間取り・面積・築年数が同じ投資マンションを、東京都心と地方都市とで比較したらどちらが儲かるのでしょうか?

いずれも新幹線の終着駅である「新大阪」駅と「新潟」駅、そして東京、上野に次いで都内3番目の新幹線駅となった「品川」駅、それぞれの駅から徒歩圏内に建つ築20年程度の投資用ワンルームマンションを購入したと想定して、シミュレーションしてみました。

新幹線駅徒歩圏の1Rマンション投資、どこが儲かる?

<新潟Aマンション>

購入価格:500万円
交通:JR上越新幹線「新潟」駅より徒歩5分
専有面積:24.00㎡
築年:1999年(平成11年)
入居状況:賃貸中(家賃:4.3万円・表面利回り10.32%)

まずは上越新幹線の終着駅「新潟」のワンルームマンションから紹介します。

駅東口のビジネスホテル街に立地していますが、メインとなる繁華街からは1kmほど離れているため、夜の喧騒は少なく、比較的落ち着いて暮らせます。市街地の向こうには日本海の大海原。海の幸溢れる新潟港も近く、国内便はもちろん国際便も就航する新潟空港へも車で30分ほどの距離です。

また、新潟は医療系をはじめ多彩な学部・学科を有する大学や専門学校が多く、近年ではアニメ・マンガ学部を有する開志専門職大学が開校。全国からクリエイターを志す若者が集まり始めており、学生向け賃貸マンションの需要がさらに高まりそうです。

<新大阪Bマンション>

購入価格:600万円
交通:新幹線「新大阪」駅より徒歩5分
専有面積:19.44㎡
築年:1998年(平成10年)
入居状況:賃貸中(家賃:4.5万円・表面利回り9.00%)

次に東海道新幹線の終着駅「新大阪」の北側、オフィスビルや分譲マンションが立ち並ぶエリアに立地するワンルームマンションです。

新大阪といえば関西屈指の大都市というイメージがありますが、東京都心と比べると家賃は非常に安いです。20㎡台ワンルームマンションの家賃相場が月額3万円台~5万円台(坪単価7000円前後)程度ですから、北関東エリアの家賃相場と同じくらいでしょうか。

新幹線駅に近い上に家賃も安いことから、居住用に限らず小規模オフィス需要も高く、空室知らずであることが大きな魅力です。加えて、新大阪駅周辺ではリニア中央新幹線絡みの再開発事業計画が進んでおり、不動産価値がより高騰することも見込まれます。

<品川Cマンション>

交通:東海道新幹線「品川」駅より徒歩10分
購入価格:1,930万円
専有面積:21.14㎡
築年:1998年(平成10年)
入居状況:賃貸中(家賃:8.5万円・表面利回り5.37%)

品川駅西側の高台に位置し、都心ならではの利便性と、緑と静謐に恵まれた立地です。

このエリアは古くからの高級住宅街。新幹線駅から徒歩圏でありながら、さまざまなインフラが整った暮らしやすさが魅力です。そのため富裕層の住宅需要が高く、不動産価格は上昇の一途を辿っています。

品川駅は羽田空港への玄関口として、またリニア中央新幹線の開業も控え、不動産価値が高騰する要素が多彩です。また、隣の新駅「高輪ゲートウェイ」開業を受けて駅東側エリアの再開発も進んでおり、ソニーやNTTのほか大手IT企業などの本社オフィスが次々と進出。こうした企業に勤める高収入ビジネスパーソンの賃貸需要も見込めます。

不動産投資は「長いスパン」で考える

新潟・大阪物件は購入価格1,000万円未満で表面利回り9~10%と、投資家にとっては実に魅力的な数値を誇ります。

一方、品川物件は購入価格1,000万円後半で表面利回り5%台と、都心物件では「そこそこの利益率」といったところです。3物件とも金利2%・返済期間15年の投資用不動産ローンで購入したとすると、新潟・新大阪のような購入金額1,000万円未満の物件では、7年目頃から家賃累計額がローン残債を超えますが、購入金額1,000万円超の品川物件では9年目以降になります。

ローン返済途中、購入価格と同額で売却した場合でも、新潟・新大阪は7年目以降、品川は9年目以降から購入額を越えて利益が出てきます。

では、ローン完済後も売却せずに所有し続けたら、どのくらいの利益をもたらしてくれるのでしょうか。所有20年間の新潟・新大阪の総利益(家賃累計)は1,000万円台程度ですが、品川は2,000万円台まで稼ぐことができます。

ほかの2物件より家賃が高いので当然のことですが、長く所有し続けることによって、品川は新潟・新大阪の年々倍々で利益を増やしていくことができるのです。

修繕積立金はどうなっているのか

今回の試算では、管理費・修繕積立金の捻出、そして専有部分の修繕費等は考慮せず「表面(グロス)」で利益を算出しましたが、長年所有するとなれば、水道・ガス・電気などライフラインを司る共用設備の修繕問題は避けられないでしょう。

専有部の修繕であれば所有者の判断で、時期も工事費も自由に行うことができますが、共用部となるとそうはいきません。とくに、エレベーター関連や防水工事などの大規模修繕についてはマンション全体で決めなければならず、工事費も高額になりますから、修繕積立金の貯蓄状況によっては追加の出費が必要になる場合もあります。

共用部に関する管理業務は、マンション所有者で結成する管理組合が、管理業務主任者(マンション管理の国家資格)を有する不動産管理会社に委託するのが一般的です。管理会社は、建物の経年劣化を先読みした長期修繕計画をもとに定期メンテナンスを行うので、突発的な大規模・高額修繕が発生するリスクを避けられます。

しかし、そもそも管理組合が結成されておらず、プロの管理会社にも委託していないいわゆる「自主管理」のマンションも少なからず存在します。

自主管理物件は、所有者の誰もが建物全体のコンディションを把握しておらず、定期的な修繕も行っていないため、ある日突然エレベーターが使えなくなったり、屋上から大量に雨漏りするような状態になるまで放置されたりと、最終的には住む人もまばらな「お化け屋敷マンション」に成り果てるのです。

大手不動産会社が分譲したブランドマンションであれば可能性は低いはずですが、地方都市の中小建築会社が土地オーナーに依頼されて建てた小規模マンションの多くは自主管理物件です。物件購入の際は、管理形態はもちろんのこと、「過去の共用部修繕工事がどの程度行われているか」「修繕積立金は健全に蓄積されているか」などを必ず確認しましょう。

まとめ

初期投資の軽さを優先すれば、購入価格や投資利回り、固定資産税などどれを取っても地方都市のマンションが有利です。価格や税金が安く、利回りも高いため、毎月のローンも家賃でラクラク支払えます。

しかしそれは購入後10年目程度までの話。10年目以降は、都心のマンションが優位に転じます。それも徐々にではなく急激に、利益も年々倍々で増えていきます。入居率を見ても、都心の賃貸需要は絶えることがないため、長年にわたって安定収入が望めます。都心の固定資産税は高額ですが、それは多くの人が必要としている裏付けでもあり、資産価値が高いということです。

不動産投資は株式などと違い、短期間で売ったり買ったりして利益を挙げるものではありません。

「マンションを購入してローンを完済した」という実績を作りたいのであればいいですが、短期間で売却しても利益は希薄です。できることなら、生涯の財産として長く所有できる資産価値の高い不動産を購入したいものです。