少子高齢化が加速し、公的年金の先行きも不透明感が増すなか、老後資金の準備は誰にとっても頭の痛い問題です。定年後もできるだけ長く働ける環境の整備が進んでいるものの、健康状態などによっては定年後も働いて収入を得るということが難しい状況になっているかもしれません。

そのような老後不安を解消する手段として、近年「リバースモーゲージ」への注目度が高まっています。一体、どのような制度なのでしょうか。

リバースモーゲージの仕組みとは?

リバースモーゲージとは、自宅を担保に老後の生活資金などを借り受ける制度のことです。通常の住宅ローンでは、一括で借りたお金を毎月返済していきますが、リバースモーゲージでは、最後(主に死後)に一括返済するのが特徴です。そのため、逆抵当融資制度(=リバースモーゲージ)と呼ばれています。

リバースモーゲージでは、年金や一時金といった形で融資を受けることができ、日々の生活費のほか、住宅ローンの返済、家のリフォーム費用、高齢者施設への入居費用に充てるなどの活用ができます(使途がリフォーム費用などに限定されている商品もあります)。民間金融機関での取り扱いが広がっており、生存中は利息のみを支払い、死亡時に自宅を売却して借り入れ元本を一括返済するプランが主流となっています。自宅を売却せず相続人が借入金を返済できるプランもあります。

金融資産をあまり持っていない高齢者でも、自宅を担保にして資金融資を受けられるため、老後資金づくりの手段の一つとして注目が集まっています。

リバースモーゲージのメリット

①自宅を有効活用できる

高齢世帯では、あまり金融資産を保有していない場合でも、自宅などの実物資産は比較的多く保有しているケースが少なくありません。

そのような場合に、自宅に住み続けながら老後生活の資金調達ができるリバースモーゲージはとても合理的な手段だといえます。

②空き家対策になる

核家族化などを背景に深刻となっている空き家問題ですが、リバースモーゲージを利用すれば契約者の死後に自宅を売却することができます。

自宅を引き継ぐ子どもがいない、維持管理にかかる手間やコストなどの負担があるため子どもが相続したがらないなどのケースでは、有効な空き家対策になるでしょう。

③高齢でも融資を受けやすい

リバースモーゲージの多くは、55歳や60歳以上といった中高年を対象としています。年収要件も一般的な住宅ローンなどと比較すると緩やかなので、リタイア後の高齢期にも資金調達しやすいといったメリットがあります。

リバースモーゲージのデメリット

①対象となる物件が限定的

担保にできる住宅は土地付きの戸建てが中心で、一定以上の評価額が必要となるのが一般的です。また、対象エリアが限定されていたり、マンションは対象外だったりするケースもあるため、誰もが利用できるわけではないというデメリットがあります。

②金利が高い

リバースモーゲージの金利は、一般の住宅ローンと比較すると高めに設定されています。また、基本的に変動金利のため、金利が上昇すると毎月の利息の返済額が増えたり、借り入れ可能額が減額されたりする可能性があります。

③相続人の同意が必要

一般的に、リバースモーゲージを利用する際には推定相続人の同意が必要となります。もし、推定相続人が自宅を売却したくないなどの理由で反対すれば、制度を利用することができません。

④融資限度額は評価額の50%程度

融資限度額が担保評価額の50〜70%程度とされているのが一般的です。そのため、思ったよりも借りられる金額が少ないというケースも出てくるでしょう。

⑥不動産価格下落のリスクがある

リバースモーゲージでは、定期的に担保物件の評価見直しが行われます。評価額が下落し、融資限度額が評価額を上回った場合には、一括返済を求められたり、自宅が売却されたりすることがあります。

⑦長生きリスクがある

健康で長生きするのは素晴らしいことですが、リバースモーゲージを利用している場合、それがデメリットになるケースがあります。長生きするほど融資額が膨らむため、融資限度額に達してしまう可能性があるからです。

利用の際は慎重に検討を

リバースモーゲージは、超高齢化社会を迎えた日本において、老後問題や空き家問題を解決する方法の一つとして認知度が高まっています。それと同時に、取り扱う金融機関も増え、商品も多様化してきました。重要な資産である自宅を担保にするため、利用には十分な準備と制度の理解が必要です。

当初の見通しが外れて生存中に自宅を売却することになってしまったなど、晩年に思いがけないトラブルが起きないよう、利用の際は家族と話し合い慎重に検討してください。