仕事中に何度もかかってくる電話、説明が回りくどくわかりづらい報告書…。そんな管理会社とのアナログなやり取りから逃れたいと考えている不動産オーナーは多いのではないでしょうか。

これらの悩みは、賃貸管理を司る「不動産オーナー向けアプリ」を導入すれば劇的に解消することができます。

今回は、入居・退去・募集活動から収支計画・出口戦略までをスマートフォン1台で完結できる不動産オーナー向けアプリの特性について、サービス事例をもとに紹介します。

管理会社に任せたものの…

投資用物件を購入して賃貸経営をはじめる場合、建物や入居者の管理を不動産管理会社に任せるか自主管理にするかは、物件のオーナーが自由に決めることができます。

会社勤めをしながら不動産投資を行ういわゆる「サラリーマン大家」ならば、迷うことなく賃貸管理専門の不動産管理会社に任せた方が賢明でしょう。

そうすれば、設備不具合が起きた際の修繕対応はもちろん、家賃滞納時の督促、退去後の立ち会い、その後の入居者募集、契約まですべて任せられるので、オーナーは日々自分の仕事に集中することができます。

ところが、見込み違いの不動産管理会社に依頼してしまうと、月次管理報告は届かない、入居者の家賃延滞を理由に送金をしてこない、重大な設備故障の連絡もなく勝手に修理して高額請求してくるような問題も起こります。

それとは逆に、誠実すぎて対応が丁寧な故に、オーナーや入居者への報告が遠慮深くわかりにくいといったケースもあります。

そのような管理会社に当たってしまうと、オーナーは不動産投資をはじめたこと自体に後悔を感じてしまうかもしれません。しかしこれは不動産投資の失敗ではなく、自分のビジネススタイルに相応しくないパートナーを選んでしまっただけで、方向性を改めればすぐに解決できることです。

もっとも理想的なのは自主管理ですが、サラリーマン大家ではそれもなかなか難しいことです。ただ、現代はネットワーク社会です。スマートフォン1台あれば何でもできる時代です。不動産管理分野においても、悩めるオーナーをサポートする便利な「不動産オーナー向けアプリ」が多数開発されています。

「不動産オーナー向けアプリ」とは?

さて、不動産オーナー向けアプリとは一体どんなものなのでしょう。まず、必要なツールはスマートフォンです。そこに専用アプリをダウンロードします。

そしてアプリを起動させるとさまざまな機能のタグが現れます。タグをクリックすれば、所有物件や入居者のデータ、家賃の収支明細などがわかりやすく表示されます。これらの情報は、仕事場でも自宅でも通勤中の電車内でも、いつでも閲覧することができます。

以下は、現在リリースされている不動産オーナー向けアプリのサービス事例です。

<オーナー向けアプリA>

・入居者情報管理
空室時の入居者募集、室内設備の修繕・契約更新・退去時のサポート、家賃滞納時の督促に対応。「報告」や「承諾」などの連絡事項はカード形式で送信され、オーナーはワンクリックで返答可能。

・物件情報管理
所有物件の築年月や構造のデータ、入居者の契約情報、借入中のローン情報をアプリで一元管理。賃貸借契約書や室内設備の修繕・リフォーム実施時の写真情報などをファイル別に分類してアプリで共有。

・レポート関連
毎月の収支明細をワンクリックで共有可能。物件のポートフォリオや過去の収支情報もグラフ等で分かりやすく表示。確定申告時に利用できる収支報告書をスマホアプリやPC上で閲覧、ダウンロード可能。

<オーナー向けアプリB>

・入居者情報管理
退去受付・原状回復工事・入居者募集に関する確認事項をアプリでプッシュ通知することでタイムロスを極限まで短縮。入居者募集広告はアプリ提供会社のホームページや他社サイトに掲載。

・物件情報管理
所有物件タグからいつでも物件情報を閲覧可能。複数の物件状況を一覧で確認可能。賃貸稼働率や、空室(入居者募集中)への問い合わせアクセス数の確認も可能。

・レポート関連
周辺の家賃相場や犯罪発生率、人口密度などの地域情報を提供。各種データの活用によってより高精度な賃貸経営をサポート。

<オーナー向けアプリC>

・入居者管理
月々の賃料や送金明細、入退去についての最新情報をアプリで通知。契約書類をいつでもどこにいても確認可能。

・物件情報管理
所有物件の基本情報や契約情報のほか、購入時の売買契約書類などをすべてデジタルデータ化してアプリで閲覧可能。外出先で急に確認が必要になったときや、アナログデータをしまい忘れてしまったときも安心。

・レポート関連
月毎の入出金情報をアプリで集計。税金など月・年毎の定期的な支払いを管理することでいつでもキャッシュフローが把握可能。確定申告時には、行政・金融機関から届く各種書類に沿って経費登録。各種リスクや繰上げ返済を所有物件毎に設定し、今後発生する収支や、返済計画をシミュレーション。ライフプランに合わせた資金計画をサポート。

実は「管理会社サポートアプリ」

不動産オーナー向けアプリを利用することで、入居者や管理会社から不意にかかってくる電話や、回りくどく趣旨がわかりにくい長文メールに対応するストレスから解放されます。

アプリから通知される情報は「退去連絡」など必要最小限に絞られ、その他の急を要さない情報はオーナーの生活スタイルに合わせていつでも確認できるようになります。

これらのアプリは、オーナーと入居者を直接結ぶというより、その間に管理会社を介在させる形式がほとんどのようです。「オーナー向け」と名乗っておきながら、実は管理会社の業務サポート的な要素が濃いのです。

前述の「月次管理報告がない」「設備故障の連絡もなく勝手に修理」といったトラブルも、元を正せば管理会社の多忙さに所以するもの。アプリ導入によって連絡手段が簡素化されれば、そういったミスは解消されます。

また「誠実すぎて対応が丁寧すぎる」管理会社も、アプリ上の定型文を利用することにより、分かりやすく明確な報告ができるようになります。

オーナー側のメリットは「情報活用」

これらのアプリを利用することで得られるメリットはオーナー側にもあります。重要なのは収支明細です。アプリ内のデータは毎年の確定申告に活用できるほか、過去データの推移をグラフ化することも可能です。

物件購入当時に計画していた利回りは維持できているか、修繕費用がかかりすぎていないか、ローン返済額と家賃収入が逆転(赤字)していないかを時系列で確認することで、将来的な資産運用計画を立て直すことができます。

さらに付随機能として、所有物件周辺の家賃相場情報やAI査定サービスを提供するサービスもあります。家賃の値上げ・値下げが必要なタイミングの把握、または収支に見合わなくなった所有物件の売却にもアプリデータは十二分に生かせます。

まとめ

賃貸物件の管理を不動産管理会社に任せたものの、思うように連絡が取れなかったり、逆に連絡が多すぎて煩わしいという悩みを抱えるオーナーはたくさんいます。

不動産管理会社の担当者は十人十色です。相性の悪いパートナーに当たってしまった場合の消化不良は、不動産オーナー向け(管理会社サポート)アプリが解消してくれます。同アプリは複数社からリリースされていますが、その選択は管理会社主導で行われているケースが多いようです。

オーナーだけでなく、入居者とも連動させて、3者間で情報共有できるアプリもあります。これら時代に即したツールを活用して、ストレスやタイムロスのない快適な不動産投資を実践したいものです。