マンションの間取りは、専門家が居住者の利便性や生活パターンを想定し、限られた条件の中で設計されています。

自分が居住するマンションはもちろんですが、投資用の物件についても、どのような生活スタイルの人が暮らすのかを想定し、吟味して選ぶことが大切です。今回は、代表的なマンションの間取りとその特徴を解説します。

一般的な分譲マンションに多い「田の字型間取り」

一般的な分譲マンションに多いのは「田の字型」と呼ばれる長方形の間取りです。玄関を入るとタテ長の廊下が延び、廊下の左右に寝室(洋室・和室等)、その奥にリビング・ダイニングやキッチンがあります。バルコニーに面しているリビング・ダイニングは、明るく居心地の良い空間になっています。または、寝室2室をバルコニー側に配置しているプランや、リビングと寝室1室をバルコニー側に配置したプランなどもあります。

間取り選びの確認ポイントとして、「P・P分離されているか」があります。P・Pとは、Private(プライベート)とPublic(パブリック)のことで、来客のための空間と家族の空間とを上手に分ける工夫がされているかどうかを意味します。例えば、来客中のリビングを通らないと浴室に行けないとか、キッチンを通らないとトイレに入れないなどの支障がないか、購入する際には確認が必要です。

P・P分離では、水回りの配置がもっとも重要になります。とくにトイレは流水音が響くため、リビングや寝室から離して配置されている間取りが良いでしょう。

ムダがなく機能的な「ワイドスパン型間取り」

前述の田の字型より省スペースで機能的といわれるのが「ワイドスパン型」と呼ばれる正方形の間取りです。バルコニー側にリビング・ダイニングを含むすべての居室が面し、どの部屋にも明るい日差しが注ぎます。各部屋が横並びでフラットにつながっているので、各部屋の独立性が高く、P・P分離も叶います。加えて各部屋の横並び効果で、デッドスペースとなる廊下も小さく抑えられます。また専有面積にゆとりができる分、収納スペースもたくさん設けられるというメリットも生まれます。

しかし、このワイドスパン間取りを採用しているマンションは少数です。正方形のワイドスパン型間取りでは戸数が多数確保できず、マンションデベロッパーが避けたがるからです。例えば、1戸のバルコニー幅が田の字型は5m、ワイドスパン型は8m必要だったとします。建設地の幅が40mだとしたら、田の字型は8戸取れますが、ワイドスパン型は5戸しか取れません。ワイドスパン型はマンションデベロッパー泣かせの贅沢な間取りなのです。

引きこもれない!?「リビングイン型間取り」

「引きこもり」は子供や若者だけではなく、30代~50代という年齢層でも起こり得る問題です。このような家族問題の根源の1つに、家の間取りがあるのではないかと思います。前述のP・P分離的な考えがエスカレートすると、他人だけでなく家族までも四散させてしまうのかも知れません。そんなことにならないよう、家族が毎日顔を合わせ、1日の出来事について語り合える間取りを選びたいものです。

家族が集まる場所といえば、食事を摂ったり、テレビを観て寛いだりするリビング・ダイニングです。

玄関に入り、最初にリビング・ダイニングを通るような間取りであれば、家族同士で「ただいま」「おかえり」と声をかけ合い、会話をつなぐことができます。「リビングイン(センターリビング)型間取り」は、玄関に入るとすぐにリビング・ダイニングがあり、その奥に寝室が配置された間取りです。これなら、自室に直行することができません。リビングイン型間取りは家庭内のコミュニケーション不足を解消してくれます。

家事をサポートする「回廊型間取り」

ここまでは各部屋の独立性が高い間取りを紹介してきましたが、暮らし方によっては開放的な間取りが望まれる場合もあります。食事の準備や洗濯、掃除、ゴミ出しなど、日頃のルーティンワークである家事を効率的にこなすための「家事動線」にこだわった「回廊(回遊)型間取り」というプランがあります。

これは、キッチンから出来立ての料理をリビングへ、リビングからクローゼットに入り汚れた服を持って洗濯室へ、洗い上がった洗濯物をバルコニーへ、バルコニーからキッチンに戻って食後の食器洗いへ…というように、室内をサーキットのようにぐるぐる移動できる間取りです。家のなかにスムーズな家事動線ができていれば、家事仕事も苦にならず、時短にもつながるでしょう。

非日常を楽しむ「センターコア型間取り」

ある海辺のリゾート地でユニークな間取りを見つけました。

マンションの最上階、コの字型のバルコニーが部屋全体をぐるりと包み、そこからは海が一望できます。超ワイドなバルコニーの室内側にあるのはリビング・ダイニングと寝室です。すべての居室から海を望めるという斬新な間取りですが、部屋のほとんどが開口部で壁がないため、水回り設備が配置できません。

そこで、部屋の中央部に浴室、キッチン、トイレなどの水回り機能を集中させたのが「センターコア型間取り」です。初めてこの間取りを見学したときはかなり衝撃を受けましたが、建築関係者の間ではごく一般的な間取りのようで、設計の専門家にいわせると、「配管などの設備が1ヵ所に集約されるので、施工コストがかからずメンテナンスもしやすい」ということです。眺望に恵まれた別荘地や、タワーマンションのペントハウスなどで採用されている間取りです。

タワーマンション高層階の「眺望重視型間取り」

前述のセンターコア型間取りと同様、タワーマンションも高層階ならではの伸びやかな眺望を楽しむ間取りが採用されています。

基本的には開口部を大きく、天井を高くして開放感を演出する間取りです。富裕層向けの100㎡超ファミリータイプが多い中、都心の一部には1LDKプラン中心のタワーマンションもあります。

専有面積50㎡程度の部屋で眺望を楽しむ間取りとなると、なかなかプランニングが難しいものです。玄関を入るとすぐにリビング・ダイニングキッチン、そしてその奥に寝室と浴室(ビューバス)が配置されています。バルコニー側の開口部はすべて寝室とビューバスに占拠されているので、リビング・ダイニング側に窓はありません。

「田の字型」「ワイドスパン型」などファミリータイプの間取では開口部重視でしたが、タワーマンションの「眺望重視型間取り」は逆理論で、リビング・ダイニングの快適性はまったく考慮されていません。

生活感のない暮らしを望むなら、いっそのことキッチンを取り払い、リビング・ダイニングを玄関ホールとしてしまうくらいの思い切ったプランでもよいかもしれません。地方ビジネスマンのホテル替わりやデート用居室に向いている間取りです。

まとめ

今回は6パターンの間取りプランを紹介しましたが、このほかにもユニークなプランがたくさんあるはずです。

投資用としてマンションを購入する際は、「自分が住む」という感覚で選ぶのではなく、ファミリー需要が高い場所であれば「ワイドスパン型」や「リビングイン型」、渋谷や青山などの都心部であれば「眺望重視型」など、立地エリアやそこに住む人の特性を十分に吟味して選ぶことをオススメします。