結婚や出産などのライフイベントごとに、家計の状況は目まぐるしく変化します。家計の無駄を省きながら、本当に必要な保障を確保するためには、定期的な保険契約の見直しが必要です。そこで今回は、ライフステージごとに求められる保険と見直しのポイントについて解説します。

ライフステージの変化1【就職】

初めてリスクに備えるべきライフステージといえば、学校を卒業して就職し、社会人になるときでしょう。

その時点では扶養すべき家族はいないケースがほとんどでしょうから、大きな死亡保障ではなく、自身の葬式代など死後整理資金を確保できる保険を考えましょう。経済産業省「第3次産業活動指数」によれば、葬式代の平均は1人あたり約150万円前後(墓代は別途50万円程度)ですから、これが保障金額の目安になります。

また、自分自身の病気やケガによる入院・通院費用の医療費と、病気で働けなくなった場合の保障として医療保険を検討しましょう。ただし、公的な健康保険(社会保険、国民健康保険)には「高額療養費制度」があり、月ごとに一定金額以上の医療費を支払った場合は、後から払い戻しを受けられます。目安としては、70歳未満で標準報酬月額26万円以下の人の場合、1カ月の自己負担額は57,600円となります。

若い世代は、ガンを始めとする成人病のリスクは高くありません。医療保険に加入するなら、病気による休業で減った収入を補填できる最低限度の保障内容でいいかも知れません。

大企業勤務や公務員の人は、病気で長期療養をした場合でも、比較的手厚く賃金が保障されます。しかし、中小零細企業や派遣社員として働いている人の場合は、保障が十分ではない場合もあります。そのようなケースでは、働けなくなったときに給付が受けられる就業不能保険を検討してもいいでしょう。

また、ある程度収入に余裕がある人なら、20代のうちから少しでも個人年金保険などに加入して、老後の年金不足に備えるという手もあります。こういった貯蓄性の高い保険は、若いときに加入しておくほど有利になります。

ライフステージの変化2【結婚】

結婚も、保険を見直す重要なタイミングです。この場合、結婚後に夫婦が共働きをするのかどうかによって、必要な保険の内容等が変わってきます。ケース別に見てみましょう。

▼夫婦共働きのケース

共働きと言っても色々なパターンがありますが、ここでは夫婦それぞれが自立して生活できる収入を得ている場合を想定します(妻がパートなどで働いており、扶養家族に入れる程度の収入しか得ていない場合は、専業主婦のケースをご覧ください)。

まず、結婚前から加入していた医療保険就業不能保険は、そのまま継続しても問題はないでしょう。加入していない人は、もし夫婦のどちらかが重い病気になれば、パートナーの方も介護などで時間を取られ、パートナーの収入にも影響を及ぼすリスクを認識する必要があります。それを補填する意味でも、医療保険には加入を検討するべきでしょう。

就業不能保険については、「就職したとき」の項で触れたように、会社で用意している制度にもよるため、すぐに加入すべきかどうかは一概には言えません。ただし、住宅を購入し、住宅ローンを払い続けなければならない場合などは、多少の保障額でも加入しておいた方が安心です。

生命保険の死亡保障に関しては、パートナーに収入があるので基本的に大きな金額は必要ありません。まず葬儀代+墓代+香典費用などとして150万~300万円程度は用意しておきましょう。

遺されたパートナーに収入があっても、配偶者が亡くなってから一定期間は働けなくなりますし、精神的にもダメージを受けるため、しばらくは100%の力では働けないかも知れません。それを考えると、パートナーの半年分くらいの生活費を残したいところです。葬儀代等と合わせて500万~700万円程度が目安になるでしょう。

なお、住宅ローンについては、契約者が死亡すると通常ローンを組むときに加入する団体信用生命保険(団信)で返済されるので、心配は不要です。さらに、夫婦共働きで収入に余裕があるうちに、将来の子育て資金やマイホーム資金、さらには老後資金の確保のために、貯蓄性の高い積立型保険を一部に採り入れるという考え方もあるでしょう。

▼専業主婦・専業主夫のケース

主たる収入減となる人の配偶者が働いていない(専業主婦、専業主夫)ケースです。ここでは「妻」が専業主婦の場合を例にします。共働きの場合と大きな違いが出るのが生命保険の死亡保障の考え方です。

夫に万が一のことがあった場合、いずれにしても妻は働かなければなりません。しかし、いままで専業主婦やパートだった人が、いきなりフルタイムの仕事に就くのは難しいでしょう。そのため、妻の2~3年分の生活費を遺す必要があります。妻1人になれば、夫婦のときよりは生活費が少なくて済むため、現在の生活費の7割程度を目安に、3年分ほど遺せれば安心と言えるでしょう。

例えば現在の生活費が夫婦で月30万円だとするなら、その7割で21万円。3年分(21万円×36カ月)の756万円を遺すことが目安になります。さらに、葬儀代と墓代で300万円を加え、1,000万~1,500万円程度を遺したいところです。

ライフステージの変化3【子供が生まれたとき】

子供が生まれると、死亡保障のニーズがマックスに高まります。遺された配偶者と子供の生活を保障するための死亡保障は、可能な限り手厚くしましょう。共働きだった場合も妻が専業主婦だった場合も、子供が独立するまでの家族全員の生活費を遺すのが理想です。なぜなら、1人親になった場合、ベビーシッターなどの費用がかかる上、働く時間を減らさなければならないケースもあるためです。

必要な保障金額は数千万円に上りますので、比較的少ない保険料で期間限定の死亡保障が受けられる掛け捨てタイプの定期保険がお勧めです。

さらに、世帯主が病気やケガで長期間働けなくなるリスクや、入院費用などで家計が逼迫するリスクにも備える必要があります。医療保険がん保険就業不能保険についても、金額を見直す必要があるでしょう。

そのほかに、子供の病気やケガへの備えとして、子供保険や子供の教育費を準備するための学資保険なども検討しましょう。学資保険は、大学進学時などに祝金や満期保険金が受け取れます。また、進学前に両親に万が一のことがあった場合には、その後の保険金の支払いが免除され、子供に祝金や満期保険金が支払われます。

ライフステージの変化4【マイホームを購入したとき】

すでに触れましたが、マイホームを購入して住宅ローンを組んだ場合は、通常、ローン残債保障のための団体信用生命保険へ加入します。この保険は、債務者である世帯主に万が一のことがあったとき、保険金で住宅ローンの残債が弁済されるため、住宅ローンが残ることはありません。

団体信用生命保険に加入していれば、世帯主が亡くなった後は住居費負担がなくなるため、その分、生命保険の死亡保障を少なくできる可能性が出てきます。その一方で、住宅総合保険地震保険などの住宅の損害に備える保険への加入が必要になります。

ライフステージの変化5【子供が独立したとき】

子供が社会人になって独立したら、生命保険就業不能保険は減額していいでしょう。基本的には、子供が産まれる前の状態に戻すイメージです。

一方で、加齢に伴って成人病などの病気やケガ、要介護のリスクが高まるため、医療保険ガン保険を手厚くすることがお勧めです。また、自分や妻の老後の生活費の準備も必要となってくる時期ですので、老後資金のプラスになる積立利率変動型終身保険低解約返戻金終身保険個人年金保険なども、収入に応じて検討しましょう。

ライフステージの変化6【退職したとき】

個々人の努力にも寄りますが、通常は退職までにはある程度の資産を形成できているはずです。65歳以降は年金も支給されるため、生命保険の大きな死亡保障は必要なくなります。最低限の葬式代などにとどめ、保険料の支出を減らす方向で見直しましょう。

現在は長寿命化が進行しており、退職後の長い人生に必要な生活費や医療費の備えが重要になっています。また、自身や妻の病気・ケガ・介護への備えのニーズも高まるので、収入は減っても医療保険ガン保険は、必要な限り継続するべきと言えます。

まとめ

若い頃に人に勧められて保険に加入し、長い間契約を見直していないという人はたくさんいます。しかし、生活や家族構成が変われば、当然必要な保障も変わります。無駄な保険料を払わないためにも、保険の見直しが必要なのです。

いまは独立系の保険ショップなど、中立の立場から無料で保険の契約内容についてアドバイスしてくれる窓口も増えています。昔から同じ保険に入り続けているという人は、今後の安心のため、一度相談してみるのもいいでしょう。