不動産投資には多額の資金が必要というイメージがありますが、J-REITを利用すれば少額から始めることができます。今回は、J-REITの種類と初心者にオススメの銘柄を紹介します。
J-REIT(リート)とは
J-REIT(リート)とは、多くの投資家から集めた資金で、オフィスビルや商業施設・ホテルなど複数の不動産を購入し、賃貸収入や売買益を投資家に分配する金融商品です。J-REITは、タイプ別に単一用途特化型リートと複数用途型リートに分けられます。
単一用途特化型リート
オフィスビル特化型、住宅特化型など1種類の不動産へ投資します。単一用途特化型は用途が限定されているので、投資対象の研究が比較的楽です。
たとえば、好景気の時はオフィスビルが上昇しやすく、リターンが高い傾向にあります。反対に、景気の影響が少ない住宅は、安定性を好む投資家から人気があります。
複数用途型リート
複数用途型は、用途が違う2種類以上のJ-REITを組み合わせるので、一つの用途が不調でも他の用途が補ってくれる可能性があります。投資対象の分散効果があるので、単一用途特化型よりも下落リスクは低い傾向にあるのです。
複数用途型リートは、さらに次の2つに分類できます。
①複合型リート
オフィスビル+住宅、オフィスビル+物流施設など2種類の用途で構成されるJ-REIT
②総合型リート
3種類以上の用途に投資するJ-REIT。景気がいい時はオフィスビルの比率を上げるなど、状況に応じたポートフォリオ(資産の組み合わせ)を組みます。
JーREITの用途は6種類
J-REITは、単一用途特化型リートと複数用途型リートの2つのタイプに分類できますが、さらに用途別に次の6つに分けられます。
①オフィス
②商業施設
③住宅
④物流施設
⑤ホテル
⑥ヘルスケア
J-REIT の創設当初は、オフィスが約90%と非常に高い比率でしたが、現在では他の用途の割合が増えて、オフィスは40%程度。2019年5月末時点の用途別割合は以下の通りです。
出典:不動産証券化協会
それぞれ解説していきます。
①オフィス
オフィス需要は景気に左右されます。景気が良くなり企業業績が改善すると、賃料をあげても企業は入居を継続してくれます。しかし企業収益が悪化すると、企業は賃料の支払いを渋るので、退去リスクを避けるために物件オーナーであるJ-REITは賃料を引き下げなければなりません。
そのため景気悪くなってしまうと、分配金が減ってしまう恐れがあるのです。ただし、現在のオフィス市況は好調です。東京5区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)の2019年4月の空室率は1.7%となり、2002年1月以来の最低を更新しています。
一般に、オフィス空室率が5%を下回るとオーナー優位といわれており、しばらくオフィス特化型リートは好調な環境が続きそうです。
②商業施設
商業施設型は、イオンモールやイトーヨーカドーのような郊外型のショッピングセンターや、東急プラザのような都市型の商業施設があります。一般消費者向けの施設なので景気動向が大きく影響し、個人投資家にはハードルが高い物件です。
③住宅
賃貸住宅は景気にあまり左右されず入居者が多数いるため、安定的な収益が期待できます。実際、賃貸住宅の賃料は30年間ほとんど変わっておらず、賃料・価格とも安定しているのです。
④物流倉庫
物流はテナントが安定しているというメリットがありますが、契約が終了してテナントが退去した場合、後続のテナントを見つけにくいというデメリットがあります。2018年に価格の下落率がもっとも大きいのは物流系でした。
2018年は9月までに2銘柄が新規に上昇したのに加え、増資も多くJ-REIT市場で供給過剰となったためです。
⑤ホテル
ホテルリートは、ホテルの稼働状況に応じて賃料が変わる「変動賃料」の比率が2~4割と高いのが特徴です。J-REITの中でも分配金・価格ともブレが大きいので、もっともハイリスク・ハイリターンの投資対象です。
⑥ヘルスケア
ヘルスケアリートは、主に有人有料老人ホームや医療施設(病院)のことです。利回りは高い傾向にあるものの、3年に1度の介護報酬の改定で収入が左右されるなど、不安定な政治リスクがあります。
J-REIT初心者向けの銘柄
J-REITは60銘柄以上あるので、いきなり自分に合った1本を見つけるのは難しいでしょう。そこで、初心者向けの種類と銘柄を紹介します(2019年6月11日時点)。ポイントは、長期で安定的な収益が期待できるかどうかです。
単一用途特化型リート(住宅)
オフィスやホテルは景気によって賃料のブレが大きくなりがちです。その点、住宅の単一用途特化型リートなら景気動向に左右されず、長期で安定的な分配金が期待できます。
3269 アドバンス・レジデンス投資法人
●投資口価格 31万6,000円
●分配金利回り 3.39%
●時価総額 4,266億円
伊藤忠グループがスポンサー。資産規模は4,000億円を超え、住宅の単一用途特化型リートの中で最大規模を誇ります。東京23区の投資比率が71%を占めています。
総合型リート
なるべくリスクを避けたいなら、総合型リートがおすすめです。特定の銘柄や種類による価格変動リスクが低いからです。また、経済状況に応じてポートフォリオを入れ替え、中長期的な利益の最大化を目指すのも魅力です。
8960 ユナイテッド・アーバン投資法人
●投資口価格 17万8,100円
●分配金利回り 3.87%
●時価総額 5,441億1,000万円
丸紅をスポンサーとする総合型J-REIT。用途別では商業施設とオフィスがそれぞれ約30%、ホテルが約21%、住宅が約7%、その他約8%という構成。地域別では東京圏約62%に対して地方約38%となっています。
8984 大和ハウスリート投資法人
●投資口価格 25万7,000円
●分配金利回り 4.10%
●時価総額 5,332億7,500万円
大和ハウス工業をスポンサーとする総合型J-REITです。ポートフォリオは物流が50%弱、住宅が約36%を占め、他にホテルや商業施設を所有。JCRからは「AA」、R&Iからは「A+」という高格付けを取得しています。
今回はJ-REITの種類と銘柄を解説しました。初心者の方は収益が安定している住宅の単一用途特化型リートか、分散投資でリスクを抑えた総合型リートから始めるのがおすすめです。