タワーマンションの購入に際しては、一般的なマンションの購入とは少し異なる視点が必要です。
一般的なマンションでは「良し」とされるものが、タワーマンションでは反対に避けるべき条件になっているケースがあるためです。

今回は、タワーマンションの「賢い選び方」について解説します。

一般的なマンション選びのポイントは快適性や機能性

マンションを購入する際、多くは「家族構成に合った間取り」「機能的な生活動線」「豊富な収納スペース」「日当たりの良さ」などを重視して選ぶものです。

ファミリーであれば、夫婦の寝室や書斎、子供たちの個室が確保できる部屋数の多い間取りが好まれることでしょう。また、料理や洗濯などの家事を卒なくこなせる水回り動線や、ウォークインクロゼット、シューズクローク、パントリーといった収納スペースが十分に確保されているかどうかも気になるところです。

そんなチェックポイントの中でもっとも重視されるのが「日当たりの良さ」です。

一般的なマンションの場合、主開口部(バルコニー)の方位で人気が高いのは南向き、次いで東、西、北の順になります。売買市場においても方位によって売れ行きに差が出るため、南向き住戸の価格査定はほかの方位と比較して高めに評価されます。

以上のように、一般的なマンション選びで重視されるのは快適性や機能性であり、至極「現実的」な観点で見られていることが分かります。

しかし、タワーマンション選びにこれらの概念は通用しません。

タワマンに求められるものは「非現実性」

「タワーマンション(以下、タワマン)」とは、地上20階建て以上の居住用高層建物のことを指します。

建物のデザインにもいくつかの特徴があり、建物中央をエレベーターホールが貫き、その周囲四方に住戸を配した「スクエア型」、建物中央が吹き抜けになった「ボイド型」、住戸の列が星形のように建物中央から外側へと伸びる「トライスター型」などが代表的です。

これらのデザインに共通するのは、建物の内側に共用スペースを置き、外側に居住用スペースを配することで、各部屋の窓を広く大きく採れるようにしている点です。このような眺望重視の設計により、リビングやベッドルーム、バスルームなど住戸内のどこからでも広大な景色を望むことができるのです。

ここで注意したいのは「主開口部の方位」です。一般的なマンションでは「南向き」がもっとも人気があり価格評価も高くなると説明しましたが、タワマンではそうとも限りません。ほぼすべての住空間に開口部が設けられているタワマンの場合、室内には季節を問わず強烈な直射日光が差し込みます。

とくに夏場は日差しによって室内温度が上がり、エアコンをフル稼働しても暑さが収まらない状態になります。このような事態を避けるため、売買・賃貸ともに北向き住戸が好まれる傾向も見られます。

さらに、立地するエリアによっても人気の高い方位はさまざまです。東京都内の恵比寿や目黒に建つタワマンの場合、東京タワーなど都心の眺望が拓ける北向き住戸に人気が集まります。また豊洲や東雲では、レインボーブリッジを望む西向き住戸が人気です。「眺望代」という言葉が生まれるほど、タワマンでは階層の高低だけでなく方位によっても価格が違ってきます。

タワマンを選ぶ際に重視されるのは快適さや使い勝手ではなく「眺望」、すなわち「非現実性」なのです。

賃貸は利回り6%以上、節税対策にも有効

タワマンは非現実を楽しむための住空間です。

生活感に乏しいタワマンは「永住」より「刹那」的な暮らしに向いています。刹那とはすなわち賃貸であり、「買えないけれど、一度は住んでみたい」とタワマンライフにあこがれる人たちへ貸し出すことでそのポテンシャルを発揮することでしょう。例えば2億円のタワマンを購入して家賃100万円で賃貸すれば、利回り6%で運用することも可能です。

富裕層の間では、相続税対策の一環としてのタワマン購入が主流となっています。

例えば、ある資産家が3億円の現金を持ったまま死亡(相続開始)した場合、現金3億円全額に対して相続税がかかってしまいます。しかし、生前にこの3億円で不動産を購入していれば、相続税の課税対象額は不動産の法定評価額に取って代わります。

土地の法定評価額は市場価格の8割程度ですし、その土地上に建つ建物の評価額も(実際の購入価格とは関係なく)築年数が経つにつれてどんどん下がっていきますから、現金で持っているよりも支払う相続税は安くなります。また、建物の経年評価額とは関係なく、方位や眺望の良さを理由に高値が付いている上層階住戸を購入すれば、節税効果はぐんとアップします。

タワマンはその階高や規模ゆえに、一般的なマンションと比較して高額な維持費がかかります。これが老朽化して建て替えとなったら、一体どのくらいの工期と費用がかかるのでしょう。

日本のタワマン第1号は1976年(昭和51年)に誕生したと言われますから、その歴史はまだ40年余りです。

コンクリート造の建物の寿命を60年程度と考えれば、その築年代まで達している物件は存在せず、建て替えの事例もまだありません。そういった未知のリスクも踏まえた上で購入すべきかどうかを検討する必要もあります。

都心のタワマンを安く買う方法

都心の一等地に建つタワマンを購入するとなると、間違いなく億は超えてきます。だからといって「庶民には高嶺の花」なのかといえば、そんなことはありません。探してみれば、比較的安価で購入できるタワマンもあるのです。

その一例が「借地権付き」のタワマンです。

東京都内では神宮前や神楽坂、麻布十番など「都心の一等地」と呼ばれる場所にも建てられています。周辺の所有権タワマン相場より2割程度価格が安く、借地のため固定資産税や都市計画税の支払い義務もありません。ただし、これらの物件は更新ができない「一般定期借地権」での土地賃貸借契約がほとんどです。契約期間は最短で50年間となり、契約満期となったら建物を解体し更地にして地主に返さなければなりません。

借地権のルールは1992年(平成4年)に大幅改定されました。旧法の借地権は借りる側を擁護する内容になっていたものが、新法では貸す側を守る内容に変わりました。新法施行から29年経ちますが、一般定期借地権で契約満期となったタワマンはまだありません。

都心立地なのに割安価格で売られているタワマンの広告を見つけたら、物件概要の「土地権利」欄を確認してみましょう。そこに「借地権」と書かれていたら注意が必要です。

契約条件は普通借地権(更新可能)か一般定期借地権(更新不可)か、購入時に土地の賃貸借契約期間が何年残っているかもチェックしましょう。購入する場合は、借地権の契約終了まで所有し続けるか、または何年後にどんな手段で売却するかも考えておくべきでしょう。

まとめ

ご存知の通り、タワーマンションでの暮らしは「成功者のステータス」的な認識も持たれています。

ここでの生活にあこがれを持つ人が多いため、賃貸需要・賃料ともに高く、売買に関しても(現在のところ)値崩れがなく高い資産価値を維持しています。購入すれば税金対策ができるという一面もありますが、将来的な修繕・建替えの不安も残ります。

購入の際は疑問点を残さぬよう、売買契約書や重要事項説明書を何度も読み返すことをおすすめします。