『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』(KADOKAWA)が大ヒットし、現在はビジネスマンのかたわらライターとしても活躍されている借金玉さん。前回のコラムではご自身の経験に基づく投資術についてお話いただきましたが、今回も濃厚すぎる過去の体験から導き出された投資についてのお考えをお聞きしました。「お金がないから投資はできない」と考えている方は是非ご一読ください。

みなさん、投資やっていますか?

最近は景気もぱっとしませんので、「投資に回すカネなんかありゃしないよ!」という方も多いのではないでしょうか。かくいう僕も数年前に会社をつぶし、こうして文章のお仕事がいただけるようになるまで食うや食わずの暮らしをしておりました。

しかし、本格的にお金がないときこそ投資をやるべきであるというのは、考え方の一つとしてあります。今回はお金がないときに行う投資の価値についてお話させてください。

投資は世界を面白くする

みなさんパチンコはやりますか? 賭け麻雀はどうですか?(賭け麻雀は違法です)

もちろん、未来を考えるのであればこうしたバクチはやらないに越したことはありません。しかし、バクチにはまる人が後を絶たないのを見ればわかるとおり、ギャンブルというのは大変に面白いものなのです。

僕もかつてパチンコにはまっていた時代がありました。全財産5万円の時にやるパチンコは、一歩間違えばスッテンテン、うまくいけば全財産が二倍になる。それはもうたまらない面白さがあります。そして、お金が増えてくると不思議と楽しさがあせてくるものでもあります。月収100万円の人が丸一日かけて5万円勝っても、それほどはうれしくないですよね。実は、投資にも同じことが言えます。少ない資金を生活費から絞り出して行う投資は、潤沢な資金で行う投資よりはるかに面白いのです。

ところで、みなさんも一度は「経済を勉強しよう」と思ったことがあるのではないでしょうか? 日経新聞を購読したままほとんど読まずに部屋の隅に溜まっていった……という経験を持つ人も少なくないでしょう。なぜ人は勉強できないのか、話は簡単。面白くないからです。僕も大学生になったころ、「もう大人なのだから経済を理解しなければいけない」と思って勉強を始めたことがありました。一週間と続かなかったことは言うまでもありません。

しかし、現在の僕は経済ニュースがわりと好きです。元金融勤めということもありますが、経済ニュースというのは面白さがわかってくると、なかなかエキサイティングなものです。世界のあちこちで日常的に賭博黙示録カイジみたいなことが起きているわけですからね。なぜこうなったかと言いますと、大学時代、僕は奨学金を投資にブッこんでいたからです。

体験利回りを高く取れ

僕が大学在学中のことですが、サブプライムショックが直撃しました。そのころ僕は順調な上昇相場に乗っかって、大学生にしてはそこそこ大きいポジションを取っていました。しかし、最終的には「学費が払えない!」と教室で叫んで教授に「静粛に!」と怒られるなどあまり思い出したくない状況に陥ったのですが、あの資産がモリモリと増えていくとき、あるいはガリガリと減っていくとき、間違いなく僕は最高に楽しかったと思います。

これは少し負け惜しみが入っていますが、僕はあの大損に終わった投資をやっていて良かったなと今では思います。自分自身が相場を張っていなければ、僕は経済ニュースを目を皿にして見ることなど決してなかったでしょう。人間というのは、シャレにならないお金がかかると脳のクロックが上昇するのです。この状態で勉強をすると信じられないほど内容が頭に入っていきます。パチンコでも麻雀でもやったことのある皆さんならわかるでしょう。わからない皆さんは、バクチで理解するのは避けましょう。

前回のコラムでは「体験型投資」というお話をさせていただきました。漫然とお金を運用するのではなく、お金を運用する中で多くを学び、楽しむことが重要だと僕は考えています。そして、投資から最大限学び、楽しむことができるのはむしろ「お金がないとき」だということです。学生の乏しい懐から捻出した10万円と、年収600万の独身サラリーマンにおける50万円では前者のほうが圧倒的に重さがあります。お金がないときの投資ほど圧倒的に「体験としての利回り」が高いのです。身を切るような切実で最高にエキサイティングな投資を安全にやれるのは金がないときだけと言えます。

お金なんてものはしょせん天下の回りもの。盛者必衰、数千万あった口座も気づいたらゼロになっています。それを経験した僕が言うんだから間違いありません。しかし、ギャァァ金が金が! なんとかして取り戻すには?! 次の値動きは?! と全力で脳を回転させた経験は、誰にも奪えないのです。インターネットにへばりついて情報をかき集めて分析したあのとき、あなたの脳は確実に成長しています。僕はこの経験を生かして大手金融機関に就職することに成功しました。あっという間にドロップアウトしたので、その金融機関に採用を失敗させたとも言えます。

脳をクロックアップさせて、世界を楽しもう

お金に余裕が出てくると、投資をやっていても全力で脳を動かすことが結構難しくなってきます。1,000万円のうち、10万円の含み損が出たからといって、脳がクロックアップする人は珍しいでしょう。しかし、これが20万円のうち10万円なら話は別です。もちろん、1,000万のうち500万円が失われれば同じ効果が期待できますが、それは結構人生にディープインパクトを叩きこんでしまいますね。まぁ、ディープインパクトを食らっても人間は結構生きていけますが、食らわないに越したことはないでしょう。僕も食らいたくなかったです。

多くの手元資金のない皆さんは「投資なんてお金のある人がすることだ」と思って遠ざかってしまうことも多いかもしれません。しかし、体験型投資という考えではまさに金がないときこそ投資をやるべきなのです。お金がないときこそ脳をフル回転させて投資を行います。投資の面白さを感じ、後々も経験として生きてくるのです。大丈夫、そもそもお金を持っていないなら、仮に失敗したとしても人生に与えるインパクトはそう大きくありません。

最近よく見かけるあまりに気の毒なケースですが、今まで投資というものから縁遠かったお金持ち、経済ニュースを見る習慣すらない人が投資に参戦した結果、とても辛いことになっています。これはもう、金がないときにやるべきことをやっていなかったからとしか言いようがありません。失敗するなら早いうちなのです。大ダメージにならない程度に失敗しておけば、マネーマネジメントも必然的に身について来ます。

僕の好きな言葉に「あなたは貧乏人ではない、まだ金を持っていない金持ちだ」というものがあります。かつて僕が極貧生活をしていたころ、知人が言ってくれた言葉です。今のところ僕はまだ貧乏なので、この言葉はこれから実現していきたいところですが、お金がなくても投資はできるし、お金以外にも蓄えられるものはあるのです。外貨でも株でも不動産投資でも、なんでも構いません。あなたの身を切るようなお金を投資し、その中で学んでいけば間違いなく成長します。それがあなたを成功に導くかはわかりませんが、経済ニュースが楽しめるようになると世界は少し豊かになります。

世界を楽しみましょう。あなたの10万円を投資した利回りはほんのささやかなものかもしれません。あるいは跡形もなく損失するかもしれません。しかし、そこからはとても豊かな体験が得られます。

念の為ですが、投資は「失くしたら痛いけど、人生には響かない」範囲の額でやりましょう。学費が吹っ飛んで、2時間単位でどんどん客が入れ替わるラブホテルで一日18時間働くのはとてもつらかったですよ……。

〈プロフィール〉
借金玉(しゃっきんだま)
33歳の発達障害者(ADHD)。男性。早稲田大学卒業後、大手金融機関に就職するも一切仕事が出来ず起業、社員二桁くらいまで育って破綻。後、鬱を経て非正規営業マンとして社会復帰し、「発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術」(KADOKAWA)を上梓、電書含め7万部越え。色々あったけど、今日もなんとか生きています。
Twitter:@syakkin_dama
書籍:『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』