「マンションのモデルルームを見学したら営業マンから電話攻勢をかけられ、参ってしまった…」これはよくある話です。熱心な担当者ほど、顧客にアプローチを繰り返してしまうのかも知れません。

しかし、この「しつこさ」を逆手に取って貴重な情報を得るという裏ワザもあります。

営業マンを上手に利用して、賢い不動産選びをしてみませんか?

新築物件の情報を得るのは難しい

例えば、独身者が自宅として1LDKマンションの購入を考えているとしましょう。新築を買うか、中古にするべきか決め兼ねているならば、まずは希望エリアに建つ中古マンションの価格相場を調べてみてください。中古マンションの販売価格は、数多ある不動産ポータルサイトで簡単に調べられます。

その結果、下記のような価格を見つけ出したとします。

  • 築9年:専有面積58㎡→価格6,500万円(坪単価370万円)
  • 築7年:専有面積51㎡→価格6,470万円(坪単価410万円)
  • 築7年:専有面積42㎡→価格5,580万円=(坪単価439万円)

3物件の坪単価平均値(370万円+410万円+439万円÷3=406万円)から、このエリアの中古マンションの価格相場が坪単価400万円程度であることが分かります。

ネットで調べるのが面倒であれば、細かなエリア情報を熟知している地元の不動産仲介業者に聞くのも1つの方法です。

長年の実績から居住者や管理人とのネットワークが構築されており、「マンションの隣にショッピングモールがオープンするので便利になりますよ」とか「このマンションには建て替えの話がありますが、近々コンサルタントが変更になるので計画は延期になりそうですね」など、関係者にしか知り得ない情報が次々と入ってくるのです。

こういった地元業者と付かず離れずの関係を築くのも1つの裏ワザです。ただし、彼らの情報は中古物件に限ります。商圏内であっても、またどんなに実績があっても、新築マンションのオフィシャルな情報はなかなか得られないものです。新築マンションの販売は、分譲会社(施主)が指定する不動産業者でないと行えません(基本的には分譲会社の関連販売会社)。そうした理由から、新築マンションの価格相場を知ることは困難を極めます。

新築マンション専門の不動産サイトを見ても、1棟の最高・最低価格、最多価格帯しか掲載されておらず、しかもその価格がどの間取りのものかも明示されていません。そのため、新築マンションの価格についてはマンションギャラリーやモデルルームなどへ直接出向いて聴取するしかないのです。

モデルルームで営業マンに「5つの条件」を伝えてみよう

という訳で、新築マンションの価格相場を知るため、意を決してモデルルームへ行ってみましょう。

受付を済ませ、まずはプロモーションビデオを鑑賞。次に現地周辺のジオラマ中央にそびえ立つ建物完成予想模型を見ながら、このマンションの立地優位性、資産価値について説明を受けます。そして、いよいよ商談が始まります。

「こちらのマンションのほかに、ご検討中の物件はありますか?」

営業マンのこの質問を皮切りに、情報収集を開始しましょう。営業マンに伝えるべきは以下の5点です。

①新築にするか、中古にするかで迷っている。

②広さは30㎡以上(1LDK)以上。いまは自宅用だが、将来(結婚したら)は賃貸に出したい。

③エリアはある程度広域(同じ鉄道沿線・駅)になってもよい。

④駅から徒歩5分圏内。

⑤管理費等の固定費を抑えたいので、共用サービスが少ないシンプルなマンションがいい。

質問以上にいろいろな要望を伝えていますが、これも情報収集のために重要なキーワードになります。

まず回答の➀について。中古マンションも検討対象ということであれば、営業マンは「新築マンションの優位性を伝えなければ」と考えます。次に②では「不動産投資にも興味があるのなら、この物件以外で投資向きの自社分譲マンションがあれば今後も紹介できるな」と考えるでしょう。

そして③と④では、「同じ鉄道沿線で条件に合う自社物件がほかにあれば紹介してもいいかな」と考えます。最後に⑤で、「ローン支払い以外の経費概念も頭にある手強い顧客だな」と印象付けます。

営業マンをもっとも鼓舞させるのは「不動産投資に興味がある」という点です。

今回の目的は自宅用の新築マンション購入ですが、将来的には投資も考えているということで、「このお客様とは長いお付き合いになるかも…」と期待させます。不動産業では顧客と長く繋がっていくことが重要です。マイホーム購入から始まり、次に大家業(不動産投資)、そして相続不動産の売却と、1人の顧客だけで何度も不動産取引ができる可能性があるのです。このように営業マンの興味を惹くことで、知りたい情報を巧みに引き出せる確率が高まるでしょう。

次に営業マンは「ご予算はどのくらいですか?」と聞いてきます。受付時に記入したアンケート用紙に年収などの情報があるため、あまり的外れな予算では興醒めされてしまいます。逆にこちらから、「このマンションで1LDKタイプだとおいくら位なのでしょう?」と聞き返します。すると近日申込開始予定住戸の価格表を見せてくれるかも知れません。

1LDK:専有面積50㎡→6,180万円(坪単価409万円)

これが一番知りたかった情報です。

坪単価だけで見れば中古マンションとほぼ同額です。それであれば新築の方がお得とも考えられます。立て続けに「このエリアの中古マンションの価格相場はどのくらいですか?」と尋ね、この営業マンがどこまで調べているか試します。「中古でも坪単価400万円以上しますよ」という答えが返ってきたら、「新築か中古か、さらに悩ましくなりました」と挑発します。

営業マンは切り札を出して、「こちらは新築物件の中でも抑え目の値付けをしています。このエリアの競合物件の坪単価を見ても500万円台から600万円台のものが殆どです」と、同エリア他物件の価格表を見せてくれるでしょう。

競合物件の営業マン同士は横で繋がっており、お互いに価格や販売時期などの情報交換をしているそうです。さらに、「もう少し広域エリアでお考えいただけるなら、価格も管理費も抑えられる物件があります」や、「同じエリアの競合物件でも弊社の別部署が案内しているところがありますので、よろしければそちらの担当者もご紹介します」など、掟破りとも思える提案を受けるかも知れません。

魅力的なお誘いが目白押しですが、ここでは価格情報の取得が目的ですので、購入申込みはせずに帰宅します。

後日、「第●期の申込みが迫っている」旨の連絡や「格安のキャンセル住戸が出た」などのお知らせが届きますが、購入したいと思える部屋でなければお断りして構いません。そして当分の間、広域エリアの新築マンション情報が送られ続けますが、それらの中にも有益な情報が隠れている場合があります。面倒かも知れませんが、不動産投資家向けの定期購読物と思って気長にお付き合いしてください。

まとめ

「しつこい不動産営業マンは避けたい」という人がほとんどかも知れませんが、もし不動産投資に少しでも興味があるのなら、その中の1人、信頼できる営業マンと“付かず離れず”の付き合いを続けてみることをおすすめします。

彼らは不動産を熟知し、ファイナンスの提案もできて、(しつこい分)人情に厚いことが特徴です。専門家として家計の悩みや相続の相談にも乗ってくれるはずです。まずはマイホーム購入をきっかけに、感性が合いそうな営業マンを探してみてはいかがでしょうか。