いま住んでいるマンションのゴミ集積場はキレイに管理されていますか?

分別ルールが守られていない、あるいは悪臭がする、害虫がチョロチョロしている…など、管理会社に「一言モノ申したい!」と思うこともあると思います。そんなゴミ関連のトラブルに対して、SDGsの観点から取り組んでいる管理組合や管理会社があります。

今回はそういった取り組みの一例について紹介します。

一筋縄では解決できない

マンションやアパートの共用部に、24時間いつでもゴミ出しができるゴミ集積場があるととても便利です。しかし便利な反面、改善すべきさまざまな課題があることも事実です。

その筆頭に挙げられるものといえば「分別ルール違反」です。

とくに他地域からの転入者や、初めて一人暮らしを始める学生入居者などがやってしまうありがちなミスです。悪気はないのかも知れません。ただ、ゴミ分別のルールブックを読み飛ばしているだけなのでしょう。これは人為的な問題なので、管理会社からのアナウンスや周囲からのアドバイスによって、月日が経てば概ね解消されるものです。

問題は人為的な要因ではなく、慢性的に自然発生しているトラブルです。

例えばゴミ集積場から発生する悪臭やゴキブリ・ハエといった害虫類の繁殖などです。そこにゴミがある限り、これらのトラブルが収まることはありません。建物内にある住戸のうち、ゴミ集積場に比較的近い位置(上階など)にある住戸であれば、ゴミ集積場と同様の被害が及ぶ心配もあります。

賃貸住宅なら転居すれば済むことですが、「終の棲家」と考えて購入した住まいとなれば、今後のライフプランをも揺るがす重大問題です。

度が過ぎると訴訟に発展することも

悪臭・害虫被害といったゴミ問題のほとんどは、1990年代以前に建てられた古い共同住宅で起こっています。

2000年代以降の新築マンションは「ディスポーザー」を標準装備した物件が多いため、各住戸から出る生ゴミの量が劇的に減っているのです。加えて、設計技術の進歩で建物自体の気密性も高くなっていますので、ゴミ集積場から住戸部分へ悪臭・害虫が漏れ出てくる被害も少なくなりました。

しかし、ディスポーザーも万全ではないようで、ある分譲マンションの最上階に住む住民は、屋上にあるディスポーザー臭突管から漂う悪臭に日々悩まされているそうです。

改めて、共同住宅におけるディスポーザーのゴミ処理システムについて説明します。

各住戸のディスポーザーで粉砕された野菜くずなどの生ゴミは、居住フロアから離れた地下フロア等に設置された大型専用処理槽に集められ、機械処理(機械的に固体と液体を分離する処理方法)または生物処理(微生物の自然分解力を利用した処理方法)によって液体状にして公共下水管へと流します。

これらの処理過程で臭気が発生するので、共同住宅の屋上にはディスポーザー処理槽直結の臭突管(煙突の「臭い」版)が取り付けられます。ここから出る悪臭が、最上階の住民を悩ませているのです。被害を受けた住民のうち数人は、マンション販売会社を相手取り、購入代金の返還と慰謝料請求の訴えを起こしています。どんなに技術が進歩しても、共同住宅におけるゴミ問題には終わりがないようです。

永遠なるゴミ問題はSDGsで解決する?

このところ巷で話題となっている「SDGs(持続的な開発目標)」というキーワードがあります。共同住宅の管理組合や管理会社もその思想に則って、環境に優しいゴミ問題の解決策を模索しているようです。

共同コンポストを採り入れる

ゴミの排出を減らす方法の一つに「コンポスト(生ゴミの堆肥化)」があります。

本来は生ゴミとして捨てていた野菜くずや食べ残しをコンポスターで乾燥・発酵させて、出来上がった堆肥をガーデニングなどに再利用するというものです。これを共同住宅一体となって行い、各住戸から出るゴミを少なくするというアイディアを実践したマンション管理組合があります。

そのマンションは典型的な郊外型で、駐車場のほかに敷地も広大です。

管理組合はこの敷地の一角にワンルームマンション一室大のコンポスターを設置し、日中の決められた時間帯に各住民が生ゴミを投入していくというルールにしました。コンポスターに投入された生ゴミの総量は1カ月平均で約900㎏、そこから得られた堆肥は約90㎏で、コンポスト作業を続けることでマンション内の生ゴミを1/10まで圧縮できることが分かりました。

しかし、これを継続するにも障壁があります。コンポスター内の清掃や堆肥の取り出しといった日々の管理作業は数人の住民ボランティアが交代で行っていますが、時期によっては作業中の発酵臭や腐敗臭がきつかったり、真夏の密室作業が過酷極まりないため、ボランティアがなかなか定着してくれないことが目下の悩みだということです。

益草や益虫の力を借りてみる

前述の通り、築年の古い共同住宅であればあるほど、建物の隙間から害虫が侵入してくるリスクは高いといえます。加えて敷地内に豊かな緑があると、植栽の奥深くが害虫の温床になってしまう可能性もあります。昭和築の大規模マンションはそれらの悪条件が揃っているところばかりです。

とはいえ、建物は古くても交通・商業利便性が高く暮らしやすいマンションはたくさんあります。そんな好立地に建つ、ある築古マンションの管理会社が始めた試みを紹介します。

そのマンションは最寄り駅から徒歩3分の都心一等地にあります。大家一族が代々自邸を構えていた跡地で、敷地内には邸宅時代の坪庭や花壇が残されており、建物1階部分には駐車場とゴミ集積場が配されています。

エントランス横にある広さ1坪程の花壇には、防虫対策として「アロマティカス」や「カレンソウ」「ニーム」といったハーブがふんだんに植えてあります。管理会社の若いスタッフによると、カレンソウは蚊除けのために開発された植物で、ニームはインド原産のどんな害虫も寄せ付けないハーブ、そしてアロマティカスはゴキブリが嫌う植物として今ブームになっているといいます。

また、ゴミ集積場入口には張り紙があり、そこには「アシダカグモ飼育中」と書いてあります。これを虫嫌いの住民が見たら卒倒しそうですが、このアシダカグモはゴキブリを捕食する、ゴキブリ最大の天敵だというのです。身体は10~15㎝と大きく、見た目は毛がないタランチュラのようで不気味なのですが、性格はおとなしく臆病で、ほかのクモのように糸を張って巣を作らず、常に動き回り、人の気配がしたら物陰に隠れてしまいます。

もしゴミ捨てのときに出会えたらむしろ「ラッキー」と思って良いかも知れません。このように殺虫剤や化学薬品を使わず、自然の植物によって害虫予防ができるのは理想的なことです。虫嫌いの住民がどこまでクモの存在を許容できるかが気にはなりますが、いまのところクレームの声は上がっていないそうです。

まとめ

家庭から出る生ゴミの4~5割は食べ残しや、冷蔵庫の奥にしまい忘れたまま消費期限が過ぎてしまった手つかずの食材だといわれます。先日の東京オリンピックでも約4,000食分の弁当が廃棄されたことが取り沙汰されたばかりです。

管理組合や管理会社の積極的な取り組みも大切ですが、住民1人ひとりがこういった食品ロスをなくす努力をすれば、コンポストなどに頼らなくてもかなりの家庭ゴミを減らすことができ、それに伴い悪臭や害虫も減少していくかも知れません。