不動産投資の魅力として真っ先に思いつくのは、「家賃収入」です。
もうひとつの大きな魅力が、「節税」。
不動産投資で得た所得は、経費で課税所得を下げられますし、サラリーマンの方であれば、本業の利益と投資の損失を相殺し、所得税の還付が可能です。

所得税が減額されれば、当然住民税も減ります。
ただし、節税だけが目的の不動産投資は、ノーリスクではありません。
税金対策としての不動産投資に関して、具体的な節税内容を理解し、注意点をまとめました。

不動産投資にかかる経費によって課税所得が下げられる

サラリーマンが本業の方は、医療費控除などの特別な事情がない限り、確定申告は必要ないもの。
普段は税金も天引きですから、課税所得を下げられると聞いてもピンとこないかもしれません。
不動産投資で課税されるのは「不動産所得」で、「総収入金額−必要経費」で求められます。
ここで認められる必要経費とは、以下のようなものです。

・固定資産税
・不動産取得税
・損害保険料
・減価償却費
・修繕費
・管理会社への管理委託費
・ローン金利

これら以外にも、次のような費用も必要経費にできます。

・物件を見に行ったときの交通費
・不動産投資セミナー参加費
・税金に関する本の書籍代

ただし、交通費や書籍代の頻度・金額が多すぎると、税務署のチェックが入りますから注意が必要です。
また、私用や自宅に関わること、ローン返済の元本部分は経費にはなりません。
必要経費計上で所得を下げれば課税対象額が減額され、所得税が減るという仕組みです。

所得税の還付や住民税の減税が実現

不動産所得に必要経費を計上し、所得税を減らす流れはご理解いただけましたか。
次に、所得税還付・住民税減額に関して説明しましょう。

・所得税還付の流れ
本業の給与所得のうち、課税対象額が600万円だとします。
不動産所得が100万円の場合、所得税の課税対象額は合計で700万円。
同じように給与所得が600万円でも、不動産所得が100万円の赤字だった場合、課税対象額は600万円+(-100万円)=500万円となります。
給与所得の所得税は毎月天引きされていますから、所得が減った分の所得税が還付されるのです。

・不動産投資なら損益通算OK
このような、所得で生じた損失と他の所得で生じた利益の相殺は、損益通算と呼ばれます。
不動産所得は、給与所得との損益通算ができるのです。
同じ投資でも、株式投資の場合、給与所得との損益通算は認められていません。
ただし、損益通算は確定申告をしないと適用されませんので、必ず申告してください。

・住民税も減税
住民税には道府県民税と市町村民税があり、都道府県民税が4%、市町村民税が6%、合計10%です。
さらに、住民税は、大半を占める「所得割」と「均等割」に分かれます。
所得割は所得によって課税額が決まり、前年1月から12月までの所得によって計算されます。したがって計算のベースの所得が減ると、住民税も減るわけです。
なお、住民税の均等割は所得による変動はなく一律課税で、自治体によって差はありますが、標準税額は都道府県民税が5,000円、市町村民税が3,500円程度です。

節税目的だけの不動産投資は避けたほうがよい

不動産投資が節税になる仕組み、ご理解いただけましたか?
注意していただきたいのは、節税だけが目的の不動産投資はノーリスクではないことです。
節税に焦点を当てすぎた場合のリスクを解説します。

・キャッシュフローの悪化
損益通算の場合、不動産投資の節税は不動産投資の赤字が前提です。
利益が大きい場合、経費計上しても節税には限界があります。
節税効果を得るために収益を抑えてしまったら、「投資で利益を獲得」という本来の不動産投資の目的からも離れてしまいます。

・金融機関の信用低下
不動産投資を進めるときは、多くの方が不動産投資ローンを利用します。
金融機関との関係はとても大切です。
赤字経営になってしまうと、金融機関の印象が悪くなります。
所有物件を増やそうとしても、不動産投資ローンの際の審査が通りにくくなるでしょう。

・物価や金利変動のリスクに弱くなる
不動産投資を赤字にして節税した場合、経営はギリギリです。
家賃を下げざるを得ない状況になったり、金利が上昇してしまったりする可能性はゼロではありません。
そのような状況に直面すると、収益が一気に悪化、節税どころではなくなります。

・耐用年数の問題
不動産投資による節税は、金額の大きい減価償却費の経費計上がカギです。
耐用年数が終了すると減価償却はできなくなります。それにより不動産所得が黒字化し、税金が一気に上昇する場合があるでしょう。

不動産投資で節税は可能だがバランスが大切

不動産投資で節税は可能です。
経費計上で所得金額を減額すれば、所得税はかなり圧縮できます。
給与所得のある方であれば、赤字の不動産所得を給与の黒字と相殺し、所得税還付を受け住民税を減らすことも可能です。

ただし、節税を目的に赤字を出し続けてしまうと、キャッシュフローが悪化してリスクに弱くなります。金融機関の印象も悪くなるでしょう。
不動産投資の際には、節税だけだはなくキャッシュフローのバランスを考慮し、「やりすぎ」ないようにするのがおすすめです。