昨今のキャンプブームで、郊外の山林を購入する人が増えています。何もないことを楽しむのがキャンプなのですが、トイレやシャワーがあればもっと快適に過ごせるはずです。そんな願いを低コストで叶えてくれるのが「トレーラーハウス」です。どこにでも配置が可能で、建築確認の必要がなく、加えて固定資産税がかからないという三拍子揃ったトレーラーハウスの人気は急上昇しています。

そこで、トレーラーハウスや土地購入のための基礎知識と、投資物件としてのトレーラーハウスの運用可能性について説明します。

「山を買う」ブームが始まった

このところ、「芸能人が山を買った」というような話題があちこちから聞こえてきます。それに触発されてか、ネット上には「#ソロキャンプ」や「#キャンプ飯」といったワードが飛び交い、コロナ禍も相まって、多くの人たちの興味が「アウトドア」に向かっていることが分かります。

自宅マンションのバルコニーで密かに楽しむ「おうちキャンプ」に留まらず、週末は富士裾野や軽井沢へと出かけるファミリーが増え、各地のオートキャンプ場は大盛況です。そこで勃発するのがキャンプ場での「密」問題。

街と同じような人いきれでは、アウトドアならではの解放感を味わうことができません。他人を気にせず自然を楽しむためには、やはり自分専用の「山を買う」しかないようです。

日本の森林面積の約3割は国有林ですが、それ以外は民間所有不動産のため売買取引が可能です。山林売買を専門とする不動産会社は数社あり、いまは各社とも問い合わせが殺到しているようです。山林の販売価格は破格の安さ(1坪100円等)で、物件によっては固定資産税を払いたくないばかりに「タダでもいいから譲りたい」という所有者もいるほどです。

このように、山林は「欲しい」と思えば誰でも簡単に取得することができます。

「トレーラーハウス」を置いてみる

山林を手に入れたからといって、すぐにキャンプはできません。オートキャンプ場では当たり前だったトイレやシャワーブース、炊事場などが整備されていない自然林を買ってしまったら、必要な設備を一つひとつ作っていくしかありません。しかし山林は「市街化調整区域」という法的に土地利用が制限されたエリアのため、原則として建物が建てられません。

そこで役に立つのが「トレーラーハウス」です。トレーラーハウスはシステムキッチンやトイレ、ユニットバスを内蔵できる「動く住宅」です。「車両」扱いのため市街化調整区域でも置くことができ、建物ではないので建築確認申請の必要がなく、固定資産税もかかりません。

トレーラーハウスは、アメリカの西部開拓時代(1800年代)に生まれた幌馬車をルーツとする牽引式の車両です。自走する車両に繋げばどこへでも自由に運べるので、災害時の仮設住宅としても利用されています。「コンテナハウス」や「キャンピングカー」と同類と思われていますが、コンテナハウスにはタイヤが付いておらず、キャンピングカーは自走する車両なのでいずれもまったく別物です。

トレーラーハウスの概要

トレーラーハウスはサイズによって法的取り扱いが異なります。

車長12m・車幅2.5m・車高3.8m未満のものは車検を通す必要があり、そして毎年「自動車税」がかかります。それ以上のサイズは運輸局で基準緩和認定を受け、さらに道路局で特殊車両通行許可を取得する必要があり、自動車税がかからない代わりに「償却資産税」がかかります。

車検が必要な小型サイズでは室内面積13㎡~27㎡(約4坪~8坪)、基準緩和・特殊車両通行許可が必要な大型サイズでは15㎡~52㎡(約4.5坪~16坪)の既成商品があります。本体価格は200万円台~900万円台で、外部には断熱材入りのコンクリート壁や玄関扉、シャーシ、そして着脱可能なウッドデッキが付きます。

室内設備は床材(フローリング等)のほかに間仕切り壁や窓サッシ、照明(ダウンライト等)、トイレ、洗面台、システムキッチン、ユニットバスなどです。本体価格以外に、土地造成費や車両運搬費(50万円程度)、設置工賃(40万円程度)、上下水道・電気・ガスといったライフラインの整備費用などがかかります。

プライベート・キャンプサイト実現までに注意すべきこと

それでは、自分だけのキャンプサイトの準備を始めましょう。と、その前に、山林取得からトレーラーハウス配置までに注意すべき事柄について説明します。

・境界線確認が難しい

山林は中高木や下草が鬱蒼と茂っており、古くからの所有者でも土地の範囲が把握できていないことがほとんどです。当然「境界杭」などの目印も設置されておらず、引渡しまでに境界線確認が行われない場合もあります。

・更地は土壌汚染に注意

以前に人の手が入った(開発された)形跡がある、例えば更地に整備されているような土地などは、過去にどんな使い方がされていたかを確認しましょう。もし産業廃棄物集積場や金属加工場などの跡地だった場合は、土壌が汚染されている可能性があります。

・「保安林」に指定されていないか

購入した土地(山林)が「保安林」に指定されている場合は、樹木伐採や土地形質変更の際に行政への届出が必要になります。保安林に指定されているか否かは、売主や取引を仲介する不動産業者に確認すれば分かります。

・不動産会社の仲介手数料に注意

山林の売買取引は宅建業法外なので、仲介手数料の上限が決められていません。そのため、「事務手数料」などと称して不動産業者の言い値で請求される場合もありますので、契約前に手数料額の確認が必要です。

・ライフラインは着脱可能にしておく

トレーラーハウス内には水道・電気を引き込むことができますが、車両として可動することが条件なので、配管・配線をいつでも取り外し可能な状態にしておく必要があります。また、ガスはプロパンを使用することになります。

・公道へ出入りできる状態にしておく

トレーラーハウスが公道へ出入りできる状態になっていないと、「土地に固定された家屋」とみなされ固定資産税が課されてしまうため、公道へ続く私道や通路を常に確保しておく必要があります。

賃貸物件として活用もできる

高原のリゾートホテルでは、グランピング(=手ぶらでキャンプが楽しめる)の宿泊施設としてトレーラーハウスを利用しているところも増えています。「自然をより身近に感じたい」という顧客から好評で、一般客室より1~2割程度宿泊料金をアップしても予約が絶えない状態です。

もし安価で大きな面積の山林が手に入ったら、まずは自分用のトレーラーハウスからスタートし、ライフラインを整備しながら次第に台数を増やして最終的にはレンタル・グランピング施設の経営を行うことも夢ではありません。

まとめ

コロナ禍の影響もあり、多くの人たちの興味がアウトドアに向かっています。他人を気にせずアウトドア・キャンプを楽しむため、土地(山林)を買う人も増えているようです。そこで活躍するのがトレーラーハウスです。建物ではなく車両扱いにできるため、市街化調整区域でも置くことができ、建築確認申請が不要で、固定資産税がかからない点が魅力です。

小型・大型のサイズ別に法的取り扱いが異なり、小型は車検が必要で自動車税がかかり、大型は基準緩和認定・特殊車両通行許可が必要で償却資産税がかかります。

山林購入時には、境界線確認の可否、土壌汚染の可能性、保安林指定の有無などについて確認しておく必要があります。またトレーラーハウスの配置では、ライフラインを着脱可能にしておくこと、常に公道へ出入りできるように通路を確保しておくことにも留意しましょう。