不動産投資に興味はあっても、自己資金や時間的余裕がなく、あきらめている人もいるのではないでしょうか。しかし、「REIT(不動産投資信託)」を購入することで、少額から不動産投資を始めることが可能です。本記事では、REITの仕組みとともに、そのメリット・デメリットをくわしく解説します。

REITとはどのようなもの?

REITとは、「Real Estate Investment Trust」の略で、大勢の投資家から集めた資金で複数の不動産を取得し、賃料収入や不動産の売却益を投資家に分配する不動産の投資信託のことです。

もともとアメリカで生まれた仕組みですが、現在は日本にも浸透しており、日本のREITはJ-REIT(日本版不動産投資信託)と呼ばれています。以下、本記事でREITと書いている場合は、J-REITのことを指します。

REITは不動産を証券化したもので、銘柄にもよりますが、最低10万円程度の少額から購入できます。また、東京証券取引所に上場しているので、株式と同じような感覚で取引できるという特徴があります。

不動産投資をして大家さんになり、安定した家賃収入を得たいと考える人はたくさんいるでしょう。しかし、資金的あるいは物件調査などの時間的に難しくて、あきらめている人も多いものです。そんな方が、少額で不動産投資を始められるのがREITという仕組みです。

REITのメリット

REITの主なメリットは次のとおりです。

●少額から投資できる

REITは2019年10月時点で63銘柄が上場しています(不動産証券化協会)。価格は取引所での需要と供給によって決まりますが、中には10万円程度から購入できる銘柄もあります。

●手間なく効率的な分散投資ができる

REITは通常、複数の不動産に分散投資しているため、もしその中のひとつにトラブルが生じても、影響が軽減されることもメリットだといえるでしょう。また、個人で複数の不動産に投資しようとすると、数億~数十億円規模の資金が必要になり、現実的ではありません。REITなら、不特定多数の投資家が出資した多額の資金をまとめて、不動産投資の経験が豊富なプロがさまざまな不動産に投資し、管理・運用をしてくれます。

●証券取引所に上場しているのでいつでも取引できる

現物不動産投資の場合、買い手と売り手が売買交渉をしなければならず、時間も手間もかかります。REITは東京証券取引所に上場されている証券なので、証券口座さえ開いておけば、通常の株式と同じように簡単に売買できます。指し値注文や成り行き注文も選べますし、インターネットでの取引も可能です。市場が開いている時間ならいつでも売買できる流動性の高さは、現物不動産投資にないメリットです。

●比較的安定的な分配金が期待できる

REITは複数の不動産に分散投資しており、そこから得られる安定的な賃料を配当金として投資家に還元しています。また、利益の90%超を配当するなど一定の条件を満たせば、実質的に法人税がかからない優遇措置があり、株式などに比べて相対的に分配金利回りが高いことも魅力です。2019年10月時点のREITの平均予想分配金利回りは3.42%(不動産証券化協会)。東証1部銘柄の予想配当金利回りは1.90%(日本経済新聞)なので、1.5%ほど高いことがわかります。

REITのデメリット

幅広い物件に分散投資するREITは、通常の不動産投資よりもリスクは減少しますが、元本保証されているわけではありません。また、証券取引所に上場しているので、株式のように価格が変動します。では、REITのデメリットについて詳しく見ていきましょう。

●投資口価格変動リスク

「投資口価格」とはREITの1単位あたりの価格のことで、株式でいう株価のようなものです。不動産の売買状況や賃貸市場の状況だけでなく、証券市場における需給や金利動向によってREITの投資口価格は変動します。買値よりも投資口価格が下がると損失を抱えることになります。

●分配金の変動リスク

平均予想分配金利回りが3.42%と、株式などに比べて高い利回りが狙えるREITですが、それはあくまで過去の実績値で、将来の分配金の金額が保証されているわけではありません。たとえば、賃料の未払いやテナントの撤去などで賃料が得られなくなると、分配金額が減る恐れも当然あります。

●上場廃止リスク

REITの投資法人が倒産するなどの事態になると、株式と同じように上場廃止になる可能性があります。上場廃止になれば東京証券取引所で売買できなくなってしまうため、注意が必要です。実際、2008年には「ニューシティ・レジデンス投資法人」が民事再生となり、上場廃止になった例があります。また、制度変更によって、REITの投資口価格や分配金に影響が及ぶ可能性があります。たとえば、不動産に関する法律が変更されることによるコストが発生し、それによって投資口価格や分配金が減るといったことです。

REIT選びのポイント

REITが投資対象とする不動産にはさまざまな種類があります。保有不動産の用途別比率は以下の通りです(不動産証券化協会 2019年10月時点)。

  • オフィス 41.6%
  • 商業施設 17.7%
  • 物流施設 15.9%
  • 住宅   14.5%
  • ホテル  8.3%
  • ヘルスケア 1.0%
  • その他   1.0%

REITは、1つの用途(オフィスビルなど)に投資する特化型や、複数の物件に投資する複合型(2つの用途)・総合型(3つ以上の用途)など、運用スタイルによってさまざまな種類があります。

株式に比べて銘柄数は少ないものの、なにを基準に選べばいいかわからない人も多いでしょう。そこで、REITを選ぶ際の基本的なポイントを2つ紹介します。

●REIT選びのポイント① 資産規模

資産規模は、REITの運用の体力を測る指標になります。資産規模が大きければ物件を多く保有でき、分散効果が高まるのでリスクを回避しやすくなるからです。資産規模のトップ3は以下の通りで、いずれも1兆円を超える資産を誇っています。

  • 8951 日本ビルファンド投資法人   1兆1,327億円
  • 8952 ジャパンリアルエステート投資法人  1兆234億円
  • 3462 野村不動産マスターファンド投資法人  1兆113億円

●REIT選びのポイント② 分配金の推移

2019年11月現在の分配金利回りのトップ3は以下の通りです。

  • 3463 いちごホテルリート投資法人  5.91%
  • 3492 タカラレーベン不動産投資法人  5.79%
  • 2971 エスコンジャパンリート投資法人  5.74%

利回りが高い方がよいと思いがちですが、現在の分配金だけでなく、過去の分配金の推移を確認することで、マーケットの変化にどのような対応をしてきたかがわかります。現在の分配金は高くても、過去から下がり続けている銘柄などは要注意です。

なお、REIT全体の過去10年の分配金利回り推移は、以下の通りです(東証1部配当利回り・長期金利と比較)。

出典:不動産証券化協会

●現在の東証REIT指数は高値圏!?

REITの平均分配金利回りは、2019年2月まで4%を超えていました。しかし、現在は3.42%まで下がっています。これは運用難の国内機関投資家などからの資金が流入し、REITの価格が高騰を続けてきたためです。J-REIT全体の値動きを表す「東証REIT指数」の値動きは以下の通りです(TOPIXと比較グラフ)。

出典:不動産証券化協会

2019年10月時点の東証REIT指数は2246.01で、リーマンショック前の2007年5月(2612.98)につぐ水準となっています。ここ10年の平均分配金利回りの下限は3.02%なので、東証REIT指数と分配金利回りからみても高値圏にあると考える関係者が増えています。これからREITへの投資を考えるなら、指数の動きには十分注意しましょう。

現物不動産投資のメリット(REITと比較)

ここまでREITのメリット・デメリットについて解説してきましたが、次にREITと比較したときの、現物不動産投資のメリットを考えてみましょう。

●物件を自分で選ぶことができ、REITよりも高い利回りが狙える

現物不動産投資は、自分で個別物件を選びます。もちろん、物件を探す手間や時間はかかりますが、その分、REITよりも高い利回りの物件を見つけることも可能です。

●レバレッジ効果がある

不動産を購入する際、価格が数千万円する物件でも、一定の頭金を用意できれば融資を受けることができます。そして、毎月の家賃でローンや税金を支払っていけます。少ない資金で大きな金額の物件を購入できる「レバレッジ効果」が期待できるのです。

●節税効果がある

不動産投資で得た収入からは、建物の減価償却費や融資の金利、固定資産税、管理費などの必要経費を引くことができ、所得税の節税効果があります。また、もし不動産投資で損失が出た場合は、他の所得と損益通算できるので、所得税・住民税の節税が可能です。

まとめ

REITは少額から投資でき、株式のようにいつでも売買できるので、不動産投資のメリットを経験してみたい初心者にはおすすめです。しかし、あくまでも投資なので元本が保証されているわけではないこと、分配金の利回りも下がる可能性がある点にはご注意ください。

現物不動産投資は手間がかかりますが、物件を選べばREITより高い利回りが狙えますし、レバレッジや節税効果もあります。まずREITで不動産投資の一端に触れてみながら、運用で資金を増やしていき、自分で物件選びや管理をしてみたくなったら現物不動産投資も検討する、この道筋が不動産投資の王道かもしれません。