社会問題となった保育園問題

「保育園落ちた日本死ね!!!」

2016年2月、この強烈なフレーズにより、匿名のブログが大きな注目を集めました。国会において議論となるほどです。共働き家庭が抱える保育所の問題は以前から囁かれていましたが、これを発端に、待機児童問題を巡る議論が本格的に活発化しているよう感じます。

子供が欲しい共働き家庭の多くや、産休や育休からの復帰を希望する親がいる家庭が頼りにするのが保育所。大切なわが子を安心して任せられ、できればなるべく経済的負担も少ない保育所に我が子を預けたいと思うものです。

ここでは、共働き家庭が抱える保育園の問題。認可・認可外の費用の違い、入園の条件や倍率など保育園問題の現実について紹介します。

待機児童問題が起きている社会的な原因とは

社会問題化している「待機児童問題」。保育園に落ちた、保育施設が見つかったが家から遠すぎる、といった声が全国から聞かれます。厚生労働省資料によると、2017年4月1日時点で認可保育所に入れない待機児童は全国で2万6081人。現在のところ待機児童数は漸増傾向にあります。ではなぜ、少子化の進む日本で、待機児童が増えるのでしょうか?

保育所を‟利用する側“の理由としては、「共働き家庭の増加」「社会進出する女性の増加」があります。不景気のなか、家計を支えるために共働きを選ぶ過程が増えています。また、男女平等の観点から、今まで育児を担っていた女性が、出産後も職場復帰する割合が増えてきたのも、保育所の必要性が増した要員でしょう。

保育所の‟運営側“として十分な数を用意できない理由としては、「保育士の不足」があります。給与水準が低く、離職が多い職業となっています。保育士の賃金は政府や自治体からの手当てによるところが大きいのですが、社会保障の支出の伸びが税収を上回っている現在、社会保障分野では高齢者向けに予算がどうしても優先されるため、なかなか保育への予算が増えないという現実があります。

政府は2013年に「待機児童解消加速化プラン」、2017年に「子育て安心プラン」を発表しました。しかし、野村総合研究所による2017年のレポートでは、2020年までに整備が必要な保育の受け皿は88.6万人分と予測されており、政府が発表した32万人との間には大きな乖離があります。

以上のことから、今後も待機児童問題に大きな改善は見込めず、保育所入所の倍率は若干の低下にとどまるとみられます。

認可保育所と認可外保育所の違いとは?

供給が追い付いていない保育所は現在、入ることができる倍率はとても高いものとなっています。保育所は厚生労働省が管轄する「児童福祉施設」で、乳児や幼児(0歳~)の「保育」を行うところですが、大きく「認可保育所」と「認可外保育所」の2つに分けられます。

認可保育所は、国が定めた認可基準をクリアし、都道府県知事(政令指定都市市長、中核市市長を含む)に認可された施設です。保育の質という観点では、「認可」であれば、国の定める最低基準は担保されているといえます。認可保育所は公立であることがほとんど。公立は自治体が、私立は主に社会福祉法人が運営しています。「認可」は立地や設備に恵まれたところが多く、公立であることへの安心感や保育料の安さもあり、第一希望にする家庭が多いです。

認可されていると、国から補助金が出ます。さらに子育て支援や待機児童解消に積極的な自治体は上乗せして補助金が出ることもあります。その上、保育料が家庭ごとの所得に応じて軽減されていたり、2人目以降のきょうだい割引があることもあります。

認可保育所には、市区町村などの役所に入所の申込みをします。申込みには、「保育に欠ける」という条件が必要です。これは、共働き、次の子供の妊娠・出産を控えている、同居親族の介護が必要、母子家庭または父子家庭、心身障害や怪我、生活保護世帯であるなどの理由で、子供の面倒を充分に見れない状態であるということです。「保育の実施基準」や「保育の調整基準」により、ランクや点数をつけて選考され、入所の可否が決定されます。保育料は、世帯収入と子供の年齢によって決まります。収入が多いほど、年齢が小さいほど料金が高くなります。保育時間は、朝7時半から夕方5時もしくは6時までが一般的です。延長保育は夜7時ごろまで行っているところが多いようです。

これに比べて、認可外保育所は、入所条件が緩めですが、費用が高めです。認可外保育所(無認可保育所)は、国の認可基準をクリアしていない保育所です。ただし、「認可外」であっても設置の申請は必要です。あくまでも、一部の認可基準をクリアできていないというだけであり、好き勝手に設置できるわけではありません。「届け出施設」と呼ばれることもあります。

ユニークな保育方針があったり、24時間の保育をしていたり、さまざまな習い事ができたりするなど、認可保育所にはない多様な施設もあります。一方で、質が低い保育をしている施設も少なからず存在していて、施設選びには慎重になる必要があるでしょう。

認可外保育所の入所は、保護者が直接申し込みをします。地方単独事業保育所では、自治体に申し込む場合もあります。認可保育所への申込みとは異なり、「保育に欠ける」というような条件はありません。「認可」に比べて申し込みに必要な書類が少なく、申請が簡単な施設が多いようです。保育料は施設によって大きく異なります。補助金が出ていないこともあって、一般的には「認可」よりも高くなる傾向にあります。保育時間はほぼ認可保育所と同じで、朝7時から夕方6時が一般的です。ただ、24時間体制で夜間も預かってくれたり、延長保育や夜間保育、休日保育を行ってくれるところもあります。

認可外保育所の一種に、地方単独保育事業所があります。「国の認可基準には適合しないが、自治体の基準に適合している」という施設に対して、地方自治体が独自に助成を行う保育施設です。認可と認可外の間、「準認可」的な位置づけとなります。東京都の「認証保育所」、横浜市の「横浜保育室」、仙台市の「せんだい保育室」など、首都圏や地方都市部に多くあります。待機児童が多いが、敷地面積不足などで国の基準に達していないというようなケースが多いようです。

結局のところ、認可保育園と認可外保育園、どっちがいいの?

現状の利用児童数は、「認可」が約230万人、「認可外」が約20万人 と、「認可」のほうが圧倒的に多くなっています。施設数の関係もあるでしょうが、やはり「認可」は保育料が安くてすむところが理由と考えられます。所得額などに応じて軽減があります。多くの自治体で、第2子は半額、第3子以降は無料というような2人目以降の割引制度があるのが大きいです。保育の質に関しては、「認可外」には多様性があるため、「認可」に劣るとは必ずしも言えません。定員ギリギリまで受け入れている「認可」よりも、人数やスペースにゆとりのある「認可外」を選ぶ保護者もいるそうです。

最近では、「認可」に入れなかった場合は、地方単独保育事業所を検討する保護者が多くなっています。これは自治体が運営する「認可外」保育園ですが、保育料が「認可」を下回るところもあります。さらに、認可外保育所の利用者補助がある自治体もあります。

制度や保育所について、具体的に情報収集して比較検討を

2018年5月31日に保育料に関するニュースがありました。政府が2019年10月から始める幼児教育・保育の「無償化」の詳細をまとめたというのです。自治体から「保育が必要」と認定された世帯について、認可保育所のほか、ベビーシッターなど幅広い認可外のサービスも支援してくれるというのです。この「無償化」の財源は、2019年10月に予定する消費増税による増収分8000億円が充てられるとのこと。日々の買い物などで支払う消費税が増えることを考えると、実質の家計負担の減少幅はこの額面よりは少なくなるとも考えられますが、国をあげて手厚い保証制度に踏み切ったニュースは、子育て世代に大きな影響を与える取り組みとなりそうです。

保育に関する保証は、お住まいの地域や勤務先の地域によって異なります。地域の自治体制度や個別の保育所施設について、具体的に情報収集をしましょう。自治体ウェブサイト、保育園のウェブサイト、配布資料などで情報収集できます。その地域ですでに保育所を利用している兄姉やご近所のママ友などのクチコミも貴重な情報源です。

また、お子さんが毎日過ごす場所になりますので、認可保育園であれ認可外保育園であれ、直接見学することは重要です。園の雰囲気や保育方針、保育士さんとの相性、給食やおやつ、施設の清潔感など、たくさんのポイントがあります。玄関周りの様子や、おもちゃの人形の扱い、職員の表情や態度などに注目すると良いでしょう。園庭開放や体験保育の機会があれば、積極的に参加してみましょう。

可能であれば、認可保育園の数が多いなど、入園の可能性が高い地域へ一時的に引っ越すというのも選択肢のひとつになるかもしれません。