不動産投資家たるもの、いまある物件に固執せず、常に新たな収益を求める展望がなくてはいけません。

では、どのタイミングで売却すれば最大利益が得られるのでしょうか。今回は、確実に売却益を得る方法と考え方について解説します。

不動産投資の旨味は「キャピタルゲイン」

株式・不動産などさまざまな投資によって得られる収益は、「インカムゲイン(所有している間、連続して得られる利益)」と「キャピタルゲイン(売却によって得られる利益)」の2種類に分類されます。不動産投資でいえば、インカムゲインは家賃収入であり、キャピタルゲインは購入時の価格より高く売れた場合の差益にあたります。

株式投資の場合は相場変動が激しいため、どのタイミングで売れば利益が出るか予測が難しいところですが、不動産投資の場合は相場変動が緩やかなため、5年後、10年後といった長いスパンで売却計画を立てることができます。そして、不動産投資で確実にキャピタルゲインを得るためには、物件購入時からの周到な準備が必要なのです。

キャピタルゲインを狙うなら、購入時の物件選びが重要

不動産投資で確実にキャピタルゲインを得たいなら、物件の購入前から作戦を練り始めなければいけません。これがいわゆる「出口戦略」というものです。購入時が「入口」で、売却時が「出口」という解釈です。そこで、まずは入口の段階でどのような物件を選んで購入すれば良いのか、以下にそのポイントを説明します。

周辺相場より価格が安い

価格が安いといっても、事故物件や瑕疵物件など「訳アリ」物件ではいけません。ローン返済が困難になったとか、早急に事業資金を捻出したいなど、売主の経済的なひっ迫を理由に売り出される物件は周辺相場より比較的低価格です。このような「掘り出し」物件を探し出しましょう。とくにこのコロナ禍においては、そういった案件が多数出ています。

周辺相場より高い家賃が取れている

周辺相場と照らし合わせて適正な家賃設定がされているか、またはそれ以上の高い家賃が取れているかも重要な判断ポイントです。高い家賃を継続して支払える入居者は安定収入で属性が良いはずですから一石二鳥です。

しかし、家賃が安い物件でも「絶対に買ってはいけない」というわけではありません。販売価格が安い、築年が浅いなど二次的なメリットがあれば購入候補としてキープしておきましょう。そういった物件でも、購入後にリフォームや設備刷新など手を加えれば家賃を上げていける可能性があります。

外観・内装とも建物管理が行き届いている

価格の安さも理由の一つですが、投資用不動産の場合、新築物件よりも中古物件の方が相対的に見て収益が上がる傾向にあります。実際、昭和築の古いマンションでも築10年前後のマンションと同レベルの家賃収入を得ているケースが多々あります。

しかし、このような年季の入った物件が高い評価を得るためには「価格が安い」というだけでは足りません。その背景には、築浅物件に引けを取らない念入りなメンテナンスや設備のリカバリーの積み重ねがあるのです。不動産投資家には、そういった積年の努力が感じられる優良物件を見抜く眼力も必要です。

交通・商業利便性がちょっとだけ良い立地

言わずもがな、駅に近い場所は交通利便性だけでなく、スーパーマーケットやコンビニなどの商業施設にも恵まれているものです。そして、そういった土地には新しいマンションはあまり建っていません。駅改札前に鎮座しているのは大抵、駅開業と同時期に建てられたいわゆる「ヴィンテージマンション」です。そしてこのヴィンテージは築40年以上経ってもなかなか値崩れしません。

このように、立地の優位性は築年に左右されないのです。とはいっても、それに胡坐をかいてホーンテッドマンションのようになっている物件も…。狙い目は、駅前からほんの少し(徒歩5分程)離れた場所にある、築20年前後の建物管理が行き届いた物件です。

購入から売却までのシミュレーション

まず、購入時には所有権移転登記の費用や不動産取得税などの諸経費がかかり、その目安は物件価格の7%前後といわれます。まずは、築20年の中古マンションを購入した場合を想定してシミュレーションしてみましょう。

<新規購入>
・物件状況:月額家賃7万円で賃貸中(利回り5.6%)
・収支状況:1,500万円で購入

<購入3年目>
・物件状況:賃借人が退去
・収支状況:ここまでの累計家賃収入は252万円。賃借人退去に伴い水回りを含めた全面リフォーム(費用200万円)を実施。家賃収入からリフォーム費用を差し引いた利益は52万円。

<購入5年目>
・物件状況:月額家賃9万円で賃貸中
・収支状況:ここまでの累計家賃収入は268万円。オーナーチェンジ物件として1,800万円(利回り6.0%)で売却。購入時価格から差し引いた売却益は300万円。累計家賃収入と合算して総額568万円の黒字。

<キャピタルゲイン>
5年間の総利益568万円から購入時の諸経費105万円(1500万円×7%)を差し引いた463万円が売却純利益=キャピタルゲインとなる。

売却時の築年数は25年ですから、投資物件としてはバリバリ現役です。一般的に大規模修繕工事は10年毎に実施されるので、この物件の場合は3回目(築30年)の前に売却している点がポイントです。多くの人が修繕実施直前(築9年・19年・29年目頃)で売り出しますが、そうすると修繕積立一時金の負担などを値引き交渉の材料に使われかねません。中古マンションの場合は築15年・25年前後の平時に売るのがベストです。

売却時の諸経費にも注意

購入時と同じように、売却時にも諸費用がかかります。諸費用の中でもっとも高額になるのは「譲渡所得税」です。以下は、前述のシミュレーションを元に計算した譲渡所得税(目安)です。

・譲渡所得税課税額:売却額-(購入価格+購入時諸費用(購入時+売却時))
1,800万円-(1,500万円+(105万円+90万円)=105万円
※購入時諸経費は購入価格の7%、売却時諸経費は売却価格の5%で計算

・譲渡所得税:譲渡所得税課税額×税率
105万円×20.315%(所有期間5年以上の場合)=21万円

計算の結果、売却後におおよそ21万円の譲渡所得税が徴収されることが分かります。譲渡所得税の税率は、物件の所有期間が5年を超える場合と、5年以下の場合で税率が異なります。また所有期間が10年を超える場合は軽減税率が適用されます。なお、マイホームなどの実需不動産(居住用不動産)が対象となる「3,000万円特別控除」「10年超所有軽減率の特例」「特定居住用財産の買替え特例」は、投資用不動産には適用されません。

売却時、確実にキャピタルゲインを得るには

購入後、家賃を上げる努力をする

築年の古い物件を購入した場合でも、リフォームを施したり、入居者に人気のある設備を積極的に採り入れれば、物件の魅力が高まり家賃をアップすることも可能です。リフォームなどの費用は確定申告の際に経費計上できるので節税につながります。

5年単位で売却を考える

エアコンや給湯器といった室内設備の寿命、またマンションの大規模修繕工事のサイクルは、おおよそ10年毎に巡ってきます。そういった節目の時期を避け、前回の設備交換や修繕工事実施から5年後程度のタイミングで売却すれば、買主の懸念事項が減るためスムーズに売却できます。

まとめ

1990年代のバブル崩壊時や2008年のリーマンショック時には不動産価格が大幅に下落しました。こういった不況のタイミングを先読みして不動産を購入すれば、売却時に利益を挙げられる可能性が高くなります。昨今ではコロナ禍、さらには東京オリンピック・パラリンピック後に景気の停滞が起こるかもしれませんので、そこが買い時になる可能性があります。

不動産投資は株式投資などに比べて相場変動が緩やかなため、長いスパンで売却計画を立てられるというメリットがあります。本編でも触れた通り、室内設備交換や大規模修繕工事の時期を避けた5年単位で考えると、キャピタルゲインを得られる可能性が高まります。長期的な視点で出口戦略を描いてみましょう。