多くの分譲マンションには、各住戸の所有者で結成する「管理組合」が存在します。

建物全体の維持・管理を行うため真面目に活動している管理組合がある反面、理事が管理費を横領するなどの不祥事も多発しています。

「うちのマンションの管理組合はちゃんと機能しているの?」「管理組合って本当に必要なの?」という疑問を持つ人のために、管理組合本来の役割について説明します。

管理組合理事長が管理費・修繕積立金を・・・

2015年、新聞各紙やTVの報道番組を賑わせたマンション管理組合の不祥事がありました。

舞台は新潟の山間部にある大規模リゾートマンション。管理組合前理事長で公認会計士の男が、同マンションの管理費・修繕積立金など総額11億円余りを横領したのです。この男は理事長就任後の16年間、管理費などを自らの銀行口座に数回にわたり送金し、その金を元手に株式投資を行っていました。

このマンションは築30年を越え、建替えについて話し合うべき時期に入っていましたが、建替えどころか必要な修繕もままならない状況に陥ってしまったのです。

こういった管理組合の不祥事は頻繁に起きており、理事や会計担当といった管理組合幹部による事件のみならず、管理組合から業務を受託したマンション管理会社の担当者(フロントマン等)による着服も少なからずあります。

さらには管理会社が理事などの幹部たちに対して飲食接待や金銭などの賄賂を渡し、自らの業務に融通を利かせようとする悪事もあります。こんな不正だらけの管理組合に存在価値はあるのでしょうか。いっそ解散して、各所有者が自主的に建物を維持・管理した方が良いのではないかという声も上がってきます。

管理組合は何をしている組織?

そもそも管理組合とはどういった存在で、どんな働きをすべき組織なのでしょうか。

管理組合は建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)に基づいて結成されるもので、マンションの区分所有者全員が組合員となります。管理組合の活動目的はマンション共用部分の維持・管理で、そのための経費として組合員は管理費や修繕積立金を預け入れ、定期的な点検・修繕、あるいは突発的な設備不具合の修理に臨んでいます。

取り決められた管理規約に則り、組合員の中から理事長、会計、監事を選出し、これら幹部組織(理事会)を中心に組合活動を運営します。年に一度実施される管理組合総会では、建物維持・管理のためのさまざまな議題を掲げ、組合員の賛否を取って実行します。総会では管理費・修繕積立金の収支報告を行いますが、これと併せて入出金状況が分かるエビデンス(預貯金通帳の写しなど)の開示義務もあるため、不正の痕跡があればここで明らかになります。

しかし悪意の幹部は、事前に通帳の数字を偽装するなどして不正の証拠隠蔽を図ります。

このような不正が行われないよう、法的には通帳と印鑑はそれぞれ別の幹部(または管理会社)が保管するルールになっていますが、銀行手続き後に保管担当者へ返し忘れた、両方とも会計担当者が保管していた方が便宜的などの理由からルーズになっている場合もあります。このように、理事会や組合員および管理会社がルール順守を怠ると、不正が見過ごされたまま何年もの月日が経ってしまい、気づいたときには莫大な金額が泡と消えていた、という顛末に至るのです。

マンション管理のプロ、管理会社の役割

管理会社とは、管理組合からマンション維持・管理実務の委託を受けた会社です。

管理組合とやりとりするのは「フロントマン」と呼ばれる有資格者(管理業務主任者)です。フロントマンというと、1階エントランスの個室に常駐している管理人さんと思われがちですが、そうではありません。フロントマンとは、日常的な管理業務のサポートはもちろん、長期修繕計画の提案、エレベーターなど共用設備の定期メンテナンス手配、総会のスケジューリングや資料作成、管理費や修繕積立金の集金代行・滞納住戸への督促まで多岐にわたる業務をこなす人のことをいいます。

マンション管理のプロフェッショナルとして、組合員に代わって管理全般を概観するのがフロントマンの役割です。このフロントマンと理事会とが真摯に連携することによって、健全で快適な住環境が実現されます。しかしフロントマンが横領を働いたり、理事会の幹部たちと癒着して私利私欲に走ったりするようでは、管理会社に業務を委託する意味がありません。

自主管理の行く末は「廃墟マンション」?

管理会社に委託せず、組合員が自ら管理業務を行うという選択肢もあります。

しかしその場合は、組合員全員が交代で共用部の清掃を行い、専門業者へ定期点検の手配をし、将来の修繕計画も決めていかなければなりません。管理会社への業務委託費用が不要になる分コストダウンを図れますが、本来であればプロが行うべき業務を素人集団がどこまで賄い切れるかは未知数です。

日中働いている組合員が多ければ、清掃などのルーティンをこなせる人も限られますし、建物の劣化状況の把握も、素人には難しいものです。「自分たちだけでやりきる!」と息巻いても限界はあり、次第に組合活動へ参加する人が少なくなり、最終的には維持・管理が行き届いていない「廃墟マンション」となり果ててしまうことも懸念されます。

組合員の無関心が不正を生んでいるケースも

横領・癒着などの不正が発生する原因は、1つに管理会社の業務怠慢(通帳や印鑑の保管体制が曖昧、担当者の書類偽装を見逃しているなど)、または理事や会計担当の任期が長過ぎるため妥協関係ができてしまうことが挙げられます。

そしてもっとも致命的な原因は、組合員が管理運営にまったく関心を持っていないことです。健全なマンション管理を維持するためには、組合員一人ひとりが前向きに取り組む必要があり、常に厳しい目で理事会や管理会社の動きを監視し、運営情報のすべてを把握しておくことが大切です。

「管理組合があって良かった」と思えるタイミングは、建物老朽化により全面建替えを考え始める頃でしょう。

建替えとなれば、「いまある修繕積立金でどの程度の建物が建つのか」「増床は可能か」「逆に減床してしまうのか」「持ち出し金は発生するのか」「工期はどのくらいかかるのか」「工事中の仮住まい費用は確保できるのか」・・・などを総体的に考えていかなければなりません。素人集団の組合員だけでは難しい課題なので、管理会社およびマンション建替え専門のコンサルティング会社とも連携する必要があるのです。

建替えには根気が必要で、一般的には建物完成まで10年前後かかるとされています。

建替え協議の途中で連携会社と意見が合わなくなり、別の会社に依頼し直すということも多々あります。そうなると従前の計画は一旦白紙に戻り、ゼロから練り直しです。気力と体力を維持しながら、組合員全員が目標を見失うことなく団結することが必要です。すべての組合員の財産であるマンションを理想的な形で再生するためにも、管理組合の存在は欠かせません。

まとめ

結論として、将来の建替えを考えれば管理組合の存在意義は大きいといえます。

関係者による横領や癒着などの不正を防ぐためには、組合員が運営に興味を持ち、積極的に参加する必要があります。現在マンションを所有している人は、「面倒だ」「理事会に任せておけばいい」と言わずに、次回の総会に参加してみましょう。そこで提示された資料に目を通したとき、「おや?」と思う内容があった場合は、躊躇せず果敢に質問しましょう。