コロナ禍の影響で、都心に暮らすビジネスマンはデュアルライフ(都心と地方都市間の二拠点居住)や田舎暮らしを求める傾向にあります。

とはいえ、東京(三鷹・新小岩など)と北関東(高崎)の家賃相場はほぼ同じという事実もあり、地方都市に移れば精神的・経済的に豊かになるとは必ずしも言い切れません。

都心へのダイレクトアクセスが叶い、かつ家賃相場が割安なエリアはどこにあるのか、検証してみたいと思います。

コロナ禍をきっかけに田舎暮らし

2020年初頭から現在まで続くコロナ禍、終わりの見えないウイルスの脅威によって人々の暮らしは大きく変わろうとしています。仕事や暮らしの東京一極集中は崩れはじめ、企業は地方都市へサテライトオフィスを置き、それに伴い多くのビジネスマンも住み慣れた都心を離れようとしています。「このままテレワークが続くなら、いっそのこと環境の良い田舎に引っ越すか」、そんな声があちこちから聞こえてきます。

大都市での暮らしは通勤や買物には便利なものの、いかんせん家賃が高すぎます。仕事のクラウド化が進んで毎日通勤する必要がなくなれば、ムリをしてここにいる必要はないのです。華やかだった街並みもコロナ禍の影響でシャッターが目立つようになりました。こんな都会に住み続ける意味を見出すことがむしろ難しくなってきています。

「今の家賃の半額ぐらいで借りられるエリアはどの辺かな?」と、夜な夜な賃貸不動産のポータルサイトを覗いている人も多いのではないでしょうか。しかしインターネットの情報は膨大で、ある程度エリアの絞り込みをしないとあちこち目移りしてしまいます。

たとえば勤務先が丸の内にあるならば、東京駅へ乗り換えなしでダイレクトにアクセスできるJR中央線や東海道線、総武快速線の沿線エリアに絞り込むことをおすすめします。とくにJR線は遠い地方都市までつながっている路線が多いので、距離だけで見るとはるか遠く思えるものも、一度乗り込んでしまえば乗り換えなしですから、勤務先の最寄り駅まで快適に到達することができます。

そこで、コロナ禍をきっかけに田舎暮らしを考えている人たちの一助になるべく、不動産流通機構が運営する不動産業者専用サイト「REINS(レインズ)」で入居者募集されているファミリー向け賃貸マンション(60㎡台・築20年未満)を対象に、都心駅直結のJR各線・主要駅ごとの家賃相場(管理費・共益費等を含む月額家賃)を比較してみました。

都心直結の家賃割安駅はどこ?

JR中央線沿線駅の家賃相場

新宿:36.8万円
吉祥寺:20.0万円
三鷹:15.8万円
立川:19.8万円
豊田:9.8万円
高尾:10.3万円
甲府:6.9万円
竜王:8.0万円
茅野:7.0万円

新宿はタワーマンションも多く30万円という高水準になります。阿佐ヶ谷~吉祥寺までは20万円台が相場ですが、三鷹まで来ると10万円台まで落ちてきます。しかし立川で若干上昇、豊田~八王子で一気に10万円未満まで下がります。その先の高尾は住宅街として成熟しているためやや上昇、山梨県に入って甲府までは下がっていきますが、竜王から再び微上昇します。

【JR中央線沿線の家賃注目駅】甲府駅

甲府駅から新宿駅へは特急(あずさ号)利用で1時間36分(運賃2,310円(うち特急料金1,580円))でアクセスできます。中央線の他、静岡県の富士駅へと伸びる身延線も乗り入れています。主な観光資源は甲府城跡、武田神社などです。

JR総武快速線沿線駅の家賃相場

錦糸町:24.2万円
新小岩:15.1万円
市川:16.4万円
津田沼:12.2万円
稲毛:17.0万円
千葉:13.6万円
四街道:7.8万円
八街:6.3万円

錦糸町で20万円台、さらに新小岩では10万円台まで下がる総武快速線沿線なら、わざわざ都県境を越えなくてもお得で快適な生活が出来そうです。千葉県に入り市川で微上昇、津田沼で大幅下落、稲毛で大幅上昇と乱高下が続きますが、四街道からは安定の下降傾向になります。

【JR総武快速線沿線の家賃注目駅】八街駅

八街駅から東京駅へは特急(しおさい号)利用で58分(運賃2,116円(うち特急料金950円))でアクセスできます。主な観光資源は落花生やイチゴなどの農産物です。

JR常磐線沿線駅の家賃相場

日暮里:20.4万円
北千住:17.4万円
松戸:13.0万円
柏:11.8万円
我孫子:9.2万円
取手:5.9万円
土浦:6.9万円
水戸:7.6万円
勝田:8.6万円

総武快速線同様、常磐線も比較的家賃相場が低めの駅が並ぶ路線です。沿線属性としては下町情緒があり物価も比較的安いため、毎月の出費を抑えたいファミリーには人気があります。松戸以降は緩やかに下落していき取手で底を打ちますが、土浦以降はまた微上昇となり、勝田で東京都市部並みの8万円台後半まで戻します。

【JR常磐線沿線の家賃注目駅】取手駅

取手駅から上野駅へは普通電車で38分(運賃649円)でアクセスできます。駅の近くには東京芸術大学取手キャンパスもあります。主な観光資源は利根川沿いの常総ふれあい道路、利根パークゴルフ場、取手競輪場などです。

JR東海道線沿線駅の家賃相場

新橋:34.0万円
川崎:17.7万円
横浜:21.5万円
戸塚:11.6万円
大船:9.8万円
茅ヶ崎:10.5万円
平塚:11.0万円
小田原:7.5万円

新橋・品川は言わずもがな30万円台の高額相場です。川崎で一気に10万円台後半まで落ちますが、東京とはまた異なる都市文化圏として評価される横浜で20万円台に乗せます。そして戸塚から10万円台前半に安定、その後緩やかに下落しますが、再び海辺の文化圏である茅ヶ崎・平塚で10万円台に戻します。

【JR東海道線沿線の家賃注目駅】小田原駅

小田原駅から東京駅へは新幹線(こだま号)利用で34分(運賃3,280円(うち新幹線自由席料金1,760円))でアクセスできます。主な観光資源は小田原城址、御幸の浜海水浴場、かまぼこなどです。

JR高崎線・宇都宮線沿線駅の家賃相場

上野:24.3万円
赤羽:14.2万円
さいたま新都心:18.6万円
宮原:8.0万円
上尾:12.1万円
熊谷:10.3万円
籠原:6.2万円
高崎:15.8万円

以下、宇都宮線(高崎線と大宮から分岐)
東大宮:9.9万円
古河:7.1万円
宇都宮:10.8万円

意外なのは、上野と赤羽の家賃相場が10万円以上違っていることです。近年は漫画の舞台や個性的な飲み屋街が話題になるなど人気が鰻登りの赤羽ですが、家賃の割安さは未だキープされています。

そして東海道線の横浜同様、埼玉県きっての都市文化圏である大宮・さいたま新都心では相場の大幅上昇が見られます。一方、大宮の近接駅である宮原(高崎線)・東大宮(宇都宮線)は一気に8~9万円台まで下落、高崎線では上尾で10万円台に戻しますが、それ以降は緩やかに下降します。

【JR高崎線・宇都宮線沿線の家賃注目駅】籠原駅

籠原駅から上野駅へは普通電車利用で1時間16分(運賃1,166円)でアクセスできます。主な観光資源はいちご、トマトなどの農産物です。

地方中核都市の家賃は都心と変わらない

ここまで都心駅と地方駅を結ぶJR5路線駅の家賃相場について紹介してきました。これらのデータからわかるように、都心から離れていくほど段階的に家賃が下がっていくわけではなく、その途中に魅力的な街があれば、家賃相場はピンポイントで上昇するケースがあるということです。

たとえば高崎線の高崎駅(家賃相場15.8万円)が東京都の三鷹駅(15.8万円)や新小岩駅(15.1万円)と同じ15万円台であるという事実を鑑みれば、地方都市だからといって安易に転居を考えるのは危険です。「都心から離れていれば家賃は安くなる」とは必ずしも言い切れないので、その点で田舎暮らしの拠点選びには慎重さが必要です。

まとめ

コロナ禍の影響で、多くのビジネスマンが地方都市での暮らしに目を向け始めています。そこで、都心駅直結のJR路線の家賃相場を見てみると、地方都市だからと言って必ずしも家賃が下がるわけではなく、独特の魅力があるエリア、地方中核都市では家賃が上昇傾向にあるという事実もあります。