運用スタイルでふるいにかける

投資信託とは、投資家から集めた資金を元に、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品のことで、その運用成果が投資額に応じて投資家に分配される仕組みとなっています。
集められた大きな資金のことを投資ファンドと呼ぶのですが、分配されるリターンは投資ファンドによって大きく異なります。
どうせ投資をするのなら、儲かるファンドを選びたい――。
そう思うのはごく普通の心情です。日本には多種多様な投資信託が存在し、いつでも購入できる公募投資信託に限ってもその数、6140本(2018年8月末)。いったい、どれを選んでよいのやら迷ってしまいます。

まずは、運用スタイルの違いで、ファンドをふるいにかけることから始めましょう。投資信託の運用スタイルは、「パッシブ運用」と「アクティブ運用」に大別できます。聞きなれない言葉なので、平たく解説します。

指数をそっくり真似たパッシブ運用

パッシブ(passive)とは英語で「受け身」を意味します。運用において受け身とは、「人のふんどしで相撲を取る」ことです。こう表現すると、あまりいい印象ではないかもしれませんが、なるべく手間暇かけずに利益を得るという効率重視の考え方ともいえます。ここでいう「人のふんどし」が指数(インデックス)です。株式ならば、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、ダウ平均株価などが代表例。市場全体の平均を示すこうした指数と同じような値動きを目指すのが、「パッシブ運用」です。指数をそっくり真似た値動きになるため、値下がり局面でも同様に値下がりするのが、正しいパッシブ運用です。個別のファンドでは、名前に「インデックス」「TOPIX」「日経225」といった指数にまつわる名称が入ることが一般的です。

利益拡大に積極的なアクティブ運用

対して、アクティブ(active)は「活動的」を意味する言葉。パッシブ運用とは異なり、自ら考え行動することで、積極的に利益拡大を目指すのがアクティブ運用の特徴です。アクティブ運用では、投資対象や投資方針など自らルールを定めて投資を行うのが一般的で、ファンドによって投資のフリーハンド度合いは異なります。目標とした指数から大きくずれない値動きを目指すファンドもあれば、目標となる指数を設定せず、市場全体が値下がり局面であっても、値上がりを目指すようなファンドもあります。運用に手間がかかる分、コストは相対的に高くなりがちです。

さて、パッシブ運用とアクティブ運用のどちらを選ぶべきなのでしょうか。これまでの比較からすると、よくても市場平均の成果しか期待できないパッシブ運用よりも、もっと儲かる可能性があるアクティブ運用の方が、夢があっていいじゃないかと思われるかもしれません。実際、同じ投資対象(日本株、米国株など)であっても、パッシブ運用の成績を大きく上回るアクティブ型ファンドは存在します。

長期的に指数を上回るアクティブ運用は少ない

ただし、アクティブ型のファンドを選ぶ際には2つの注意点があります。1つは、過去の成績が未来の成績を保証するわけではないということ。もう1つは、市場平均を大きく上回る可能性があるということは、大きく下回る可能性も同時にあるということです。

指数を提供するS&P ダウ・ジョーンズ・インデックスという会社が公表するSPIVAというデータがあります。世界各国のアクティブ型ファンドの成績と目標とする指数をさまざまな角度から比較したものですが、2017年末のデータでは、過去1年間の運用で指数に勝てなかった日本株のアクティブ型ファンドの割合は19.7%に過ぎませんでした。ところが、過去10年間の運用になると、61.1%に増加しています。世界株のアクティブ型ファンドはさらに顕著で、過去1年間で64.6%、10年間で95.1%のファンドが指数を下回る成績しか残せませんでした。指数を上回るアクティブ運用を長期的に続けるのは、なかなか難しいといえそうです。

最終的には投資の目的と好みで判断

パッシブ運用とアクティブ運用は、それぞれ一長一短があり、最終的には投資の目的と好みで判断するのがよいでしょう。「AI」「ロボティクス」といった特定のテーマで銘柄を選別するアクティブ型ファンドは、流行に乗った相場で儲けを期待するには面白い投資対象です。パッシブ運用は、市場の平均的な値動きに沿うため、どちらかといえば、中長期的に市場の拡大と値上がりを期待する場合に適しています。値下がり局面でのメリットを生かす意味で積立投資との相性もよいです。