つみたてNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)が広まり続けています。

どちらも長期間に渡って、様々な金融商品に投資をし続ける投資の手法です。投資にかける時間を長くすることで、少しづつコツコツと利益を生み出すつみたてNISAやiDeCoは、少ないリスクで投資ができる優れた商品ですが、上昇トレンドの際に買い増す、下がりだしたときに売り抜けるといった臨機応変さに欠ける面があります。

そのような局面で効率的に利益をあげることができる金融商品が、「ブル・ベア」と呼ばれる投資信託(ファンド)です。

ブル・ベア型ファンドとは?その特徴を理解しよう

ブル・ベアとは、それぞれ相場の上昇・下落を意味します。ブルファンドは相場が上昇、ベアファンドは相場が下落しているときに、それぞれ利益が出ることを目指して設計された投資信託です。

ブル・ベア型ファンドは、株価指数先物取引(特に指定がなければ、流動性・効率性を考慮して、日経225先物である場合が多い)と呼ばれる金融商品を主に活用しています。価格変動率は、日経平均株価やTOPIXといった株価指数の変動率の概ね±1〜4倍となるように設計されています。株価が大きく上がったり、大きく下がったりすると急激に購入者が増える傾向にあります。

ブル型ファンドの特徴

株式市場(株価指数先物)が上昇すると、ブルの基準価額(投信の値段)も上昇し、株式市場が下落すると、ブルの基準価額も下落します。

ベア型ファンドの特徴

ブルとは逆になります。株式市場が下落すると、ブルの基準価額は逆に上昇し、株式市場が上昇すると、ブルの基準価額は逆に下落します。

ブル・ベア型ファンドの活用法

少ない資金で効率良く、短期間で大きい利益を狙う

ブル・ベア型ファンドの活用方法は、「少ない資金で効率良く、短期間で大きい利益を狙う」というものです。日経平均に連動することを目指し運用するインデックスファンドを買った場合と、基準価額の日々の値動きが、日本の株式市場全体の値動きの概ね3倍程度となることを目指し運用しているブルファンドを比較してみましょう。

投資資金が10万円あるとします。日経平均株価が10%上昇すれば、インデックスファンドは10%上昇しますから1万円の利益です。一方、この10万円をブルファンドに投資したならば、日経平均株価が10%上昇すれば、10%×3倍=30%上昇し、3万円の利益を得ることができます。

日経平均 10%上昇
→ 通常のインデックスファンド 10%上昇
→ ブルファンド        30%上昇

多少のリスク覚悟で、効率良く大きく増やしたいという方には有効な手法です。
ただし、この条件でのブルファンドは、市場の下落時も日経平均などの指数の3倍下がりますから、自分の思惑とは逆方向に動いてしまった場合は注意してください。下落トレンドが継続しているなかで、無理にブルを買い続けると、想像以上に含み損を抱えることになります。

買いしかできない積立てのヘッジに!値下がりリスクに対応

これがベアだとどうなるか、先ほどと同じ条件で、ベアファンドを見てみましょう。
日経平均株価が10%下落すれば、インデックスファンドは10%下落しますから、10万円を投資した場合、1万円の損失です。一方、この10万円をベアファンドに投資したならば、日経平均株価が10%下落すれば、10%×3倍=30%下落し、3万円の利益を得ることができます。

まだ価格が上がるかもしれないから保有している投信を売却したくない、という時にこのベアファンドを買うことで、保有投信の売却の代用をすることが可能で、株価下落対策としてのリスクヘッジにも有効です。基本的に積立投資は「買い」しかできないので、株価などが上がらないと資産は増えませんが、ベアを活用することで機動的な運用が可能になります。

ブル・ベア型ファンドで投資を行う上での注意点

トレンドがはっきりしない状態が継続すると資産が減る

例えば、ブルの日々の基準価額の値動きが、日経平均の日々の値動きの概ね3倍程度となることを目指し運用を行うファンドであれば、当日1%上昇するとブルの基準価額は3倍の3%上昇になりますが、翌日3%下落する(逆方向にいく)と理論通りの3%下落とはいかない場合があります。

3%上昇→3%下落
1日目:100万円 × 103% = 103万円 / 2日目:103円 ×97% = 99万9,100円

このように上昇・下落を繰り返すボックス相場のときには、想定以上に目減りしてしまうこともあるのです。このような現象は、期間が長くなればなるほど、金額が大きくなればなるほど顕著になる傾向にありますし、他にもコストや新規買付、解約などの影響を受けます。そこで、ブル・ベア型ファンドに投資する際には「なるべく何年も持ち続けない」「明確に上下している時だけ投資する」ことが肝心です。

ただし、一方向のトレンドが継続した時には、想定以上に利益がでることもあります。

3%上昇→さらに3%上昇
1日目:100万円 × 103% = 103万円 / 2日目:103円 ×103% = 109万2,727円

この例は、その日だけを見れば3%ずつ上昇していますので合計6%ですが、2日間のトータルでみると9%上昇と大きく増えています。これがいわゆる複利で増えていくということです。トレンドが継続している時は、短期間で利益を得やすい局面になります。さまざまな相場パターンが考えられますが、基本的にはせいぜい数週間~1年程度のトレンドについて、効率良く利益を上げる感覚で良いでしょう。

ブル・ベア型ファンド購入時のポイント

①償還まで余裕のあるブル・ベア型を買いましょう

前述の通り、ブル・ベア型ファンドは基準価額が激しく上下する特殊な投信になりますので、新規に設定されてから、信託期間が「無期限」に運用が継続されるものではなく、数年~5年超で償還されるケースがほとんどです。買ったばかりなのに、数カ月で償還を迎えて現金化されてしまったということのないように、信託期間が多く残っているファンドを選びましょう。

また、運用状況によっては「繰上償還」といって、途中で換金されてしまう可能性もありますので、ファンドの運用報告書などをたまにチェックすることも必要です。

②買付手数料や信託報酬のコストに注意

買付手数料や信託報酬がインデックスファンドに比べて高くなっています。コスト面からみても、ある程度は回転を効かせた運用が求められますが、NISA非課税枠を使いたい場合は、新規枠を消費しすぎないように注意が必要です。

ブル・ベア型ファンドを実際にやってみたいとなっても、慣れるまでにある程度時間がかかります。ひとまず体験してみたいというかたは少額から始めて、感覚をつかんでみるとよいでしょう。