終身雇用が崩壊し年金制度もあてにならず、誰もが将来の不安を感じる世の中。体力も気力もある若いうちにリタイアし、趣味やボランティアなどに生きがいを見出し自分らしく生きたいと望む人が増えてきました。しかし、早期退職したくても、生活するに足る収入がなければ暮らしていけません。そこで、不動産投資を検討してはいかがでしょうか。すべての運営・管理を自分でやると少々大変ですが、管理会社に依頼すれば時間や労力はほとんど必要ありません。

不動産投資が軌道に乗れば、アーリーリタイアやセミリタイアをして余裕のできた時間を好きなことにつぎ込むことも可能に。アーリーリタイアするために用意すべき資金や成功するためのステップなどについて解説します。

変わる労働環境

リクルートエージェントの調査によると、転職決定者数の伸び率は毎年増え、2018年度は2009~2013年の5年間の平均を1とした場合の2.41倍に達しています。

出典:リクルートエージェント「 転職市場の展望【2020年版】」

この表によると、同業種よりも異業種への転職人数が大きく伸びていることがわかります。

すなわちIoT(Internet of Things)やAI(人工知能)などを利用した第四次産業革命により、労働需給の変化が起きていることが推測されます。

これが日本経済の特徴である雇用形態「年功序列・終身雇用」を大きく崩し、アーリーリタイアやセミリタイアを促進する背景になっています。

アーリーリタイアのために必要なお金は?

「会社が一生面倒を見てくれる時代じゃないことはわかった。でも、アーリーリタイアといっても、先立つものがなければ…」そのように考える人も多いでしょう。では、アーリーリタイアするにはお金はどれくらい必要なのでしょうか。

1世帯当たりの1ヵ月の家計支出

総務省統計局の調査によりますと、年代別1世帯当たりの月間支出は次のようになっています。

上記の表から、下記の点を読み取ることができます。

  • 高齢者になってもそれなりの支出が必要
  • 子ども世帯への援助等なのか、意外と交際費がかかっている
  • 高齢者は持家比率が高い割に家計支出や交際費が多く、比較的ゆとりある生活を送っているようだ

残りの人生にはどの位のお金が必要?

現在50歳および60歳の人が、残りの人生に必要な金額をそれぞれ試算してみましょう。

上表の月間の年齢別家計支出に、平均余命を掛けて算出すれば、必要な費用が算出できます。

なお平均寿命は、平成29年現在で男性は81歳・女性は87歳なので、87歳まで生きたとして計算します。

★50歳の人が必要とする資金

単位:万円

50歳から87歳まで生きたとして、約1億2,600万円の資金が必要。

★60歳の人が必要とする資金

単位:万円

60歳から87歳まで生きたとして、約8,400万円の資金が必要。

上表の金額は最低限のものであり、海外旅行や趣味にお金を費やしたいなら、さらに資金を用意しておかねばなりません。

アーリーリタイアの資金を不動産投資で賄うなら?

次に、50歳でアーリーリタイアをした場合を例に、どれぐらいの不動産を所有していれば生活していけるのか考えてみましょう。

1ヵ月でどれくらいの所得があればいい?

50歳の平均余命が37年とすると、支出総額で1億2,576万円、すなわち最低でも1億3,000万円の所得が必要です。

1億3,000万円の所得と聞いても、多いのか少ないのかピンとこないでしょう。この金額を37年間×12で割ると、1ヵ月に必要な所得が約29万円です。

しかしこれは手取り金額であるため、必要経費を含んだ家賃収入を得なければ生活はできません。

大ざっぱですが、所得は下記の計算式で算出します。

所得=家賃収入―(ローン返済額+必要経費)

すなわち、家賃収入で金融機関へローン返済を行い、さらに不動産会社への管理費・税金・保険料・修繕費などの諸経費を支払っていかなければなりません。

これらをカバーできる家賃収入、29万円が必要になります。

不動産投資で30万円の所得を得るシミュレーション

それでは不動産投資で29万円、ざっくりいって30万円の所得を確保するには、どの程度の不動産物件を持つ必要があるのでしょうか。

不動産投資のメリットは、レバレッジ(てこの原理)を効かせて金融機関から融資を受けられることです。たとえば1,000万円の自己資金があれば、真面目に勤務している会社員という属性で、また優良な物件であれば1億円程度のマンションやアパートを購入することが可能です。

たとえば、1億円の予算で、9万円の家賃の部屋が10室あるマンションを購入したとすると、満室時の月々の家賃収入は90万円、年間では1,080万円です。

しかし実際には空室も発生しますので、空室率10%、諸経費を家賃の15%とすると、年間270万円程度の費用が掛かります。

金融機関から借入年利2.5%・借入期間35年で計算すると、月々の返済額は約35万円、年間では420万円程度になります。

年間の家賃所得は、1,080万円-270万円-420万円=390万円。

390万円÷12=32.5万円なので、概算ですが、30万円の目標をクリアできることになります。

なお不動産投資についてのシミュレーションサイトはいくつもあり、金利計算などは簡単に算出できます。

参考:不動産投資連合体 収益・投資物件簡易収支シミュレーション

不動産投資でアーリーリタイアをするための3ステップ

とはいえ、大金が必要となる不動産投資ですから、安易な気持ちで取り組めば失敗もあり得ます。失敗しないアーリーリタイアを実現するためには、きちんとしたステップを踏まなければなりません。

(1)自己資金の充実

アーリーリタイアをするためには、まず自己資金を充実させねばなりません。

不動産投資はレバレッジを効かせて資金を調達できますが、自己資金はできるだけ充実させておく必要があります。

投資にあたっては、頭金だけでなく不動産取得税や金融機関への手数料・登記費用・仲介手数料などの諸費用も掛かります。

また不動産投資には、空室リスクや金利上昇リスク、家賃滞納リスク、災害リスクなどさまざまなリスクがあります。ギリギリの自己資金では、なんらかのトラブルが起こったときに対応できなくなる可能性があります。初期費用や運用・管理するための費用のほかに、いつでもこれらのリスクに対応できるよう、ある程度自己資金を充実させておく必要があります。

(2)投資物件の買い増しをする

自己資金が少ない場合や安全性を求めて投資をしたい人には、徐々に物件を増やしていくことをおすすめします。

月々のローンを滞ることなくきちんと返済していけば、金融機関の信用を得ることができます。
金融機関からの信頼の獲得により、次の物件を購入する際には、フルローン(物件代金・諸費用のすべてを借りること)や、有利な条件での融資交渉も可能になるかもしれません。

(3)不動産投資の勉強をすること

不動産の市況や法制、税制など、不動産投資を取り巻く環境は常に変化しています。

しっかり自己啓発をしておかないと、よい物件を得ることができないだけでなく、不動産関連の有利な特例などを受けられなかったということにもなりかねません。また不断の勉強をすることで、さまざまなリスクに備える方法を身につけることも可能になります。

不動産投資の知識や情報を得る方法としては、信頼のおける不動産会社を見つけること・投資セミナーに参加すること・相談できる大家仲間を見つけることなどが挙げられるでしょう。

完全リタイアではなく、セミリタイアという選択肢も

また、最近は働き方改革の推進という観点から、多様な働き方を認める企業が増えています。「週5日、毎日9時から5時まで+残業」という、これまで標準的だと考えられてきた勤務スタイル以外の、短日・短時間勤務を認める企業が増えているのです。それに加え、最近の新型コロナウイルス騒ぎを奇貨として、テレワークや在宅勤務といったワークスタイルを採る会社も急増しています。

このような社会の動きから、完全リタイアではなく、たとえば週のうち2日だけ、1日3時間だけ働く、あるいは年のうち6ヵ月だけ会社員として働き、あとは自由に過ごす…といった「セミリタイア生活」も十分現実的な選択肢になっています。

もちろん、その場合は会社の仕事から得られる収入は減るわけですが、その分だけを不動産投資で補うということであれば、完全リタイアよりも低いハードルで実現可能でしょう。

あまり多額の自己資金が用意できないので完全リタイアは難しい…という事情があれば、不動産投資を活用したセミリタイアを検討してみてはいかがでしょうか。

自己資金と不動産投資の知識を蓄えよう

不動産投資に成功すれば、余った時間を趣味や生きがいに投下し、第2の人生を充実したものにできます。

アーリーリタイアを実現させるには、まず自己資金を充実させること、次に不動産投資についての勉強をしっかり行うことに尽きるでしょう。