老後の生活に必要なお金は人それぞれ 自身の目標額を試算し、少しでも早く準備を
「人生100年時代」ともいわれる超高齢社会が訪れ、老後資金をどう準備するかが重大な関心事になっています。必要金額や準備の仕方について、考えてみましょう。
重要なのは一般論ではなく、自分自身がどうか
老後資金は3,000万円あれば足りるという人もいれば、1億円以上必要! と主張する人もいます。月々の生活費や公的年金の受取額など、世帯によって異なる要素が多いため、一概には言えないのです。重要なのは一般論ではなく、自分自身がどうかということ。まずは、老後生活に必要な資金を具体的に試算してみることから始めましょう。
その際、ポイントになるのは「退職前と比べてどの程度の生活水準を維持したいか」「老後生活がいつまで続くと想定するか」「公的年金はいくら受け取れるか」といった前提条件です。例えば、現在の生活費が毎月35万円の場合、8割程度の生活水準を維持したいとすれば、月間の支出は28万円。老後生活が35年間続くと想定すると、総支出額は1億1,760万円(28万円×12カ月×35年)となります。一方、年金受給額を20万円、受給年数を30年とすると、総収入額は7,200万円(20万円×12カ月×30年)。差し引き4,560万円は自助努力によって準備しなければならない、ということになります。
開始時期が早いほど月々の負担は小さい
老後生活に必要な金額がイメージできたら、次はそれをどのように用意するかです。ここでは、「2,000万円(退職金を除く)を65歳までに準備する」と仮定して考えてみましょう。
2,000万円もの大金を一度に用意することは、ほとんどの人にとって不可能でしょう。毎月少しずつ、コツコツ積み立てていくことが現実的な選択肢になります。積み立てにおいて重要なポイントは、少しでも早く始めることです。35歳から始めれば、月々5万6,000円で30年後に2,000万円を用意することができます。それに対し、55歳から10年間で用意するとなると、毎月16万7,000円の積み立てが必要になります。開始時期が早ければ早いほど、月々の負担は小さくなります。
年率3%で30年間運用すれば、月々3.5万円で2,000万円
長期の積立期間を確保できるのであれば、資産運用を検討してもいいでしょう。30年間、年率3%で運用すれば月々3万5,000円、年率4%で運用すれば月々2万9,000円の積み立てで2,000万円の目標を達成できます。
積立運用には、少額から手軽に分散投資ができる投資信託が向いています。商品選びでは、長期的な成長が期待できるかどうかという点に加え、過去の運用実績や手数料なども考慮しましょう。運用リスクを負うことなく確実にお金を貯めていきたい場合は、元本保証の終身保険や個人年金保険を利用するのも一つの手です。
3段階で税制優遇を受けられるiDeCo
老後資金の準備にあたり、ぜひ検討したい制度がiDeCo(個人型確定拠出年金)です。iDeCoとは、自分で掛け金を拠出し、運用することで老後資金を準備する自分専用の年金制度のこと。2017年に制度改正があり、公務員や専業主婦、企業年金のある会社に勤める人も加入できるようになりました。
原則として60歳まで運用資金の引き出しができないデメリットがあるものの、「掛け金の拠出時」「積立金の運用時」「給付金の受取時」の3段階で税制優遇を受けられる大きなメリットがあります。選択できる金融商品は、投資信託や保険、元本確保型の定期預金などさまざま。金融機関によって商品ラインアップや手数料は異なるため、iDeCo口座の開設は慎重に行いましょう。
継続的な安定収入が期待できる賃貸住宅経営
将来の安心を手に入れるため、不動産投資という選択肢もあります。「リスクが高くて怖いもの」というイメージを持たれがちですが、賃貸住宅経営は一度軌道に乗せれば、継続的な安定収入が期待できる投資手段です。
超低金利の今は、借り入れを行うのに絶好のタイミングと言えます。住宅ローンと同様に、不動産投資ローンでは団体信用生命保険に加入でき、ローン返済中は万が一の際の生命保険代わりになります。ローン完済後は家賃がそのまま収入になり、年金の不足分を補う役目を果たしてくれるでしょう。