妊娠・出産には公的なお金のサポートがたくさんある

女性は、一生のうちにさまざまな転換期を迎えます。なかでも、大きなライフイベントの一つが出産です。妊娠が判明すれば手放しに喜びたいものですが、同時に頭をよぎるのが、金銭面での不安ではないでしょうか。出産にはお金がかかるといわれていますし、しばらく働けなくなるので収入面も心配です。

しかし、今は少子化の時代。妊娠・出産に関するお金には公的なサポートがたくさんあります。これから妊娠を望む人も、すでに妊娠している人も、そして、もちろん旦那さんも、妊娠・出産をする際にどのような費用が公的に援助されるのかを知り、金銭的な不安を軽減させましょう。

今回は、助成内容を医療面とお給料面の二つに分けて確認していきます。

妊娠出産でもらえるお金~医療費編~

妊娠すると、定期的な妊婦健診のほか、予期せぬトラブルに見舞われることもあり、病院にお世話になる機会は想像以上に多いもの。なにかと出費がかさむ妊娠中の医療費に関するサポートを見ていきましょう。

・妊婦健診費の助成
厚生労働省によると、標準的な妊婦健診の回数は合計で14回。妊婦健診は全額自己負担のため、1回受けるだけで1万円以上かかることもあります。

そこで、金銭的な理由で妊婦健診を受診しない人が出ないよう、各自治体は妊婦健診費の支援をしています。基本的にはどこの自治体も14回分の助成がありますが、金額は異なります。

東京都町田市を例に見てみると、妊婦健診の初回に1万850円、2〜14回目に各回5,070円の助成金に加え、妊婦超音波検査で5,300円、妊婦子宮頸がん検診で3,400円の助成金が出ます。
母子手帳と一緒に補助券の冊子が交付され、健診時に受付へ補助券を提出すれば、会計時には差額だけの支払いで済むようになるのが一般的です。

・出産育児一時金
妊娠・出産で特にお金がかかるのが分娩費用で、平均で50万円程度といわれています。その負担を軽くしてくれるのが、健康保険から支給される「出産育児一時金」です。国民健康保険を含め、いずれの健康保険からももらうことができます。

妊娠4カ月(85日)以上で、産科医療補償制度に加入している医療機関(※)での出産であれば、子ども1人につき42万円が支給されます。多胎児であれば人数分支給されます。
※日本医療機能評価機構によると、産科医療補償制度の加入率は2019年3月18日時点で99.9%。加入していない医療機関で出産する場合の一時金の額は40万4,000円となります。

一時金の受け渡しは、病院が健康保険の組織と直接やりとりする「直接支払制度」が一般的で、妊婦さん本人は病院で合意書に記入するだけで手続きは完了します。42万円を差し引いた差額が自己負担になるので、退院するときに窓口で支払います。

・医療費控除
1年間の医療費の合計が一定額を超えた場合、確定申告すれば医療費控除によって所得税や住民税を抑えることができます。医療費控除の対象となる金額は、総所得金額等が200万円未満の人であれば医療費の5%、それ以外の人は10万円を超えた金額です。例えば、総所得が200万円以上あって1年間に支払った医療費が15万円だった場合、5万円の控除が受けられます。

医療費に含まれるのは妊婦健診費、入院費、分娩費、不妊治療にかかった費用、薬代、通院交通費などです。ただし、妊婦健診費の助成、出産育児一時金、生命保険からおりた保険金などで補填された金額は含めてはいけません。

妊娠・出産にまつわる費用は健康保険の適用外であることが多いのですが、医療費にはカウントできます。妊婦健診費や分娩費用を合計すれば10万円を超えるケースは多いでしょうから、領収書などは必ず保管しておきましょう。

会社員であれば職場で年末調整を受けますが、医療費控除は自分で確定申告が必要です。年末調整を受けたのち、源泉徴収票の原本を用意して翌年の2月16日〜3月15日の期間中に確定申告するようにしましょう。

妊娠出産でもらえるお金~お給料編~

仕事をしている人は、出産が近づくといよいよ産休に入ります。産休や育休中にお給料を支払ってくれる会社はあまりないので、休んだ分だけ収入は減ってしまいます。そこで、妊婦さんが安心して産休や育休が取れるよう健康保険や雇用保険にはお給料の一部をサポートしてくれる制度があります。詳しく見ていきましょう。

・傷病手当金
妊娠中はつわりの悪化や切迫流産・切迫早産などで、自宅療養や長期入院が必要になるケースがあります。そのような場合、条件を満たせば職場で加入している健康保険から「傷病手当金」を受け取ることができます。

会社を連続して3日休んだ後、4日目以降の仕事に就けなかった日に対して支給されます。1日あたり日給(各種手当を加えた月給を30で割ったもの)の2/3を、最長で1年6カ月受け取ることができます。

申請は休業が明けてから行いますが、医師や事業主の証明が必要となるので、休業期間中にできることから準備を進めておきましょう。申告書の提出は、会社を経由するパターン以外に、自分で健康保険窓口に提出することもできるので、詳しい手続き方法は会社の担当部署に確認をとりましょう。

・出産手当金
産休中の所得保障として健康保険から支給されるのが「出産手当金」です。産前42日(多胎妊娠の場合は98日)、産後56日の産休中に、1日あたり日給(各種手当を加えた月給を30で割ったもの)の2/3が、休んだ日数分もらえます。

勤務先の健康保険に加入していれば誰でも受け取ることができます。退職する場合でも、1年以上継続して健康保険に加入していること、産休に入ってからの退職であることなどの条件を満たせば支給対象となります。在籍しているうちに担当部署に必要書類や手続き方法を確認しておきましょう。

・育児休業給付金
産前産後休暇が終わると、今度は雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。休業開始時賃金日額の67%(6カ月経過後は50%)が休業した日数分だけ支給されます。受給できるのは、育児休業前の2年間に、1カ月の間に11日以上働いた月が通算12カ月以上あり、職場復帰する前提で育休を取得する場合です。

原則として、1歳未満の子どもを養育する場合が対象ですが、保育園に入れないなどの理由があれば最長で2歳未満にまで延長され、その間も給付金をもらうことができます。手続きの際は、原則として休業を取得する1カ月前までに会社に申し出る必要があります。

また、男性が育休を取得する場合にも、育児休業給付金を受け取ることができます。両親ともに育休を取得すると(パパママ育休プラス)、対象となる子どもの年齢が1歳未満から1歳2カ月未満に延長されます。
男性が育休を取得する場合に気をつけたいのが、出産日から育休取得を考えているケースです。女性の場合には、56日間の産休が明けてから育児休業が開始されますが、男性の場合は、出産予定日から育児休業を取ることができます。ただし、育児休業給付金が支給されるのは出産予定日からではなく出産日からです。

つまり、出産予定日を育休開始日としていると、出産が予定日より遅れた場合、育休に入っているのに育児休業給付金は受け取れないということが起きてしまいます。そのため、出産日から育休を取得しようと考えている場合には、勤務先にその旨を伝えておき、予定日がずれても育児休業の開始日の変更を受け付けてもらえるかどうか、事前に確認するようにしましょう。

もらいそびれのないよう、早めの準備を

妊娠すると、体調の変化で思うように動けなくなることもあります。妊娠を望むようになったら、早いうちから公的サポートについて確認しておいて、いざという時に申請し忘れないよう準備を進めておきましょう。