この秋、ついに消費税率が10%にアップします。
デメリットばかりが取り上げられる消費税ですが、実は不動産投資家にとっては利用法もあるのです。
不動産投資における消費税の還付に関して理解し、どのようなケースで適用されるか確認されることをおすすめします。
ただし、いくつかの手続き・対応が必要で、デメリットもあります。どう取り組むべきか、情報収集の上で検討してください。

不動産投資の消費税還付とは

預かった消費税よりも支払った消費税の方が大きければ、消費税は還付されます。
不動産投資で建物購入した年は、多額の消費税を払っているため、消費税の還付対象。
ただし、これは消費税の課税事業者になっていることが前提です。
たとえば、アパートの建築代金が税抜1億円の場合、消費税は現行税制で800万円、投資家は1億800万円の建物代金を支払います。
不動産投資の消費税還付は、この800万を返してもらうことです。

税率改正で影響大に
今年10月から消費税は10%になります。2億円の物件を購入した場合、消費税は1,600万円から2,000万円に上昇。
消費税還付をするかしないかで、不動産投資の利回りに大きな違いが出てくるのです。

手続きがやや面倒
「消費税還付で利回りを上昇させよう」と投資家なら思うはずですが、ここで、ある問題に直面します。
アパート・マンションなど、居住用賃貸物件の売上は「非課税」、消費税の課税対象ではなく、消費税の申告義務もなし。
このため、不動産投資の消費税還付には準備と対応が必要です。

建築費が還付されるってホント?

手続きによって還付されるのは、物件の建築費にかかる消費税、あるいは、物件の購入費用にかかる消費税です。
どちらも相当の金額ですから、この還付で利回りがアップすることは確実でしょう。
たとえば、土地・建物合計1億8,640万円(土地1億万円・建物8,640万円 消費税8%込)、年間家賃収入1,200万円とします。

●表面利回り 1,200万円÷1億8,640万円×100=6.4%

土地・建物合計1億8,640万円は、自己資金2,000万円と銀行借入金1億6,640万円、税引き後の手取り額が仮に200万円とした場合、

●自己資本投資利回り 200万円÷2,000万円で10%

●還付後表面利回り 1,200万円÷(18,640万円―640万円)で6.7%程度
表面利回りは約0.3%アップします。
実質的な自己資本投資額は、2,000万円-640万円=1,360万円

●還付後自己資本投資利回り 200万円÷1,360万円で14.7%
約4.7%も利回りがアップします。
消費税還付を受けると、実質的に建物の建築費程度の経済的効果があると言われるのは、この利回りの上昇のためです。

消費税が還付される条件は?

不動産投資で消費税の還付を受けるためには、以下の手続き・対応が必要です。

・原則として新規に設立した法人を活用
不動産の所有者が個人の場合、消費税還付は受けられません。購入前に、個人事業主になるか法人を設立する必要があります。

・課税事業者の届出提出
消費税の納税義務者でなければ消費税還付は受けられません。
消費税の課税事業者の届出を提出し、納税義務者になります。

・消費税還付のための対策内容
法人を設立し届出した上で、下記の取引を行います。

・建物の引渡しがある事業年度に課税売上を計上
一般的には、金(きん)の売買取引で課税売上を計上します。
・建物の引渡し時事業年度分の家賃を受け取らない
非課税売上である家賃を計上しないためです。
・建物の引渡し月の月末で事業年度を終了させる
・消費税の申告にあたり、原則課税方式で、一括比例方式・税抜経理を採用

・具体的なスケジュール例
建築費8,000万円消費税640万円、合計8,640万円で建築した場合です。
3月上旬 金を税抜1万円(消費税800円)購入し、翌日に同額で売却。
3月25日 建物完成
3月の25日〜31日 家賃はフリーレントで無料とする
3月31日 事業年度終了

この例では、事業年度内の消費税の計算は次のようになります。
預かり消費税800円-支払消費税640万円=−6,399,200円
したがって、還付される消費税額は、6,399,200円です。

・3年間50%超の課税売上が必要
還付を受けた消費税は、その後の約3年間、課税売上高の割合が通算50%を超えないと、3年後に還付金の一定額を返金する事態になります。
住居用家賃は非課税売上ですから、何も対策しないと返金です。
返金を避けるためには、引渡し事業年度以後の事業年度において、3年間分の家賃の金額を超える課税売上高を計上する必要があります。

消費税還付のデメリット

消費税還付にもデメリットはあります。

・3年間は物件を購入・売却しにくい
・経費の増加

消費税還付で利回り向上は可能

不動産投資の消費税還付は対策が必要で、新たな費用も発生。また、3年間は売却・購入がむずかしくなります。
しかしながらもどってくる金額も大きく、還付が実現すれば利回りは確実に上昇。なかなかの魅力です。
経費の増加やかかる手間などをよく理解し、還付をめざすか否か判断するのがよいでしょう。