一生に幾度とない高額な買物となるマイホーム。新築物件ともなれば間違いなく数千万円以上になります。

ところで、この価格はいったいどのように決められているのでしょうか? 建物のどの部分にどのくらいの金額がかかっているのか知りたいところです。

そこで、新築戸建住宅が完成するまでにどのような工事が行われ、それらにどのくらいの費用がかかっているのかについて検証してみました。

コロナ禍で郊外の新築戸建に脚光?

国土交通省の「建築着工統計調査」によると、2021年の新設住宅着工戸数は5年ぶりに上昇し、そのうち「持ち家」の着工戸数は前年比9.4%の増加となっています。

コロナ禍の影響もあってか、住宅市場では都心の狭いマンションから郊外の広い戸建住宅へと移る傾向が顕著となっており、そういった背景から新築戸建の需要も伸びているようです。

国交省がマイホーム購入者を対象に行ったアンケートによると、新築戸建を購入した人たちの購入理由として「価格が適切だったから」「住宅の立地環境が良かったから」などの回答が挙げられています。

 

また設備に関する優先条件では「間取り・部屋数」「広さ」が断トツの回答数で、コロナ禍によるテレワークの推進で「もう一部屋」のゆとりがほしいというファミリーが増えていることがわかります。

さらに、新築戸建購入者の住み替え前と住み替え後の延床面積の変化では、住み替え前が70~80㎡台だったのに対し、住み替え後は100㎡超と大幅に広くなっています。

これはマンション購入者が「住み替え前・後とも変わらず70㎡台程度」と回答していることと大きく異なり、この結果から戸建住宅派は新居に対し「今以上の広さ」を求めていることも明確となりました。

このアンケート結果から、新築戸建購入者のプロフィールもわかります。

世帯主年齢層:30歳代が約半数を占めています。次いで40歳代、50歳代も比較的多く、マイホーム購入者層の壮年化も垣間見えます。

世帯人数:4 人が 約4割と最も多く、マンション購入者で最も多い2人(約3割)と比べると、やはり大家族ゆえに広い戸建を求めているという現況が伺えます。

世帯年収:600 万~800 万円未満が最も多く、約3割を占めます。

購入資金:購入金額の平均値は3,900万円前後で、約7割の購入者が住宅ローンを利用します。自己資金は1,000万円前後です。

住宅ローン返済額:平均返済額は年間約124万円で、月額に換算すると約10万円です。

購入金額の平均値が3,900万円前後ということは、東京都市部や神奈川県の横浜・川崎、埼玉県のさいたま・和光、千葉県の船橋・市川あたりと、まさに「東京のベッドタウン」と称される地域の相場価格です。都心から離れていても、広くてテレワークもはかどるマイホームがこれらのエリアに多数あるのでしょう。

新築建売住宅の建築費内訳

では、東京のベッドタウンに建つ販売価格3,900万円程度の新築建売住宅について、その建築費内訳を探ってみたいと思います。

建売住宅とは、ハウスメーカーの企画設計のもと完成した形で売られている新築戸建住宅のことです。販売価格には、建物のほか土地の価格も含まれています。

ここで気になるのが土地と建物の価格比率です。一般的に新築建売住宅の建物価格(建物本体の工事費用)は全体価格の7割程度といわれます。3,900万円の7割ということは27,30万円になりますが、一体どんな工事にいくらぐらいかかっているのでしょうか?

仮設工事費(建物価格の約4%):110万円

工事を開始する前の足場の組み立てや地面の敷き鉄板、工事に使用する電気配線、工事内容の表示看板、作業員用の休憩所やトイレ等をつくるための費用です。大規模現場の場合はクレーンなど重機の設置費用、作業員休憩所のイスやデスク、冷暖房設備なども含まれていることがあります。

基礎工事(建物価格の約6%):160万円

建物全体を支える基礎工事の費用です。基礎工事の種類は複数ありますが、一般的には基礎部分全体にコンクリートを流し込んで固める「ベタ基礎」か、建物の壁に沿ってコンクリートを流し込む「布基礎」、地盤が軟弱な土地に杭を打ち込んで支持層まで到達させる「杭基礎」などが採用されています。この中で布基礎はリーズナブルですが、ベタ基礎や杭基礎の費用は比較的高額になります。

木工事(建物価格の約24%):650万円

建物の躯体となる木材の組み立て、取り付けを行う工事の費用です。プロの大工が行なう作業なのですが、大工職にも種類があり、日当で働く「常用大工」、作業一式で報酬を受ける「手間請け大工」がいます。どちらの大工を何人使うかで費用総額も変わってきます。

屋根板金工事(建物価格の約4%):110万円

屋根瓦や壁の葺き付けのほか、雨どいや水切りの取付工事を行うための費用です。薄く平たく形成された金属の「板金」を使って屋根を固定したり、屋根接合部分の雨水の侵入防止工事などを行います。

タイル・左官工事(建物価格の約6%):160万円

左官工事は室内の壁や玄関・勝手口の床に漆喰やセメントなどを塗り付ける工事です。タイル工事はバスルームやキッチンなどタイル張りを行う工事です。いずれも熟練の技術が必要な作業のため工事費は高額になります。

外装工事(建物価格の約6%):160万円

外壁のサイディング張りやモルタル塗りなど屋外の装飾工事を行う費用です。

木製建具工事(建物価格の約2%):50万円

室内の木製ドアや和室の障子や襖などの取付工事を行う費用です。

金物工事(建物価格の約7%):200万円

室内のドアノブや手すりなど金物部材の取付を行う費用です。窓サッシやカーテンウオールの取付工事なども含まれます。

電気・水道工事(建物価格の約18%):500万円

室内の壁や床の内部、天井裏など室内から見えない部分に張り巡らされる電線、電話線、水道配管の設置工事を行う費用です。外部の公共電線・上下水道と連結させる大掛かりな工事となるため、比較的高額となります。

内装工事(建物価格の約9%):250万円

室内インテリア、主に壁クロス、床フローリング、畳などの設置を行う費用です。天井の塗装や間仕切り壁、建付家具の設置を行う場合もあります。

雑工事・諸経費(建物価格の約14%):380万円

他の工事費に組み込めない仕上げ・補修工事や工事端材の処分、工事完了後のクリーニングなどの費用になります。

費用毎に建物価格に占める割合を表示しましたが、これは一般的な新築戸建工事を行う際のおおよその目安です。この割合をもとに建物価格2,730万円を割り振ってみると、どんな工事にどれだけの費用がかかっているのかが見えてきます。

比較的高額なのは躯体工事が含まれる木工事と、ライフラインを整備する電気・水道工事で、これだけで1,000万円を超えてしまいます。また、最終的には撤収されてしまう仮設工事費に110万円もかかっているのも驚きです。

まとめ

近年の新設住宅着工戸数は増加傾向にあり、「持ち家」の着工率も増加傾向にあります。住宅市場においても「狭い都心より郊外の広い戸建住宅」という需要が増えており、新築住宅の需要が高まっているようです。

国交省のアンケートデータによると、新築住宅購入者(平均的プロフィール)は30歳代で4人家族、年収700万円前後、毎月10万円程度の住宅ローンを支払っています。マイホーム(新築戸建)の購入金額平均は3,900万円で、建物代金はその7割程度(2730円)になります。

建物代金の内訳は「木工事(24%)」がもっとも高く、次いで「電気・水道工事(18%)」「雑工事・諸経費(14%)」の順になっています。