少子高齢化の進展により社会保障費の国民負担率は増大、可処分所得は減少傾向にあります。その一方で「働き方改革」が進められ、残業代が出なくなるなど、かつてのように労働時間を増やして収入を得ることが難しくなっています。このような状況下で可処分所得を増やすには、どんな方法があるのでしょうか。本記事では、社会保障費の推移と国民の所得の状況を比較しながら、可処分所得を増やす手段を考察します。

国民負担率(税負担+社会保障負担)は増えている

超高齢化社会の社会保障費を維持するため、年金や健康保険の負担額は右肩上がりに増えています。そして2019年10月には、当初の予定通り消費税も10%に増税されました。

国民の負担はますます重くなるばかりですが、実際のところ、国民の所得における国税・地方税と社会保障負担割合はどの程度であり、以前に比べてどれぐらい増えているのでしょうか?

財務省が2023年度に発表したデータ「国民負担率(対国民所得比)の推移」によると、古公文の所得における国税・地方税と社会保障負担割合は、昭和45年には24.3%しかなかったものが、令和5年には46.8%となっており、ほぼ一貫して右肩上がりに増えていることが分かります。

さらに内訳を見てみると、国税や地方税などの税務負担は昭和45年の数値にくらべると、おおよそ1.49倍程度上昇しているのに対し、社会保障負担は3.46倍の増加となっています。

令和にたって予算編成は、5年連続の「100兆円予算」となり、社会保障費は全体の約3分に1を占める過去最大の36兆8889億円となりました。
これは少子高齢化が進むなかで社会保障負担が増えていることの証左であり、今後もこの傾向は続くことが想定されます。

国民負担率が増えれば「可処分所得」が減る

当たり前の話ですが、国民負担率(税負担+社会保障負担)が増えると、毎月の給料の額面が変わらなくても「使えるお金」=可処分所得は減ってしまうことになります。

例えば、総支給が700万円、手取り(可処分所得)500万円のサラリーマンの年収が、国民負担率が増えることで手取り450万円に下がってしまう…といったイメージです。額面の給料は変化していないため気づきにくいですが、総体的に貧しくなっていることになります。

もちろん、国民負担率が増えた分、福祉が目に見えて充実すれば納得もできるでしょう。しかし現在の日本のように少子高齢化が進展していると、その実感は持ちにくく、とくに若年層は負担ばかりが重く感じられることになるでしょう。

可処分所得はどのくらい減った?

ところで、過去と比べて可処分所得はどのくらい減ったのでしょうか?

本来なら物価の違い等も加味しなければならないため、単純に比較することは難しいですが、先ほどの財務省のデータから、まずは平成元年と令和5年でどの程度可処分所得に変化があったか見てみましょう。なお、ここでは分かりやすくするため、総支給の額面から国民負担率を差し引いたものを可処分所得とします。

平成元年の国民負担率は37.9%。年収700万円の可処分所得は434.7万円。
令和5年の国民負担率は46.8%。年収700万円の可処分所得は372.4万円。

およそ35年の間で国民負担率が増加したことにより、同じ額面でも62.3万円(およそ8.9%)の可処分所得が減ったことが分かります。

可処分所得を増やすにはどうすればよい?

国民負担率が増加するなかで可処分所得を増やすには、収入を増やす以外に方法はありません。しかし、政府が推進する「働き方改革」により、時短勤務の流れが進み、かつてのように「残業して稼ぐ」方法は取れなくなっています。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構のデータ(平成30年3月「データブック国際労働比較2018」独立行政法人 労働政策研究・研修機構)によると、1980~1990年にかけての日本の1人当たり平均年間総実労働時間(就業者)は2,100~2,200時間と、アメリカやフランス、イギリスなど他国(おおむね1,600~1,800時間程度)と比較しても明らかに長時間でした。

その後、1988年の改正労働基準法の施行を契機に労働時間は減少傾向をおおむね保ち、2023年には1,611時間と、アメリカやイタリアより低い水準となっています。

つまり、長時間勤務で残業代を稼ぐことができにくい流れとなったばかりか、給与システムも年功序列型ではなくなり、漫然と勤めているだけでは収入の増額は期待できない時代になったのです。

可処分所得を増やすのに適している「不動産投資」

このような状況下で可処分所得を増やすには、まずは投資が選択肢となるでしょう。なかでもお勧めは不動産投資です。

その理由は、単純に「家賃収入が入る」ということだけではなく、返済利払いなどの費用、減価償却、損益通算などによって課税額を圧縮することで、トータルでの可処分所得を増やしやすい点にあります。

年収700万円のサラリーマンが不動産投資を開始し、不動産所得として1,000万円/年の家賃収入を得るとなると、その年の年間所得は1,700万円です。累進課税である所得税は33%となり、税負担は大きくなりますが、投資物件となるアパートやマンションの購入でローンを組んだ場合、その返済費用のうち利払い分は経費とすることができるのです。

また、購入したアパートやマンションの価値はずっと同じではなく、毎年少しずつ「目減り」していきます。その分を「減価償却費」として、毎年経費計上できます。

例えば1億円のマンションを購入した場合、2年目以降について、実際には出費していないのに毎年500万円分の経費を減価償却費として計上していくことが可能なのです。

さらに、サラリーマンが不動産投資に取り組み、家賃収入=不動産所得を得た際に、もし不動産所得がマイナスとなったら、給与所得からマイナス分を差し引ける「損益通算」という制度もあります。

年収700万円のサラリーマンの場合、不動産投資に取り組んだ結果、年間の収支(所得)がマイナス200万円になってしまったら、給与所得の700万円を「500万円」とすることができ、その分、税金の還付を受けることができるのです。

所得がマイナスということは、不動産投資がうまくいっていないということなので、本来ならば歓迎すべきことではないのですが、先述の減価償却費のように「実際には支払っていないが経費計上できるもの」を含めてのマイナスであれば、そう悪い話でもありません。

では、ここまでの内容をまとめ、年収700万円の方が1億円のマンション(利回り8.33%、減価償却費500万円)を購入した場合、可処分所得がどのくらい増えるかを見てみましょう。

なお、ここでは簡単に、年収700万円の方の手取りを550万円として計算を進めていきたいと思います。

仮に家賃収入約1,000万円のうちの20%を、管理費や修繕費といった経費に使うとします。物件価格1億円のうちの9,000万円を金利1%、借入期間30年のローンを組むと、年間の返済額はおおよそ400万円(利息分170万円)程度となります。

この場合、利息分170万円と減価償却費500万円分、管理費や修繕費200万円を経費として計上できるため、帳簿上の所得は130万円です。

増えた所得分130万円に対し、所得税20%が課されるとすると税負担分は26万円です。

ざっくりとした計算にはなりますが、年収700万円の方が本業だけだった場合の手取りは550万円なのに対し、不動産投資を始めた場合の手取りは550万円+1,000万円(家賃収入)-26万円(増えた税負担分)=1,524万円となります。

なお、上記はサラリーマンを対象とした計算ですが、自営業の方は計算方法が異なるなど、ケースによって違いがありますので、具体的なプランがある方は、詳細を税理士等の専門家にご相談ください。

まとめ

少子高齢化が進展する日本において、今後、社会保障費等の国民負担率の上昇は避けられません。収入が同じ金額であっても国民負担率が増えれば可処分所得は目減りし、相対的に貧しくなってしまいます。可処分所得を増やすには、収入を増やすのはもちろん、税負担を減らす視点も重要です。不動産投資の場合は、その両方をかなえる選択肢として有力であるといえるでしょう。