かつては日本企業の特徴ともいわれていた、終身雇用・年功序列型賃金制度。しかし現在は、成果主義型給与制度を導入する企業が増え、転職も当たり前となりました。そして、早期退職制度の実施も珍しくありません。とはいえ、大多数の会社員は収入源を就職先のみに依存したままです。会社の存続が危ぶまれたり、従業員は早期退職勧告を促されたりする可能性もあり、安心はできません。本記事では、就業環境の変化をデータで確認するとともに、就職先に依存しない人生設計のヒントを提案します。

年功序列や終身雇用はもう古い? 最近の事例を紹介

最近は、名だたる大企業でも終身雇用制度の転換を進めています。

たとえば、日産自動車では2004年の「日産のビジネスウェイ」として、「社員を公平に評価すること」や「業績向上への貢献を的確に測ること」を目的に、「結果および実績を優遇する」と記されています(2005年3月期「アニュアルレポート2004」日産自動車)

さらに、「日本に根強く残る年功序列の雇用・報酬システムから成果報酬システムへと移行します」と、はっきり宣言されていることが目を引きます。

またソニーは、給与体系として役割に対する報酬をより明確に再定義した「ジョブグレード制度」が導入され、年功序列要素を全廃しています(日本経済新聞、2014年7月24日「賃金制度、ソニーが年功要素全廃 組合と交渉へ」)

さらに、近いところでは、終身雇用制度の見直しの例として、NECや富士通で、45歳以上の早期退職促進が実施されたことが話題になりました。

NECでは、2018年12月28日に退職する「45歳以上勤続5年以上の者」を、定員を定めず募集し、対象者に退職金や再就職支援サービスを提供することが表明されました。(2018年6月29日日本電気株式会社「特別転進支援施策の実施に関するお知らせ」)

新聞報道によると、この募集に対して2,170人の応募があったそうです(日本経済新聞、2018年11月29日「NEC、希望退職に2170人応募 照明事業から撤退も」)

また富士通では、グループ全体で5000人規模の配置転換を実施する方針を2018年10月に打ち出し、2019年3月までに2850人もの早期退職者を出しています。

東京商工リサーチの調査によると、2019年上半期には、前年の4倍ものペースで、希望退職者が募られてします。

そして現在の希望退職募集企業に特徴的なのは、必ずしも業績不振の業界・企業に限らず、業績好調の企業でも、将来を見越して先行的なリストラをしているという点です。

つまり、「うちの会社は調子がいいから、リストラなんて関係ない」とは決していえないのが、現代の会社員事情なのです。

年功序列や終身雇用を廃止した企業数の推移

ところで、実際に年功序列や終身雇用を廃止した企業の数はどのくらいあるのでしょうか。

厚生労働省のデータ(厚生労働省「平成25年版労働経済の分析 日本的雇用システムと今後の課題」)によると、「300人以上企業」における「業績・成果給部分の拡大」は1990年から2000年代前半にかけて一時30%に至るほど(管理職においては30%超)大きくなっていることがわかります。

その後、2007年~2010年にかけて下がっていますが、これはおそらく、リーマンショックによる景気後退が理由だと思われます。

先行型リストラもあることから、基本的に、今後も年功序列や終身雇用を廃止する企業が増えていくことが想定されます。

早期退職制度の割増し退職金はどれくらい?

早期退職制度の利用で気になるのが、割増退職金等の額です。実際のところ、どのくらい得られるものなのでしょうか。

もちろん、これは会社によって大きく異なるため一概にはいえないのですが、例として先ほどのNECと富士通のケースを見てみましょう。

まずNECのプレスリリースを見ると、通常の退職金に加え「特別転身支援加算金」が得られることになっています。

先ほどご紹介した日本経済新聞の記事によると、2,170人の応募に対して200億円の特別損失を計上するとなっています。

単純計算すると、200億円÷2,170人で、1人あたり平均920万円程度の退職金を受け取れる計算です。

また、富士通は希望退職者数2,454人に対して特別損失291億円ですから、1人あたり約1,190万円の割増退職金と計算できます。なお、これらは割増退職金の額なので、上記に加え通常の退職金も交付されることになります。

ここでは、NECと富士通双方の退職金制度に触れることはしませんが、厚生労働省のデータ(平成30年厚生労働省「平成30年就労条件総合調査 退職金の支給実態」)によると、早期優遇を受けた人の退職金の1人平均退職給付額は2,326万円となっていることがわかります。

収入の安定材料としての「不動産投資」

勤務先の企業規模にかかわらず、自分がいつリストラの対象になるかはわかりません。

割増し分も含めれば、ある程度まとまった額の退職金が受け取れる可能性が高いとはいえ、仮に45歳で早期退職するとなると、公的年金の支給開始まで20年もあり、かなり不安が残るでしょう。

また、一般的にいえば、その年齢からの転職はそう簡単ではありません。

そこで、いざリストラにあったときの備えとして不動産投資という手があります。不動産投資は「会社員が働きながら収入を得る」のに適した条件をいくつも備えています。

たとえば、アパートやマンションを購入するにはローンを組む必要がありますが、サラリーマンは「安定した収入を得られる」と考えられるため、融資の審査が下りやすくなっています。

もし会社を退職したあとに融資を受けようと思っても、実行は格段に厳しくなるでしょう。

また、一度アパートやマンションを取得したあとは、物件の規模にもよりますが、管理会社に委託して、自分はほとんど何もせずに毎月家賃収入を得ることができます。もちろん、1戸であれば、会社に勤めながら自分で管理することも十分可能です。

さらに、万が一、不動産投資で赤字になってしまった場合でも、赤字分を給与所得から差し引ける「損益通算」制度を利用することで、節税メリットも得られます。

「リストラになったら、ローンの支払いが心配だ」と考えるかもしれませんが、会社員時代にある程度ローンを減らしておけば、早期退職金をあててローンの残債を完済することは難しくないでしょう。

そうすれば、あとは毎月安定した賃料が入ってくるだけ、ということになります(固定資産税など、一定の経費はかかります)。

家賃収入だけで、会社員時代と同等、もしくはそれ以上の収入を得るのは難しいかもしれませんが、転職した際に心配される、給与の減少分を補う程度であれば、十分現実的です。

どの程度の不動産収入があれば、リストラを恐れなくてすむ?

仮に45歳でリストラされ、公的年金支給開始年齢である65歳まで、家賃収入だけで生活していくとしたら、不動産収入はどのくらい必要でしょうか。

総務省のデータ(2019年8月総務省「家計調査報告-2019年8月分-」)によると、2人以上の世帯の1世帯あたり平均支出月額は296,327円です。

45歳から65歳までの240カ月で考えると、必要となる資金はおよそ7,112万円となります。

これに、早期退職機の平均額である2,326万円を差し引くと、4,786万円です。さらに、4,786万円を240カ月で割ると、必要な不動産収入はおよそ20万円/月であることが分かります。

20万円×12カ月=240万円と、年間で240万円の収入が必要ですが、例えば1億円分の不動産をキャッシュフローの利回り(実質利回り)2.4%程度で運用すればよく、決して不可能な数字ではありません。

まとめ

いまの時代では仮に大企業勤めであっても、会社だけの収入に頼るのはリスクが高いといえます。

会社員として働きながら、早い段階から不動産投資を開始しておけば、給料と家賃収入との2本の収入を持っておけば、余計な不安を抱えずに、安心して働くことができるのではないでしょうか。