「育児・介護休業法」を知り、いずれ訪れる親の介護に備えよう

少子高齢化で介護離職が社会問題に

現在の日本は、総人口が減少に転じている一方で、65歳以上の人口は増加を続け、諸外国と比べても類を見ないほど高齢化が進んでいます。2025年には、およそ800万人いる「団塊の世代」が75歳以上を迎えようとしています。このような状況の中、さらに深刻になると懸念されているのが「介護離職」の問題です。

「介護離職ゼロ」に向けて、法整備が進む


団塊の世代の介護にあたる子供といえば、企業の中では管理職や役員など、重要なポストを任されている人も多い年代です。もし、そういった社員が介護を理由に退職し、その後再就職を試みたとしても、以前と同じような職位・給与水準の仕事に就くのはなかなか難しいでしょう。退職してしまえば、当然収入が途絶えてしまいます。先の見えない介護への不安に、経済的な不安が加わり、肉体的にも精神的にも疲弊してしまうことでしょう。また、熟練の技術や豊富な経験を持った人材が退職してしまうのは、企業にとっても大きな痛手です。

このような介護離職者をなくそうと、労働者が仕事と家族の介護を両立できる仕組みづくりが国務として急ピッチで進められています。その筆頭となるのが「育児・介護休業法」(正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)です。この法律には、介護や育児と仕事を両立するための支援制度や、企業が講ずべき措置などが盛り込まれています。2017年1月には、制度がより利用しやすくなるよう法改正が行われました。

自分の身内にも、介護が必要となる日が突然訪れるかもしれません。事前にどのような支援制度があるのかを知っていれば、不用意な介護離職を防ぐことができます。どのような内容が盛り込まれているのか、具体的な中身を見ていきましょう。

育児・介護休業法にはどのような制度があるのか

①介護休業
要介護状態にある対象家族1人につき、介護休業を通算93日、3回まで分割して取得することができます。例えば、まとめて93日の休業を取ることも、50日と43日の2回にわけて取ることも可能です。ただし、同じ対象家族について、すでに93日の介護休業を取得している場合、その後に要介護状態が変わったとしても追加で休業を取得することは認められていません。対象となる家族は、「配偶者(事実婚含む)」「父母」「子」「配偶者の父母」「祖父母」「兄弟姉妹」「孫」です。

②介護休暇
1年に5日(対象家族が複数の場合は 10 日)まで、介護やその他の世話を行うための休暇の取得が認められています。その他の世話とは、通院の付添い、対象家族が介護サービスを受けるために必要な手続きの代行などを指します。半日単位での取得も可能です。

③所定外労働の制限(残業の免除)
労働者が請求した場合には、事業主は所定労働時間を超えて労働させてはならないと定められています。1回の請求につき1カ月以上1年以内の期間で、請求できる回数に制限はありません。

④時間外労働の制限
労働者が請求した場合には、事業主は制限時間(1カ月24時間、1年150時間)を超えて労働させてはならないと定められています。こちらも、1回の請求につき1カ月以上1年以内の期間で、請求できる回数に制限はありません。

⑤深夜業の制限
労働者が請求した場合には、事業主は深夜(午後10時〜午前5時)に労働させてはならないと定められています。1回の請求につき1カ月以上6カ月以内の期間で、請求できる回数に制限はありません。

※③~⑤については、業務の正常な運営に支障がある場合には、事業主は請求を拒否することができます。

⑥所定労働時間短縮などの措置
事業主は、介護を要する対象家族を介護している労働者に対して、対象家族1人につき次のいずれかの措置を、利用開始から3年以上の間で2回以上の利用を可能とする措置を講ずる義務を定めています。
・ 所定労働時間の短縮
・ フレックスタイム制度
・ 始業・終業時刻の繰り上げ、繰り下げ
・ 介護サービス費用の助成、その他これに準ずる制度

このほかにも、労働者の配置に関する配慮や休業の解雇など不利益な取り扱いの禁止、ハラスメントの防止といったことも明記されています。もし、「介護休業や介護休暇を申し出たのに受け入れてもらえなかった」「残業の免除を申請したら昇進はできないと言われてしまった」などのトラブルが発生した時には、各都道府県にある労働局に相談できます。労働局では、会社に対して行政指導などを行い、紛争解決の援助をしてくれます。

育児・介護休業法で定められているのは、家族の介護にあたる従業員に対し、会社が用意するべき最低限の制度や措置ですから、勤務先によっては法よりも広範囲な支援制度を利用できる場合もあります。どのような制度があるのかは会社の就業規定に明記されているはずですので、一度確認しておくといいでしょう。

制度を利用し、仕事と介護の両立を目指そう


いざ自分が介護する立場になった時、「残業するのが当たり前の職場だから」「これまでに介護休暇をとった人はいないから」などといって、退職しなくてはいけないと考えるのは早急です。これまで説明したように、働きながら家族の介護を行う人が利用できるさまざまな制度が、法律により整備されています。仕事を続けることが、自分や自分の家族を守ることにもつながります。いざという時には退職を選ぶのではなく、できる限り制度を使用して、介護と仕事を両立できる方法を探してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

北野 琴奈ファイナンシャル・プランナー(日本FP協会認定 CFP®認定者)

津田塾大学卒業後、会社員を経て独立。実践型ファイナンシャル・プランナーとして資産運用、不動産投資・賃貸経営、キャリアなどに関する講演、執筆、コンサルティング等を行う。TBS「がっちりマンデー!!」「がっちりアカデミー!!」、BS11デジタル「不動産王」、BSジャパン「日経プラス10」、日経CNBC「不動産投資AtoZ」等にコメンテーターとして出演。その他メディア出演・取材協力多数。