行政担当部署に「建築確認」の届出を行い、承認を得ないと工事が始められません。建築確認では、建物面積に対する容積率・建蔽率のほか、敷地が幅員4m以上の道路(公道や一部の私道)に面しているかどうかも見られます。親世代が実家を新築した時代はこれらのチェックが曖昧でしたが、現代は厳格化されたため、法的に認められた道路に土地が面していないと新築はできません。

不動産業界ではこういった不動産を「再建築不可物件」と呼び、相場の2割減~半額程度の安価で取引を行っています。再建築不可物件は、近年急激に都市化が進んだエリアの片隅にひっそりと佇んでいます。たとえば中央区月島・勝どきの路地裏、新宿区四谷の小規模スナック街、港区麻布十番の商店街裏通りなどです。こういったエリアは行政機関や大手ゼネコンの再開発事業計画が拡大すれば地価が一気に高騰しますので、それまでの間は賃貸運営などで温存所有し、機が熟すのを待つという手もあります。

「田舎の実家」の相続

大学進学や就職を機に都市部へ転入してきた人たちは、そのまま都市部で家庭を持ち、子供が独立した後も暮らし続けるというケースが多いでしょう。都心部は様々なインフラが整っているので暮らしやすく、一度この生活を経験したら地方の暮らしには戻れません。都会での暮らしを満喫する一方で、田舎に住む親の相続が始まった際にどう動くかについても考えておかなければいけません。

田舎といっても、JR在来線や新幹線も利用できる地方拠点都市の不動産であれば、賃貸経営や売却は容易にできますが、問題は鉄道路線が延びておらず、バス便運行も朝晩に数往復程度、農協直営のスーパーマーケットはあるもののコンビニや薬局はなく、見わたす限り田畑や森林が広がっているような過疎エリアです。

実家は元農家だったため土地面積は広大で、グロス価格でかなり高額になりそうなイメージが持てますが、利便性が低い地域の土地取引価格は安く、良くても坪単価10万円程度。建物も築年数が経っていれば評価額は0円です。建物の躯体がしっかりしていればリフォームして賃貸運用する手もありますが、コンビニもない場所で賃貸需要が見込めるかどうか疑問です。だからといって無人放置しておけば廃墟化が進んでしまいます。全国の地方都市起こっている「空き家問題」はこういった経緯で増えています。建物を解体して更地として売り出しても、購入者がいつ現れるか分からないのです。

実家が「農家」の場合は要チェック

生活利便性の低さに輪をかけてさらに処分困難なのは「市街化調整区域」です。市街化調整区域にある土地には原則として農業従事者しか住宅を建てられません。そして農業関連以外の建物を新築する場合は厳しい制約があります。不動産評価も田畑扱いのため高値では売り出せません。とくに実家が農業を営んでいたり元農家だった場合は、実家の土地が何かしらの制限を受けていないかについて行政窓口などで調べておく必要があります。

親が健在なうちに情報共有を

都会も田舎も関係なく、不動産をはじめとする遺産相続の際には、親の兄弟・姉妹やこれまで交流のなかった遠い親戚までもが必要以上に相続権を主張してくる可能性があります。加えて、これまで何の問題もなく暮らしていた実家が親のものではなかった(=不動産の登記名義がすでに死亡した祖父・祖母のままになっていた)というケースも多々あります。

こういった場合は過去に遡ってエビデンスを集め、最終的には自分(息子・娘)に相続権が移ったことを立証しなければなりません。万一の際これらのトラブルにたじろがないためにも、親が健在なうちに所有財産の所在や登記状況などについて話し合い、資産情報を共有しておいた方が賢明です。

まとめ

「境界線確認ってどうやってやるの?」「うちの実家の土地は再建築不可にあたる?」「田舎の不動産の売却手段は?」「空き家はどうやって管理すればいい?」などと一人であれこれ悩む前に、まずは信頼できる不動産会社に相談してみましょう。

都心部・地方問わず、賃貸運用のアイディアや適切な売却のタイミングを教えてもらえます。併せて価格査定を依頼すれば、条件が悪いと思い込んでいた不動産でも高値評価が出るかも知れません。