俳優の石田純一さんは、学生時代から株式投資の経験をお持ちとのこと。お金を増やす上での判断の仕方は、石田さんなりの経験を踏まえたこだわりがあるようです。
また、自分への投資も必要とお考えです。石田さんの考え方を伺いました。

投資をするには自分で考える力を養う。リスクに備えて資産分散も

株式投資を始めたのは大学生の頃でした。周囲が始めていたことや、素人の母親がやっても利益が出ているのをみて、アルバイトで得た10万円をもとに始めました。最終的には1,200万円までになりましたが、売るタイミングを逃したものや、逆に放っておいたら高値になっていたということもあり、将来のことは読み切れません。それでも投資をする上では自分で考えていく力を養っていくことが大事でしょうね。

まず実際に始めてみて感受性を磨き、鋭くすることです。株式投資を始めると日経平均株価の推移に関心が向くようになりますし、円が1ドルいくらなのかという興味も出てくる。世界の動向にも関心が持て、最近では、米中貿易戦争のニュースに切迫感をもつようにもなるでしょう。自分で本や雑誌を読んで勉強し、身近なところから社会情勢や情報に親しんでいくべきでしょう。僕は結構たくさんの本を読みます。これから懸念されることを自己防衛のために読みますし、先日は戦争で財産をなくした人が再び這いあがっていく話を読みましたが、ためになりますね。子供たちに財産やものを残すことも必要でしょうが、吸収した考え方を子供たちに伝えていくことも大事だなと感じています。

財政赤字は今後どうなるのか、もしインフレになったらどうなるのか。いろいろ勉強しています。例えばインフレになれば現金の価値は下落するので、土地の所有などで資産を分散させています。為替の影響を受けないように、円だけでなくドルで保有しておくこともひとつの方法ですよね。リスクが起こることを考えるのはいい気分ではないですが、備えておくことは必要でしょう。わからないときは専門家の方のアドバイスを受けることも大事だと思います。それから、歴史は未来の教科書になると思っています。歴史は繰り返されるので、過去から学ぶことも必要です。

世の中にないものやサービスを供給する視点が重要

今までいろいろな投資をしてきましたが、利益を上げる最大の要素は情報といえるでしょう。そして、得られた知識や情報は、雑誌での連載など仕事を生み出すことにもつながっています。

情報を仕入れる上でひとつの方法としているのが、ニュースを多角的に見られるように新しい視点を見出すことです。現在も情報番組でニュースのコメンテーターを務めていますが、ビッグデータを持っていても解析できないのでは困るし、なるべく面白い、新しい視点を提供できるように心がけています。かつてテレビの報道番組の視界を務めた際も同様で、どう情報を仕入れるかといえば、僕は英語が読めるので英字新聞を読んでいました。国内だけの情報に踊らされず、外国から見た視点も取り込むわけです。英字新聞を読んでいる人は少ないため、新たな視点の提供になりましたね。実際、テレビ局のスタッフからも「どこからの情報ですか?」と一目置かれ、信頼を得ることにつながりました。ニュースや情報を違う角度から見ることは大事で、それは投資をする上での状況判断にも生かされます。

このように情報は自分の価値を高めてくれたわけですが、かねてから、俳優として成功するためには自分の武器が何か、自分は何で稼げるかを知り尽くしている必要があると感じていました。俳優を始めた頃はかっこいい人が売れるなどと思っていましたが、そうとも限らない。芝居のうまさや、時代のニーズ、ルックスなどいろいろな要素がある中で、僕の場合は、それは知性だと思っていました。俳優は、頭が良さそうな人を演じる際にセリフを話したときにそう見えなければいけないんですが、それには普段が肝心なんです。特に女性は、俳優としての自分と役柄の両方をみていることが多い。そのため、俳優としての自分はオープンにするようにしていました。僕はどうしようもない男の役や、嫌われる役の仕事が多いのですが、それでもこの人いいなと思わせるには、自分を正直に出す。かっこいい設定でも、お酒に弱くて吐いてしまうシーンを混ぜたりすると、共演者の女優さんもドラマの中で「この男かわいいじゃん」という反応が自然と出て、ドラマの内容や役に奥行きが生まれてくるものです。テレビドラマでも舞台でも、見ている人がこの人いいな、と、元気や活気がだせるようにしたかったという思いもありました。

そうした考えが、トレンディドラマを生む素にもなりましたね。木曜日や金曜日の夜に遊びに出る若い人に見てもらうようなドラマを作りたいと考えて、同じ考えを持っていた俳優やテレビ局のプロデューサーたちとその世界を開拓したんです。世の中の動きより1m前を行き、あこがれる世界を提示しようと。世の中にまだ存在せず、必要とされるものやサービスを生み出せば大きな利益を生むことができる。これは子供たちにも伝えていることで、世の中で本当に欲しいものを供給できれば、それでお金持ちになれると話しています。労働の対価としてだけでなく、アイデアと交換することで大きな対価が生まれるのです。

これは、私が大学時代にマーケティングを学び、特にマーケティングの第一人者といわれた慶應義塾大学の村田昭次教授に師事したのが大きいですね。マーケティングは消費者や顧客のニーズにどうこたえるかといったことがテーマで、マクロ経済学より実践的でした。また村田先生は「目とは心の窓である」とか「経営者は色気を持て」などと生きる姿勢や信念も語り、マーケティングは人間味があふれ文学的な側面を持っていると感じられたのも魅力でした。お金のもうけ方や増やし方を考える基礎になりました。