これまで資産形成に興味のなかった方でも、ここ最近の年金問題にまつわるニュースなどから、老後不安について思い巡らす機会が増えているのではないでしょうか。しかし、投資に漠然とした不安を抱いていたり、そもそも数字に苦手意識があったりすれば、なかなか足を踏み出しにくいものです。本記事では、そういった方にお勧めの資産形成を考察します。

普通預金では、いくら貯金しても金利が得られない

昭和から平成の初めのころは、「普通預金」「定期預金」でもそれなりにお金を増やすことができました。しかしこの超低金利時代、資産形成の選択肢にすることはあり得ません。

日本の金利の推移を見る指標として用いられるのが「短期プライムレート」です。これは「金融機関が優良企業に1年以下の短期で貸し出す際の最優遇金利」のことで、金融政策の一環として日本銀行が実質的に金利をコントロールしています。

日本銀行のデータ(「長・短プライムレート(主要行)の推移 2001年以降」日本銀行)によると、1990年前後には8.0%前後あったものが、バブル崩壊によりどんどん金利が下がり、2009年に1.475%となってから現在まで、ずっと変動していません。

たとえばみずほ銀行の場合、普通預金金利は0.001%です。定期預金の金利であっても0.01%となっています。100万円を1年間預けたとしても、普通預金の場合でわずか8円(20%税引き後)、定期預金でも80円(20%税引き後)しかつきません。1,000万円定期預
金として預けても利息は800円、1億円で8,000円…。銀行金利は「ほぼない」ものとして考えるべきでしょう。

プロがひしめく市場で勝負することになる「株式投資」

「資産形成」や「投資」と聞くと、株式投資を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。しかし株式投資は、百戦錬磨のプロ投資家や、超一流の機関投資家(証券会社のトレーダーなど)がひしめく市場に参戦する必要があり、生半可な知識しか持たない投資初心者が儲けることは簡単ではありません。

野村証券のデータ(2015年10月15日「野村個人投資家サーベイ」野村証券)によると、個人投資家1,000人に取ったアンケートでは、個人投資家1,000人のうち、「損益は概ねプラスだった」と回答した人の割合はわずか9.3%に過ぎません。「損益は概ね同程度であった」と答えた29.1%の人を除くと、約6割以上の人が損失を出していることがわかります。投資初心者がこのうちの上位10%の枠に入ることがどれほど難しいかは、おおよそ想像がつくのではないでしょうか。

なお、株式投資は投資家心理から、投資初心者であるほど、損失を出してしまいやすいという特徴もあります(ただし、これも他の投資も同じ傾向にはあります)。たとえば、「塩漬け」です。これは、投資した銘柄が、購入時の株価を割っているのにもかかわらず、「これから上がる」と考えて放置してしまい、さらに株価が下がって、売ろうにも売れない状態になることを指します。

実は、これは「サンクコスト効果」や「プロスペクト理論」といった人間の心理に基づくもので、何も対策していないと多くの人がそのような行動を取ってしまいます。

サンクコスト効果の日本語訳は「埋没費用」といったところですが、簡単にいうと「もったいないから捨てらない心理」のことを指します。

投資だけでなく、日常生活でもこうした心理は働いており、例えば「読み始めた小説を、つまらないと思いつつ最後まで読んでしまうこと」や「好きな人に3回告白してフラれたのに、諦められない」といったものが該当します。

また、プロスペクト理論とは、人間は「確実に得をする」選択と「うまくいけばもっと多く得するが、失敗すれば確実に損してしまう」という選択肢がある場面において、「失敗すれば確実に損してしまう」選択をするというものです。

たとえば、「元本から3%以上損をしたら問答無用で損切りする」など、事前に対策をしておかなければ、人間はほどんとの場面で同じ選択を繰り返してしまうのです。

こうした心理は、上記の2例以外にもさまざまなものがあり、初心者のうちはそのような心理が働くことを知らず、損失を重ねていってしまうのです。

FXは「レバレッジ」で負債を背負い込むことも…

投資の選択肢として、FXを思い浮かべる方もいるでしょう。特筆すべきFXの特徴として、国内業者であれば最大25倍までレバレッジをかけた投資ができるという点があります。例えば、100万円をFX口座に預ければ、2,500万円まで投資可能となります。

投資は利回りで考えるのが一般的であり、投資元本が多いほど有利になりやすくなります。年間の利回り+20%という好成績を収められた場合でも、投資元本が100万円であれば20万円の儲けにしかなりません。しかし、もしも2,500万円の投資元本があれば、500万円の儲けを得ることができるのです。

ただ、レバレッジを利かせれば投資元本の少なさをカバーできますが、失敗してしまった場合には、膨大な借金を背負うことになります。そのため、投資初心者の方は、決してレバレッジを利かせた投資を行わないようおすすめします。

しかし、FXでまとまった資産を築くのは容易なことではありません、株式投資より単純で、手軽なゲームのように見えるかもしれませんが、為替相場を読むのはプロでも難しいのです。

不動産投資で資産形成はできるのか?

不動産投資はどうでしょうか? 

日本不動産研究所のデータ(2018年11月27日「第39回「不動産投資家調査」」一般財団法人日本不動産研究所)によると、東京・城南地区の1Rタイプ賃貸住宅の期待利回りは4.8%となっています。預金金利はもちろんのこと、株式投資やFXと比べても悪くない利回りですので、ここでは1Rマンション投資について考察してみましょう。

先ほどあげたサンクコスト効果やプロスペクト理論など、投資を始めるにあたって障害となりうる心理は、株式投資のように「平日日中はいつでも売買できる」という状態だからこそ問題となるといえます。

不動産投資の場合、売却を実現するにはいくつかの手順を踏む必要があり、今日明日すぐに売却することはできません。このことから、状況を冷静に判断する時間を持ちやすく、初心者が陥りがちな失敗も避けやすいといえます。当然ですが、実際に売却したければ、売却できます。

ほかにもメリットがあります。晩婚化が進み、単身世帯数が増加している現在では、1Rマンションは需要が高く、また、投資家目線で見るなら、ファミリータイプの大型マンションに比べて価格が手ごろで、投資初心者にも扱いやすいといえます。

不動産投資の大きな特徴として、FXと同様、レバレッジを利かせた投資が可能である点があげられます。たとえば、3,000万円で購入した1Rマンションの年間の利回りが5%であれば、150万円の利益を期待できます。

不動産投資の場合、購入する物件を担保に融資を受けられるため、物件価格の満額を用意する必要はありません。融資を受ける金融機関や、取得する物件にもよりますが、マンションの場合、自己資金として物件価格の1割~2割程度を用意できれば、取得を検討することができます。

3,000万円の物件の場合、価格の2割に当たる600万円を用意したとすると、投資額600万円に対して1年間で150万円の利益ですから、利回り25%と、かなりの高利回りを実現できます。ローンを組む分リスクはありますが、仮に経営がうまくいかなかった場合でも、マンションを売却すれば、売却時にまとまったお金を得ることができる点もポイントです。

明快でわかりやすい、マンション投資の「損益通算」

1Rマンション投資は細かい数字の計算が苦手な方にもお勧めです。なぜなら、1Rマンション投資で損失が出た場合、給与所得などのほかの所得からマイナス分を差し引く「損益通算」という明快な処理ができるからです。

例えば、サラリーマンの方で500万円の給与所得がある方が、1Rマンション投資で50万円の赤字となってしまった場合、その年の所得を450万円とでき、差額分の還付を受けられます。

また、赤字となったとしても、原因が「ローンの返済」にあることが少なくありません。ローンの返済により手元のお金は減りますが、少しずつマンションが自分の資産になっていっていると考えると、総合的にみてそう悪いことではないでしょう。

まとめ

株式投資やFX、1Rマンション投資などいくつかの投資を紹介しました。仮に赤字になっても損益通算可能で、将来的には資産が残るという点、すぐに売却できないからこそ失敗につながりやすい投資家心理を回避できるという点、レバレッジを利かせることができ、かつ安定感がある点から、「投資に対する心配があり、なおかつ数字に苦手意識がある方」にこそ、1Rマンション投資がおすすめです。