新しい家族ができれば、次はいよいよマイホーム取得を考え始める人もいるでしょう。マイホームを手に入れるとなると、多くの人が住宅ローンを組むことになります。

国土交通省が1,351の金融機関を対象に行った「民間住宅ローンの実態に関する調査」のデータから、2017年度の個人向け住宅ローン(使途は新築)1件あたりの平均借入額を算出してみると、およそ2,950万円となります。

これだけのお金を借りるとなると、心配なのが住宅ローンの契約者に万が一のことがあった際のローン返済です。稼ぎ頭がいなくなったうえ、住宅ローンの返済に追われることとなれば、遺された家族が生活に困窮してしまう事が考えられます。

そこで、そのような事態を避けるため、住宅ローンを組む際には、団体信用生命保険(通称「団信」)という生命保険に加入することになります。一体、どのような保険なのでしょうか。

団信に加入すれば、万が一の時の住宅ローンの残高がゼロに

団信は、住宅ローンを利用するときに加入する特殊な生命保険のことです。

住宅ローンの契約者が、ローンの返済完了前に死亡・高度障害状態となった場合に、ローン残高相当額の保険金が、受取人である金融機関などに支払われます。つまり、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合、遺された家族にはローンが完済された持ち家が残るというわけです。

家族は住居の心配をする必要がなくなる一方、金融機関などにとっても債権を確実に回収できるというメリットがあります。団信の保険料は、住宅ローンを組んだ先の金融機関が保険会社に支払うのが一般的です。

そのため、基本的にはローン契約者が保険料を支払う必要はありません。ローン残高相当額が保険金額となるので、ローン返済が進むにつれて保険金額が減少していくのも一般の生命保険とは異なる特徴です。

疾病保障付きの団信も

団信には、死亡や高度障害状態以外に、がん、3大疾病、7大疾病、8大疾病などまで保障の範囲を広げたタイプがあります。

一般的な団信ではカバーできない病気にかかった場合などに、保険金が支払われて住宅ローンの残債が減る、あるいは完済されるのがメリットです。通常の団信では金利は上乗せされないのが一般的です。

しかし、疾病保障がつくと、保障の充実度にもよりますが、0.1〜0.3%程度の金利が上乗せされるケースが多いようです。金融機関によって様々なタイプがあるので、病気にも備えたいという場合には検討してみるといいでしょう。

住宅ローンを組んだら、生命保険の見直しを

団信は生命保険であることから、すでに加入している生命保険の保険料を削減できる可能性があります。なぜなら、団信に加入すると、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合には、住宅ローンの負担がなくなるうえ、家はそのまま残るので以降の住居費がほとんどかからなくなるためです。

大抵の場合、生命保険に加入する時には、遺族の住居費を考慮して保険金額(必要補償額)を決めているでしょうから、団信に加入した後は、その分だけ保険金額を減額しても大丈夫ということになります。

借入額などによって削減できる保険金額は人それぞれですが、目安は子どものいる家庭で1,000万円程度。これまで加入していた生命保険の保険金額が3,000万円だったのであれば、団信に加入した後は2,000万円に減額可能というイメージです。住宅ローンを組む時は、生命保険の見直し時期でもあることを覚えておきましょう。

健康状態によっては加入できない場合も

一般的には、団信は住宅ローンとセットになっていて、団信への加入が住宅ローンを組む際の条件となっています。ただし、誰もが無条件に加入できるわけではありません。団信も生命保険である以上、健康告知の義務があるためです。健康状態によっては加入できない場合があり、そうすれば住宅ローン自体が組めないというケースも考えられます。

それでも、マイホームが欲しくて住宅ローンを組みたいという場合には、団信に加入しなくても組める住宅ローンを使用するという方法があります。ただし、この場合には住宅ローン契約者に万が一のことがあった際、遺族がローンの残債を返済することになります。

そのため、団信に加入せずに住宅ローンを利用する際は、健康に不安があっても加入できるような生命保険に自分で加入するなどの対策をする必要があります。具体的には、引受基準緩和型や無選択型と呼ばれる生命保険などに加入するという方法が考えられます。

ただし、保険料のかからない一般的な団信と比較すると保険料の面で当然不利になりますし、そもそも健康にリスクのある場合でも加入できる生命保険の保険料は割高です。利用をする際は保険料負担や住宅ローンの返済計画に無理がないか、慎重に検討すべきでしょう。

住宅ローンだけでなく団信の内容も必ず把握しよう

団信は、住宅ローン契約者にとって、合理的でいざという時にとても安心な制度です。これから住宅ローンを組む際は、住宅ローンの金利だけを気にするのではなく、団信の保障内容までしっかりと確認しましょう。

そして、ローンを組んだ後は、すでに加入している生命保険の見直しにも忘れずに、家計の最適化に役立てましょう。