2019年に入り、私たちの身の回りでは値上げが続いています。アイス・缶詰・冷凍食品、飲料・乳製品・デザート・即席麺など、思い当たるものが多いのではないでしょうか。外食産業でも値上げを実施している企業が増えていますし、物価だけではなく国民年金保険料も上がっています。

ここでは、物価の値動きを数字で確かめてから、インフレ下において資産運用は有効かどうかを確認していきます。

消費者物価指数で物価の動きを確認しよう

商品の値段が、ある時点より高くなっているのか、安くなっているのか、その変化を数値化したものに「消費者物価指数(CPI)」があります。

CPIは、消費者が購入する段階での商品・サービスの小売価格の動向を表す指数です。総務省が毎月発表しています。ある時点(現在は2015年)の数値を100として比較計算します。CPIには最も幅広い商品やサービスを対象にしている「総合指数」、天候などの影響で価格変動が大きい生鮮食品を除外した「コア指数」、エネルギーと食料を除いた「コアコア指数」があります。2018年の総合指数は101.3でした。

CPIが上がっていると「インフレ」となり、給料などの家計収入が変わっていない状態では、家計の負担は重くなります。2018年の対前年比消費者物価指数の上昇率は、総合指数1.0%、コア指数0.9%、コアコア指数0.4%でした。このままいくと2019年の統計では、CPI総合指数が大きく上昇することが想定されます。

インフレを数値で確かめたところで、このような環境下で資産運用を継続する効果はあるのか確認していきましょう。

インフレ対策に資産運用は有効なのか

現在のように物価がわずかに上昇している時や、なだらかに上昇し続けるような局面では、一般的には「リスク資産」(内外株式や内外投資信託など)による資産運用は有効なケースが多くなっています。株式の発行体である上場企業が、インフレによるコスト上昇分を、商品・サービスの価格に転嫁できる場合、値上げすることにより、企業収益も上がるからです。

ただし、運用にあたって注意すべき点が少なくとも二つあります。

一点目は、コスト削減などの企業努力やITによる自動化などでは追いつかないほどインフレが進行する時です。人手不足による人件費の高騰や、エネルギー価格の上昇などを、価格を商品・サービスに転嫁しきれない状況となってくると、コスト増加による決算悪化が見込まれるので、資産運用は全体的には難しくなるでしょう。

二点目は、上記のようにインフレが進行、あるいは今後さらに進行していくのではないかと、世間が考えるようになってきた場合です。将来のある時点でのインフレ率の予測値を「期待インフレ率」といいますが、これが大きく上昇してくるようなことがあると、インフレ分を価格に転嫁し損ねる以上に、資産運用は難しくなる可能性が高まります。資産運用が比較的有効となる期待インフレ率は2%程度であり、5%を超えてくるようだと、相当厳しい資産運用結果が想定されると考えられます。

上記二点のようなケースだと、一般的に国債などの債券が売られる可能性が高くなり、それに伴い「金利」が大きく上昇していくことが想定されます。預貯金や国債など、債務不履行になる可能性が極めて低く、将来収益がほぼ確実に期待できる資産のことを「無リスク資産」といいますが、この無リスク資産の一つである国債が、2019年4月現在のマイナス金利状態から、仮に5%の利回りになったとします。無リスク資産で5%もあれば、わざわざリスクをとって資産運用するメリットは大きく減るでしょう。

資産運用は各資産を含めた全体的な視点で考えましょう

上記で見てきたように、ひっそりと物価のあがる状況下では、インフレが急激に進行しない限り、リスク資産による資産運用は有効でしょう。しかし、物価がいつ、どの程度、どれくらいのスピードで上昇していくかを事前に予測することは不可能であるため、無リスク資産も同時にバランス良く保有しておきましょう。

皆さんが一般的にイメージしているであろう「リスク資産」と、あまり馴染みのなさそうな「無リスク資産」の両方を組み合わせて継続して保有していくと、時代の変化に柔軟に対応することができます。

資産運用を継続していくには、コツコツ貯めていく銀行預金と、投資信託などを全く別物として分けずに資産運用していくことが大切です。このようにすることで、生活費など日常生活に必要な資金を除いた、いわゆる貯蓄部分全体をひとまとめにして、バランスのとれた資産運用が可能になります。