不動産売却時にはさまざまな書類が必要になります。行政機関で取得するもの、売却を依頼した不動産業者が作成するもの、または対象物件の管理組合・管理委託会社が発行するものなど多種多様です。

不動産業者に任せればすべて揃えてくれますが、売主にもぜひ知っておいていただきたい不動産売買に必要な書類取得の手続きと費用について説明します。

売主が知っておくべき必要書類とは?

不動産取引にはありとあらゆる書類が必要になります。通常は売却を依頼した不動産業者が諸々の発行窓口で入手してくれます。中には売主本人でないと取得できない書類もありますが、それらは委任状を作成すれば取り寄せ可能です。

マイホームの買い替えであればこのように他人任せで良いかもしれません。しかし不動産の売却・購入を繰り返す投資家であれば、売買取引のタイミング毎に必要な書類について知っておくと良いでしょう。

売却依頼時

個人情報取扱同意書

不動産取引においては、さまざまな場面で個人情報の確認が必要になります。そのため、不動産業者は事前に売主の身分証明書提示を求めると同時に、「個人情報取扱同意書」への署名を求めます。

登記簿謄本

売却物件の所有者を確認するため「登記簿謄本(全部事項証明書)」を取得します。全部事項証明書には土地や建物の所在・面積、所有者の住所・氏名、ローン借入状況等が記載されています。法務局で取得すると1通600円(収入印紙払い)かかりますが、インターネットの「登記情報提供サービス(民事法務協会)」で取得すれば1通332円です。

重要事項調査報告書

売却物件がマンションの場合、その管理形態や管理費・修繕積立金の額、滞納状況や繰越金などの状況を確認するため「重要事項調査報告書」を取得します。マンションの管理組合(管理委託会社)が発行するもので、取得には1通1~1.5万円程度の手数料がかかります。

新築時パンフレット・図面集

分譲マンションの場合、新築時に物件パンフレットや図面集を発行している場合がほとんどです。これらの書類を売主が保存していれば良いのですが、もともと渡されていない、または紛失した場合は不動産データベース提供会社から取り寄せることになります。手数料はパンフレット・図面集それぞれ1部1,000~1,500円程度です。

価格査定書

売却物件の適正な売出し価格を決めるために「価格査定書」を作成します。不動産鑑定士が査定するものでなければ料金はかかりません。

媒介契約書

売出し価格が決まったら、売主と不動産業者間で「媒介契約書」を取り交わします。媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、専任媒介契約と専属専任媒介契約の場合は定期的な業務報告が受けられます。契約期間は3カ月間で、更新も可能です。

販売開始時

レインズ登録証明書

売主と専任媒介契約または専属専任媒介契約を交わした不動産業者は、「レインズ(不動産流通機構)」へ物件情報を登録します。レインズとは、インターネットの不動産業者専用物件情報サイトです。このサイトへ登録することで数多くの業者に物件情報を知らしめることができ、早期売却の可能性も高まります。

業務処理状況報告書

売主と専任媒介契約を交わした不動産業者は14日に1回、専属専任媒介契約の場合は7日に1回、売主に対し「業務処理状況報告書(業務報告)」を提出する義務があります。業務報告には広告媒体への掲載状況、顧客からの問い合わせ件数、内見回数などが記載されます。

買付証明書

買主候補から、購入希望価格、売買代金の支払い方法(現金またはローン)、手付金額、契約・引渡し希望日時などが記載された「買付証明書(または購入申込書)」が提出されます。購入希望価格欄には値引き(指値)価格が記載されている場合もあり、売主は自らの不利益にならない範囲で受け入れるか、拒否するか判断を迫られます。

売渡承諾書

売主が買付証明書の内容を確認してすべての提示条件を了承した場合は、買主候補に対し「売渡承諾書」を返送します。売渡承諾書には、売主と買主候補とが交渉の末決定した売買価格や契約日程等が記載されます。

売買契約時

売買契約書

売却物件のプロフィールの他、売主・買主間の取引条件を明示した書類が「売買契約書」です。売買契約書は宅地建物取引業協会の規定条文に則って作成されます。規定条文と異なる固有の取り決めがある場合は、文末の「特約条項」欄にその旨を記載して規定条文の内容を打ち消したり変更することもできます。

重要事項説明書

都市計画法や建築基準法、飲用水・電気・ガスなどのライフライン、土砂・水害、石綿(アスベスト)・耐震診断、管理組合の資金状況など、売買契約書より詳しく売却物件の状態が記載された書類です。ある意味、売買契約書よりも熟読すべき書類です。

付帯設備表

給湯設備がどの場所に設置されているか、キッチンにコンロ・グリル・食洗器等は付いているか、浴槽に追い焚き機能はあるか等、建物内にどのような設備が設置されているかについて記載された書類です。各設備の設置状況に併せて、不具合の有無も記載されます。

物件状況等報告書(告知書)

建物内(1棟建物の場合は建物外も)の壁・柱等のひび割れ、雨漏り、シロアリ、給水管の故障等があるかについて、売主または住宅調査会社が買主に対し告知する書類です。加えて過去に専有部や共用部で起きた事件・事故、慢性的な異臭・騒音などについても記載される場合があります。

重要事項調査報告書(2回目)

売却依頼時にも一度取得していますが、決済・引渡し前に再度取得して管理費・修繕積立金の滞納状況、繰越金の増減について確認できれば理想的です。加えて、もし売主が管理規約などの管理組合関連資料を保管していなければ同時に取り寄せれば良いでしょう。管理規約の発行手数料は1部3,000円前後です。

登記簿謄本(2回目)

重要事項調査報告書と同様、決済・引渡しに際し改めて登記名義人の変更がないか確認するため再度取得することが望ましいでしょう。

決済・引渡時

所有者変更届

マンションの場合、決済・引渡しによって物件の所有者が変わったことを管理組合に知らせる必要があります。そのための書類が「所有者変更届」です。所有者変更届提出と同時に、管理費・修繕積立金等の引き落とし銀行口座も伝えておくと良いでしょう。

土地・建物の固定資産税評価証明書

所有者移転登記の際、税金の精算のために売主が直接、または不動産会社が売主から委任状を預かって市区町村役場で取得します。固定資産税評価証明書の取得料(収入印紙払い)は地区町村により異なり、1部300~400円程度になります。

精算書

1年間にかかる固定資産税・都市計画税や、収益物件の場合は賃借人からの預かり敷金や直近の家賃の振り分け明細を表わした書類が「精算書」です。基本的には日割り計算となりますが、固定資産税・都市計画税は毎年1月1日を起算日にする場合と、4月1日を起算日にする場合の2種類があります。

引渡確認書

買主が売買代金を全額支払い、売主が物件の鍵を引渡し、所有権移転登記書類が整った段階で、売主・買主は「引渡確認書」に署名・捺印し、売買取引は終了となります。

まとめ

複数の収益物件を所有する不動産投資家でも、「重要事項調査報告書を取得するのにお金がかかるの?」と驚く人は少なくありません。

本来は売主が保管している資料で足りる場合もありますが、「探すのが面倒」「紛失してしまった」などの理由から、不動産業者に取得を依頼するケースが多いようです。多くの不動産業者は必要書類の取得を“サービスの一環”と考えており、売主に対し代金請求はしていません。