生前贈与を上手に利用すればスムーズな財産移動が可能?

生前贈与の方法は2種類

平成27年1月1日からの相続税増税の影響により、これまで相続税とは無縁だった人が課税対象者になるケースが増えています。実際この年の課税割合は過去最高の8%、地価の高い東京都だけで見ると12.7%にも上り、都心部に自宅を持つ多くの一般家庭にも相続税は身近な問題になってきています。

自分にも相続税がかかるのだろうか、かかるとすれば金額はどのくらいで、支払うことができるのか、そのような漠然とした不安を抱える人が増えており、個々の事情に応じた相続対策の必要性も高まってきています。
ここでは、相続税の支払いを回避できる方法の一つとして「生前贈与」をご紹介いたします。

一般的に贈与とは、金品などを贈る契約と見なされるため、税金が発生します。贈与税の支払い対象となる人は、金品を受け取った側の人(受贈者)で、贈られた金額の基礎控除額を超えた分に対してかかります。

「自分が生きているうちに希望の相手に財産を贈り、それを見届けることができる」という点は、生前贈与のメリットでもあります。

贈与によって課税される方法には、「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあります。

分かりやすく利用する機会の多い「暦年贈与」

暦年贈与の場合、受贈者1人につき毎年110万円までが基礎控除されます。たとえば父親が3人の子供に対して暦年贈与を行うのであれば、毎年最大330万円までを非課税で贈与することが可能です。

この場合、3人の子供(受贈者)は毎年1月1日から12月31日までの間に贈られた財産から110万円を差し引いた残りが課税対象となり、それぞれ申告が必要です。受贈額が110万円以下だった場合は申告する必要はありません。毎年少しずつ財産贈与をしていけば、相続税を減らすことになります。

暦年贈与をする際のポイントとして、毎年連続して贈与を行いたい場合は、その実態が明確あることが必要です。基礎控除の110万円は非課税枠ですが、毎年110万円の贈与を続けていると、受贈者が「定期贈与を受けている」と見なされ、場合によっては贈与された総額に対して贈与税を課されることもありますので、注意が必要です。

「定期贈与」とは、たとえば最初に1000万円贈与することを約束しておき、10年間で分割し100万円ずつ支払うようなケースです。この場合は、総額の1000万円を一括で贈与されたと見なされます。定期贈与と見なされないためには、贈与契約書を毎年作成することが大切です。

贈与契約書を作ることで後々のトラブルを防ぐこともできますし、税務調査が入った場合は重要な証拠資料となります。

また、毎年基礎控除枠の贈与を継続するのではなく、控除枠以上の贈与をした年は贈与税を納めるなど、その都度贈与の決定をしていく実態を作ることがポイントです。

なお、暦年贈与の場合、相続が発生する3年以内に行った分は、生前贈与にはならず、相続税の対象となるため節税効果が出ませんが、孫への贈与はこの3年ルールが適用除外となっています。

一度に多額の贈与ができる相続時精算課税

財産を贈る人と受け取る人の関係を問わない暦年課税とは異なり、相続時精算課税は一定の直系親族間の贈与に認められた特例です。

贈与者は60歳以上の親または祖父母、受贈者は贈与者の推定相続人である20歳以上の子または孫です。贈与者ごとに適用できるため、例えば父からは暦年課税、母からは相続時精算課税とすることもできます。また、贈与財産が一定の要件を満たす住宅取得資金の場合には、贈与者の年齢の制限はありません。

相続時精算課税を選択した場合、贈与時にいったん贈与税を納めます。ただし、2500万円までの贈与には税金がかからず、2500万円を超える部分に20%の贈与税が課されます。

そして贈与者(被相続人)が亡くなった際には、贈与財産を含めて相続税を計算し、この相続税と最初に支払っていた贈与税との差額を支払う、もしくは還付を受けます。相続時精算課税では贈与財産の種類や贈与回数に制限はありません。多額の資産を生前に一括して贈与したい人にとっては利用価値の高い制度と言えます。

また、将来的に値上がりする可能性の高い財産の場合、贈与時の金額が相続時に加算されるため、値上がり分の相続税は回避できることになります。資産価値の上がる財産を保有し続けると、相続税が増加してしまうため、早めに贈与しておくことで課税評価額を抑える効果があり、値上がり分の相続税を節税することが可能になるのです。

相続時精算課税の注意点としては、この制度を一度選択して生前贈与を行うと、撤回ができないことです。
そのため、生前贈与を行なった後に相続財産の時価が大幅に減少するようなケースでは、結果としてトータルの税負担が大きくなる可能性がありますから、利用には慎重な判断が必要です。

ただし、相続時精算課税制度を利用した人以外からの贈与であれば、暦年贈与とすることは可能です。