メリット・デメリットを理解し、運用目的にあった投資対象を選ぶ

個人の資産運用には、さまざまな投資対象があります。代表的な「株式」「債券」「投資信託」「ETF(上場投資信託)」について、特徴やメリット・デメリットを学んでみましょう。

株式は配当金と値上がり益

株式とは、企業が資金調達のために発行する有価証券のことです。企業は、一般の人から集めた資金をもとに設備投資や新規事業などを行い、業績の拡大を目指します。上場株式は、証券取引所を通じて売買が行われています。その取引価格が「株価」です。株式は、物やサービスの値段が上昇するインフレに強い資産といわれています。インフレになれば企業の名目の売上高や利益、資産などが増えることになり、一般的に株式の価値が高まって株価が上昇するためです。

株式投資で期待できる利益には、配当金(インカムゲイン)と値上がり益(キャピタルゲイン)があります。配当金は、投資先企業の利益によって変動し、企業が減益や赤字になれば、受け取れないこともあります。また、一定数の株式を保有している株主に対して自社製品やサービスを付与する「株主優待」や、株主総会における議決権も株式投資のメリットです。

株式には、「国内株式」と「外国株式」があります。日本で暮らす私たちにとって国内株式は、投資対象としての親しみやすさや、比較的値動きの傾向をつかみやすいことがメリットです。一方、外国株式は、世界的な大企業をはじめ、将来的に大きな成長が期待できる新興国の企業に投資できるメリットがあります。ただし、為替の影響を受ける点や短期的な値動きが大きくなりやすい点に注意が必要です。

定期の利子収入で長期投資に適した債券

債券は、資金調達を考える国や企業がお金を借りた証として、投資家に対して利息の支払いや元本を返済することを約束した借用証書のことです。投資家は、株式と同様に市場を通じて債券に投資します。
債券には、
①満期になると額面金額戻る
②満期までの間に決められた利息を定期的に受け取れる
③市場価格で途中換金が可能
という特徴があり、長期投資に適しています。一般的に債券は、市場金利が上がると債券価格が下がり、金利が下がると債券価格が上昇するという関係があります。例えば、金利が上昇すれば、保有している債券を売却し、より高い金利の債券を購入する動きが出るためです。

最もポピュラーな国内債券である日本国債に投資するメリットを考えてみましょう。個人向け国債なら1万円単位の少額から投資でき、最低0.05%(年率)の金利も保証されているので、定期預金などと比べて高い利回りが期待できます。その一方、株式や社債などと比べるとリターンは劣後します。満期を迎える前には価格変動のリスクがあることにも注意が必要です。外国債券のメリットは、超低金利が続く日本に比べ、総じて高い金利が得られる点です。ただし、金利の変動による価格変動リスク、為替相場の変動によって価格が影響を受ける為替変動リスク、発行元の財政状況が悪化する信用リスクなどに留意しましょう。

初心者でも運用しやすい投資信託

個人で資産運用を行う場合、初心者でも運用しやすいのが投資信託(ファンド)です。投資信託は、投資家から集めた資金をひとつにまとめ、運用のプロが複数の株式や債券に分散投資し、これによって得られた収益を投資家に還元する金融商品です。1万円程度から始められることや、個人では投資することが難しい海外の株式や債券にも手軽に投資できる点がメリットです。株式中心に投資する「株式型」、債券中心に投資する「債券型」、株式と債券にバランスよく投資する「バランス型」などがあります。

投資信託で注意すべき点は、複数のコストがかかることと、預貯金とは異なり元本保証がないことです。ファンドの主な費用には、購入する際に販売会社へ支払う「購入時手数料」と、保有している間に支払う「運用管理費用(信託報酬)」があります。ファンドに投資することで得られるリターンは、これらのコストが差し引かれたものになるため、ファンド選びの際には、コストを十分吟味しましょう。

ETFはタイムリーな取引が可能

少額の資金から分散投資ができる金融商品には「ETF(上場投資信託)」もあります。ETFは、日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などの特定の指数に連動する運用成果を目指す、金融商品取引所に上場された投資信託です。1日1回、基準価額が発表される投資信託とは異なり、ETFは株式と同様に、市場が開いている間は刻々と価格が変動します。タイムリーな取引が可能な点は、投資信託にないメリットです。ETFの手数料水準も魅力です。ETFは投資のタイミングを自身で見極めて運用管理をするため、投資信託に比べておおむね手数料が低く設定されています。また、ETFにもデメリットはあります。ETFの注文は口数単位で行われており、投資信託のように金額を指定して購入することができません。また、多くの方が日常的に取引する銀行で購入できない点もデメリットです。

資産運用の投資対象には、それぞれメリットとデメリットがあります。商品の性質を正しく理解すれば、運用目的に合った投資対象を選ぶことができるでしょう